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テクノの魅力・三要素

昨日の記事では
「テクノ」と「テクノポップ」の
成り立ちの違いについて
書きました。

そんな記事を
書いておいてなんですが、

早速「テクノ」と
「テクノポップ」を
混同して書かせてもらいます。
(エッーーー!?)

というのもですね、
この記事を書くきっかけになった

「テクノの良さって?」

という質問に対する
答えなんですが、

ここは明確に
「テクノポップ」と
「テクノ」と区別する
必要はない気がしました。

二つのジャンルに
共通する部分が多いからです。

こう前置きしたうえで、
私が考える「テクノ」の魅力は
大きく三つあります。

その魅力とはズバリ、

①音(サウンド)の魅力
②リズムの魅力
③コンセプトの魅力

それぞれについて
詳しく見ていきましょう。

①音(サウンドの魅力)

音楽の分野にはじめて
電子楽器が出てきた時の
一般的な使われ方は、

既存の楽器の音色を
模倣したものでした。

特定の楽器を使うことが
コスト的に厳しい場合に、
電子楽器でそれを代用する
という考え方ですね。

前の記事でも挙げた
クラフトワークが
革新的だったのは、

そういった既存の楽器を
模倣する音色ではなく、
電子楽器ならではの
サウンドを突き詰めた点です。

私が最初にテクノに
惹きつけられたのは、
この部分でした。

電子楽器でしか
聴くことのできない音色が
あるからこそ、

電子音楽を好んで
聴いていたんですよね。

テクノには、
自然界にはない音が
溢れています。

また、同じ電子音でも
時代や機材の違いによって
違いがあるのも
おもしろいところです。

②リズムの魅力

「テクノ」といえば、
ダンスミュージックです。

ここにも機械にしかできない、
人間では再現できない
リズムの魅力があります。

人間が演奏すると、
どれだけ正確に演奏しても、
そこにリズムの揺らぎが生じます。

打ち込みで作った音楽は、
最初から最後まで、

同じテンポで延々と
繰り返すことすら
できてしまうんですよね。

※最小単位の小節をループさせる
 「ミニマルミュージック」も
 テクノの大事な要素の一つ

そういったところが
この手の音楽の魅力でもあります。

同じ打ち込みでも、
作る人によっては、

電子音の中に
敢えて、人力の演奏を加えたり、

打ち込み自体に
人間的な揺らぎを
付けることによって、

新しい魅力を生み出す
場合もあります。

このような微妙な
リズムの違いがわかると
さらにテクノが
おもしろくなります。

③コンセプトの魅力

クラフトワークが
ヒットした時、

そのアートワークや
コンセプトにも
注目が集まりました。

例えば、はじめてヒットした
『アウトバーン』は
ドイツの「高速道路」が
テーマでした。
(ヒトラーが作った高速道路)

その後も彼らの作品には、
必ずなんらかのコンセプトが
セットで提示されていたのです。

『Radio-Activity』('75)=「放射能」

『Trans-Europe Express』('77)
 =「実在した国際特急列車」

『The Man Machine』('78)
 =「ロボット」

このように音楽に多様な
コンセプトが
結び付けられるようになったのも、

音楽がコンピューターと
交わったことによるものです。

仮に、ここに挙げた
クラフトワークのような
コンセプトを元に

ピアノやギターで
作曲したとしても、

音色は、やはり、
ピアノはピアノ、
ギターはギターの音にしか
聴こえないでしょう。

また、テクノは必ずしも
歌を中心に据えない、
インストが主体の
ジャンルなので、

(歌のある曲でも
 歌と伴奏の重要性が同等。
 もしくは伴奏がメイン)

よりコンセプトが
「音」そのもので表現しやすい
というのもあると思います。

先日、'80年代に放送されていた
NHK のテレビ番組『YOU』(※)に
YMO の三人がゲスト出演した回の
再放送を観る機会があったのですが、

その中で、坂本龍一が、
印象的な言葉を残していました。

※『YOU』:
 '82~'87年に糸井重里が
 司会を務めたトーク番組。

音楽をやっている人には
二通りいますね。
なんらかの主張があって、
それを音楽にするタイプ
それとは違って、
僕達みたいに、特に主張がないタイプ

『YOU』’83年放送

一回観たきりの
うろ覚えなので、一部、
言い回しは違うと思いますが、
おおむね、
こんなことを言っていました。 

坂本龍一が前者のタイプとして
挙げているのは、
おそらくロックやバラードでも
なんでもいいですが、

社会に対してなんらかの主張を
訴えたような曲であったり、

恋心を綴ったラブソング、
といった当事者の気持ちを
歌った音楽のことでしょう。

クラフトワークや YMO は
おっしゃるように、
完全に後者だったと思います。

もちろん「放射能」をテーマにした
『Radio-Activity』に
「反原発」の意味がないとは
言い切れませんし、

今日では「反原発」的な意味で、
この曲が取り上げられる機会は
あります。

(YMO自身も2010年代に
 「脱原発」をテーマにした
 ロックフェス「NO NUKES」で
 『Radio-Activity』をカバーした)

しかし、その内容は、
歌詞で表わされているもの
でもないんですよね。

あくまでも、作品の表層を
覆うテーマの一つとして
「放射能」が
提示されているわけです。

クラフトワークに影響を受けた
YMO も似たような感じでした。

「社会的なメッセージ」よりも
「音楽」そのもののコンセプトを
重視して作品づくりを
していたんですよね。

歌詞などの言葉が主体ではなく、
そういった音や視覚を
用いたコンセプトのおもしろさが
テクノには強くある気がします。

それは、'80年代の
テクノポップだけではなく、

アメリカやイギリスの
クラブカルチャーとして、
はじまったテクノにも
受け継がれているんですよね。

やはりテクノは
「言葉」ではなく、
「インスト(音)」
そのもので伝える音楽だからこそ、

このようなコンセプトの多様性が
おもしろく感じられるのかもしれません。


少なくとも私にとっての
「テクノ」の魅力は

いずれも
「音(サウンド)」
「リズム」
「コンセプト」の
三つの指標で語ることができます。

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