マガジンのカバー画像

大切に読み返したいものたち

4
運営しているクリエイター

記事一覧

思いどおりになんて育たない : 反ペアレンティングの科学

思いどおりになんて育たない : 反ペアレンティングの科学

私の子どもの育て方は正しかったのか。子どもたちの人格形成に私はどんな影響を与えたのか。それを振り返ってみて、私はこうした疑問自体が不適当だったと強く感じている。
出典:「思いどおりになんて育たない : 反ペアレンティングの科学」(アリソン・ゴプニック著)

先日、娘は病院で「チックですね」と言われました。

最もベーシックな「頻繁に目をギュッとつぶる」という症状が出ているのですが、チックはストレス

もっとみる
子どもの1歳の誕生日に、どうしようもないツラさを抱えていた君へ

子どもの1歳の誕生日に、どうしようもないツラさを抱えていた君へ

スクロールした画面に遠方の友人があらわれる。いや、友人自身は写っていない。そこにいるのは配偶者や子どもの姿。

30歳を迎えた彼女のタイムラインでは、結婚、出産、子育ての話題がピークを迎えている。とりわけ、子どものお食い初めや誕生日のイベントの投稿が多い。

子どもの誕生日というのは、とても幸せな出来事だ。

けれども彼女は、心の底にたまったオリのようなみじめさを感じずにはいられなかった。

膝の

もっとみる
夢売り人への手紙

夢売り人への手紙

 姉は映画が好きだった。「いつか立てるかも知れない」という一抹の希望とともに彼女は様々な治療を受け、その過程で徐々に失望し、やがてそれは絶望に変わった。「自力で立てる日は来ない」と誰も明言しないが自明であった。生きるほど姉の希死念慮は募り、絶望と正対せずに済む没入の時間を必要とした。

 同じ映画を幾度も繰り返し鑑賞した。映画の制作秘話、演出の裏話、俳優のゴシップも全部ひっくるめて、姉にとっては養

もっとみる

私が運んでいたものは

黄色いテーブルクロスの上に置かれた、きちんと折りたたまれた真っ白なナフキン。その上にはメニューカードが立てかけられ、スポットライトを浴びて輝いている。これからどんなメニューが出てくるのだろう。はやる気持ちを押さえながら、文字を追う。

何だ、このメニューは。

隅々まで知り尽くして、全てのメニューを把握しているはずのレストランで私たちに用意されていたのは、誰も知らないスペシャルコースだった。

もっとみる