くろたん(門坂)

短歌(鯉派・心の花)

くろたん(門坂)

短歌(鯉派・心の花)

最近の記事

2024/6/4

突然友達がうちにきてご飯を食べると言い出して、ありあわせのおかずと、スーパーで買ってきた刺身を、二人で食べた。もう真夜中になろうかというころになって、近いなりに遠いところからきたその人は、散歩がてら歩いて帰るという。二時間くらいはかかるんじゃないかというその道を、私も自転車を押して途中までついていくことにした。まだすこし肌寒い夜の道を、二人で歩く。てきとうなことを話しながら、町のひかりが、歩く速度で過ぎていく。都内とはいえ、都心からはそれなりに離れているような市域の、誰もいな

    • 2024/5/30

      昨日の公園にもう一度来てみた。 昨日とは別の方向から、住宅地をふらふらと歩いて、このあたりだろうという勘で近づいていくと、家と家の隙間になにやら階段があるのが見えた。 すばらしい階段である。昨日きた公園で間違いない。ちなみに、昨日の私はこの写真でいえば奥に見えている空間の、右方向で繋がっている階段からやってきたことになる。別のルートをたどっても同じ場所にたどり着けるというのは、空間とは不思議なものだと思う。 写真では奥に時計が見えている。時計はいつも空間とともにあるので

      • 2024/5/29

        昼休みは、時間をめいっぱい使って、散歩をすることにしている。てきとうな店で買ったものをぶら下げながら、公園のベンチにきて、空をながめながら食べる。遠くにビルがある風景。食べ終わったら、また歩きはじめる。 散歩なのだから、行き止まりに入ってまた引き返したりしてもいいんだ、と思って、明らかに、この先行き止まり、と書いてある路地に、心をきめて入っていくと、行き止まるはずの、木々の緑が茂っているあたりから、奥にむかって細く階段が伸びていた。ここには一度来たことがある、と思った。この

        • 2024/5/24

          最近あったことを書く。 ・酵母ちゃん家のコーヒーがうますぎた。 ほんとうに大袈裟でなくこれまで飲んだコーヒーで一番うまくて数日前のことなのにまだ感動している。イタリアンローストっていうやつらしい。ポンデリングと合わせたのがよかったのかもしれないけど、それにしても美味しすぎた。普段職場で飲んでるドリップコーヒーなんてかなり雑にいれてる上に猫舌だからって水で薄めて飲んだりしてて、なんか焼いた泥みたいな味がしてたんだが、酵母ちゃん家のは甘くないのにチョコレートみたいで、ほんとにす

          2024/5/22(再投稿)

          書きたいことも書けることもやまほどあるが、書く前に脳内で構築が完了した内容についてはもう自分のなかで半分は書く意義が喪失しているので、書けることは結局あまり書く気にならない。 昨日今日は大野左紀子のこの特集を初回から10回くらいまで読んだりしていた。 (※ここに当該記事のURLを貼っていたのですが、リンク先が18禁サイトだったらしく規約に引っ掛かったので、不掲載とします。記事内容自体は非常に面白く、別になんの問題もないと思うんですが、読みたい人は「WEB SNIPER 大野

          2024/5/22(再投稿)

          2024/5/17

          人に言うと必ず驚かれるのだが、16万ツイートはさすがに多いので、しばらくTwitterはしないことにした。本当はTwitterをみること自体をやめたいのだけれど、なかなかそこまではできなくて、でもツイートしなければ反応もないので、それですこし見る時間も減ればいいのだがと思っている。 とはいえ、さすがに長くTwitterをやりすぎていたので脳が癖になっていて、生活していると頻繁にツイートを思いついてしまう。「今日こそお風呂に入るぞ」とかなんとか言いたくなったり、あるいは町でな

          2024/4/1

          夢を見た。 わたしは、老齢の学者とふたりで、どこか遠い場所に立っている(以後、彼を博士と呼ぶ)。べつの星のようでもあり、そうではないのかもしれなかった。視界はどこも赤茶けていて、砂嵐のようなもののなかにいた。博士は異国風の顔立ちに、黒いジャンパーのようなものを着ている、見た目にはそのようには見えなかったのに、わたしは彼がなんらかの学者であると分かっている。 赤い砂嵐のなかで、彼はわたしに下を見ろと言った。火星のような地表に跪いてみると、なにかの鉱物の塊が落ちているのが間近

          くろたん一首評(20221016)

          (原文が、改行を含む歌で、コピペしただけなのですが、スマホで見ると歌が不自然に分断されて見えるかもしれません。) 本気で懇願、してないでしょう、って勝手に決めつけて思って、なぜかといえば、「聞き入れられることはなく」の他人事感というか、はじめからあきらめているものを、懇願と呼ぶべきか、よくわからないけど、とにかくなにかこの人ははじめから諦めていると思う。バスの大きさに道幅は対応することは、ない。それは世界がはじめからそうなっているからで、たぶん、見た目には、道がバスを受け容れ

          くろたん一首評(20221016)

          日記 20220310

          なにか書かねば、と思う。 最近、なにも書けなくなった。 「書けなくなった」というとき、なにか書きたいのにうまくまとまらない、という状態が想起されるかもしれないが、僕のはそうではなく、「書きたいことがない」というか、もっと言えば、状態として「書く必要がない」ような気がする。それでもあえてこうやってなにか打ち込んでいるのは、僕がついこの間まで書くことをアイデンティティとしてきたがゆえに、なにか、起きてしまった変化をまだ受け入れないための策として、書いているのだと思う。 短歌の

          2021年、読んだ本

          〈歌集〉 予言 イーハトーブの数式 えいしょ2020 虹を見つける達人 リヴァーサイド 西ベンガルの月 えーえんとくちから 光るグリッド 前線 Bootleg ビギナーズラック 煮汁 光と私語 新しい猫背の星 色の濃い川 広い世界と2や8や7 地上絵 恋人不死身説 パン屋のパンセ 夜のでかい川 感傷ストーブ 砂丘律 九夏 浜竹 水中で口笛 水庭 アイのオト 起こさないでください まばたきで消えていく 日本の中で楽しく暮らす 僕は行くよ ナイトフライト 緑の祠 プーさんの鼻

          2021年、読んだ本

          くろたん一首評(2021/9/28)

          I am a 大丈夫 ゆえ You are a 大丈夫 too 地上絵あげる/橋爪志保 『地上絵』 この歌は、前から書こうかなと思いながらもなかなかうまく捉えきれず、頭のなかでずっとそのままになっていた。この歌の「大丈夫」の説得性には驚かされる。あまりに無根拠であるにも関わらず、「大丈夫だ」と思わせるなにかがある。それがこの歌の魅力のひとつであり、さまざまな人が言及してもいるのだが、その説得性がどこからやってきているのか、理由はずっとわからなかった。 それがふと分かったよ

          くろたん一首評(2021/9/28)

          蝉の話

          今日は短歌関係ないです。蝉の話です。 この記事は虫が苦手な人は読まないほうがいいかもです。あと、オチが無いです。 これは今年の一月の僕のツイートです。しばらくこのことは忘れていたのですが、今日ふと思い出して、こんなことを考えました。 「夏から1月まで脱け殻が幹から落ちない可能性と、あやまって冬に蝉が羽化してしまう可能性、どっちが大きいだろうか。」 そう、ツイート時点では、冬に蝉が羽化する可能性を考えていなかったのです。なんだか急に気になってきました。で、ためしに「蝉 冬

          歌集じゃないけど

          また短歌の話がしたい。 オンライン短歌市で出てたネプリを中心に読んでます。 十年ぶりに書き足した詩のルーズリーフを海と平行にして差し出す/小俵鱚太 ※訂正 後日、指摘をいただきまして、こちらの歌、正しくは「十年ぶりに書き足した詩のルーズリーフを海と水平にして差し出す」でした。申し訳ありませんでした。そのため、以下の評も間違いが含まれています。僕の読解に大きな変更はないと判断したため、このまま残します。頭のなかで訂正しながら読んでいただければ幸いです。 後半が好きだった。

          歌集じゃないけど

          橋について

          短歌は言葉で、だから構造があって、それだけの、橋みたいなもので、だから、体の外側に存在できるのに。 人によっていろんな建て方とか材質を使うわけなんだけど、だからって向こう岸にとどかなかったり崩れそうになったら、物理法則と折り合いをつけていくしかない。 俺は最近どんどん「みんながちゃんと渡れればなんでもいい」になりつつある。

          『水庭』の話②

          月白の空ゆく鳥の生計さへ受難者めきて冬のはじまる/三島麻亜子 前回の記事(末尾にリンクあり)で諦めてしまったこの歌について、あらためて考えてみました。  まずは、音に良さがあるような気がします。 とくに個人的に気持ちがいいのは 「月白」→「生計(たつき)」の「つ」の繰り返し、それから 「生計」→「めきて」の「き」の繰り返し。この音の連鎖。 「つ」はつめたい、に通ずるし、音自体もどこか冷たくて鋭い印象がある。「き」もなんとなく金属音ぽくて、きんきんとかきりきりとか、こちらも

          『水庭』の話②

          『水庭』の話

          最近読んでいたのは三島麻亜子さんの『水庭』という歌集で、文語だしむずかしい植物の漢字とか、わかんない言葉が多くてちょっとつかれてしまった。普段読まないタイプです。でも、二周目で急にはいってきた歌が多くて、こういうのは、言葉に反映された作者の身体性に、徐々に馴染んでくる過程としておもしろくて、それも歌を読む楽しさだと思う。 キッチンに粥を炊きつつ書く便り集めし切手をときをり使ふ/三島麻亜子 お粥を炊いていて、そのあいだに手紙を書く。ふと訪れた待ちの時間を埋めるのが、手紙を書