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エッセイ

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2021年1月の記事一覧

唯一無二の仕事

唯一無二の仕事

 『敗れし者なれど』という時代小説を読んだ。主人公の佐脇良之は前田利家の弟であり、あまり有名ではない実在した武将だ。物語は三方ヶ原で討死した良之がもしも生存していたら、という所から始まっている。信長に遠ざけられた過去もある良之は、侍としての自分の実績に忸怩たる思いを抱いている。妻子も持たない彼は、「生涯に一つでよい、何かをこの世に遺しておきたい」と、主君のもとを離れた一浪人の立場で、要人の暗殺を企

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「リアリティがない」とは?

「リアリティがない」とは?

 「リアリティがないっていうけど、そんなにリアリティが欲しいんなら小説なんか読まなければいい」。先日、概ねそんな意味の言葉を、読書レビュー目的のツイッターアカウントのタイムラインで目にした。有名な小説家の発言を、ユーザーが拾ってツイートしたものだ。

 「リアリティがない」はフィクションに対する批判として誰もが見聞きしたことがあろう常套句だ。そして、擦り切れた安上がりの言葉のわりには、もっともらし

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SNSで、メメント・モリ

SNSで、メメント・モリ

 読書レビュー用のTwitterのアカウントを使い始めて7ヵ月ほどが経過した。発信も兼ねて本格的にツイッターを利用するようになって、ときどき目にするようになったのが、フォローとフォロワー(FF)数が同時にひとつずつ減る現象である。私が知る限り、原因は次のふたつである。

 ①相互フォローからのブロック(ブロ解)
 ②相互フォロワーがアカウントを削除

 SNSを利用していない人や、ツイッター利用歴

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元気があれば、何でもできる?

元気があれば、何でもできる?

 多くの人が当たり前に知っていることなのに、自分だけが長く気付かずにいたことに、後になって驚くことがある。たぶん誰しも多少は身に覚えのある経験ではないだろうか。あまり適当な例が思い浮かばないが、例えばアメリカの首都をずっとワシントンではなくニューヨークと勘違いしていたとか。知らずにいたことに後でびっくりする経験は、なにも具体的な情報に限ったことでもない。

 30年前に放映されたTVアニメ『21エ

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