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躁うつ時代を生き抜く創作術13 -うつ状態の時だからこそ、創作で感情を吐き出してみる-

うつ状態になると、とにかく自分の内面に、激しい嵐が沸き起こります。
僕もその、激しい嵐に打ち付けられて、頭を抱えて寝込んでしまうこともありました。
はたから見ていると、ただ、具合が悪くて横になっている人なのですが、おそらくうつ状態(もしくはそれに準ずる体調の悪さ)で、横たわっている人の内面では、恐ろしいほどの感情の竜巻が巻き起こっているのです。それは身を焦がすような、そう、恐ろしいほどの焦燥感なはずです。

以前も書いたように、僕たち人類は原則的に「無才」の存在なのですが、感情のスイッチが切り替わって、一転、うつ状態になると、なぜか「俺は天才だ」という壮大な勘違いが始まります。これは実に不思議なことで、うつ状態でも躁状態でもない、平坦な体調の時は、そんな自我が肥大化したようなことは考えないはずなのに、なぜかうつ状態になると、「天才だ」という勘違いが始まるのです。
そして、「天才なのに、なにもできない俺は生きている価値のないダメ人間なんだ・・・」という、まったくしなくてもいいアクロバティックな自己否定が始まって、そしてどんどん「ダメの渦」の中に沈み込んでいくのです。

うつ状態の時は、本当にしんどいです。僕もよくわかります。横になって、Youtubeのショート動画ばっかり見ちゃうし、Google検索で「躁うつ つらい時」とか検索して、今、自分の身に起こっている「超絶不可解な出来事」を、ネット上で検索しようとする。わかります。
僕もやってます。それ。
でも残念ながら、あなたの手のひらのスマホの中には、あなたの身に起こっている「超絶不可解な出来事」の答えはないんですよね。一見、役立ちそうな医学的なページに辿り着くけど、そこに書いてあることと、自分の体内で起こっている事象には、なにか決定的な"ズレ"があるような気がする。でもそれがなんなのか、明確にはわからない。そんな感じですよね。
こんがらがっているあなたの頭の中、自律神経が乱れまくっている体の中、アンバランスな感情を支えきれなくなっている心の中にしか、答えはないのです。

だからこそ、うつ状態に苦しんでいる今だからこそ、創作で自分の気持ちを吐き出してみませんか?

「うつ状態の時に、創作するパワーなんてないよ!」

そんな声が聞こえてきます。
ですが、これは医学的見解ではなく、あくまで躁うつ人である僕の見解ですが、うつ状態は、あくまで「仕事」や「活動」といったプラスの方向へエネルギーが働かないだけであって、実は自分の内側へ向かう、マイナス方向へのエネルギーが過剰になっているだけなのです(追記しますが、これはあくまで僕の体感であって、医学的とか、精神治療に基づいたことではありません)
なので、このマイナスのエネルギーを「創作」という行為で、絵や音楽や文章や、話したり、動画を撮ってみたり、何かしらを媒介にして、プラスのエネルギーに変換することで、うつ状態からの脱却を図れるのです。

鬱々とした気分の中で、自分の感情を直視することは、本当に勇気が必要です。真っ白い紙を前にしたら、紙の上には無限大の宇宙が広がっていて、どこから手を出せばいいかわからない、ということもあるでしょう。
でも、A4サイズの紙の上でだけ、紙になって気持ちで、その一つ一つを言葉や作品に形にしていけば、自分の内に引きこもっていた気持ちが解放されていく、手応えを感じられるはずです。それは快感です。あなたはマイナスのエネルギーから少しづつ解き放たれるのです。

まずは、自分の感情と正直に向き合うことから始めましょう。
そして、その感情を言葉にして書き出してみてください。

例えば、こんな風に。
「今日も一日中、布団の中で過ごしてしまった。無気力で、何もやる気が起きない。こんな自分は価値がないのではないかと思ってしまう。家族にも申し訳ない気持ちでいっぱいだ。先が見えないことに、不安も募る一方だ・・・果たして生きている価値なんてあるのだろうか・・・」

はい。こんなこと考えてますよね。うつ状態の時に書いた文章って、自分でも見返すのがつらいですよね。僕もうつ状態の時にエッセイを書き溜めていたんですけど、読み返すのに1年かかりました。
でも、うつ状態の時に率直な気持ちを言語化することで、自分でも気づかなかった本音が見えてくるかもしれません。いきなり言葉にするのが難しいこともあるでしょう。そんな時は、絵を描いたり、音楽だったり、ダンスでもいいです。言葉を使わない創作を模索してみましょう。
僕も最初、うつ状態の自分を言葉にできないから、パステル画を始めました。自分が絵を描くことになる、なんて夢にも思いませんでした。それでまさか個展まで開くなんて。
最初はなぜ、自分がパステル画を始めたのか、はっきりと言語化できなかったのですが、最近になってようやく「自分の気持ちを、どうにか理解して欲しかったんだな」と気がつきました。

言葉だけでなく、絵や音楽、身体表現など、自分に合った方法で感情をしていきます。湧き上がる気持ちや発見も、どんどん作品に取り入れていってください。
僕たちは原則的に「才能がない」=「無才」です。
だからこそ、未知なる創作と出会う可能性が無限にあり、どの創作を選び取るかは、果てしなく自由なのです。
天才のことは、世にいる天才に任せればいいのです。

創作と内省を繰り返すことで、少しずつ自分の感情が整理されていくはずです。
内省はするけど、反省はしないでください。反省は「退屈」ですし、退屈はうつの素です。反省は3ヶ月後でいいのです。
「手を動かす」と「内省」のサイクルをひたすら回し続けてください。

完成した作品は、信頼できる誰かに見せましょう。家族や親しい友人、あなたの気持ちを受け止めてくれる人を選んでください。
SNSで作品を発表するのいい。もしかしたら、似たような境遇で創作活動を続ける人と出会えるかもしれない。ただし、この時に評価にとらわれ過ぎないよう注意が必要です。「他力」は信じて、「他人」から全力で目を逸らしましょう。
気負わずに取り組むことが大切。下手でもいいんです。共感の輪が広がっていけば、うつを乗り越える原動力にもなるはずです。

創作と発表を日課にし、サイクルを回し続けることで、うつと向き合い続ける習慣が身につきます。毎日コツコツと積み重ねていくことが、感情をコントロールする力を育ててくれるでしょう。毎日創作を続けていたら、自分の変化に気がつくはずです。

何より、創作を通して自分自身と向き合う時間を大切にしてください。振り返れば、うつの症状と懸命に向き合っていた自分の姿があるはず。気づかないうちに、軌跡ができているはずです。その軌跡の周りに人が集まって、応援してくれているかもしれないし、軌跡を辿ってきた人がいるかもしれない。背中を押してくれる人もいるかもしれない。
その軌跡は、ありのままの感情を作品に込めたからできたのです。かけがえのない自己表現の体験です。

未熟でも不器用でも構いません。僕はパステル画は本当に素人でした。デッサンなんか知らないし、色彩学も学んでない。でも、絵は描けるんです。きっと文章も同じです。ダンスだって、音楽だって。
大切なのは、今ここにあるリアルな感情と対話し続けることです。不器用で、「無才」の自分を認め、励まし、時には優しく抱きしめ、そして、「無才」である自分を諦める。それは、自己愛と呼べるでしょう。
自分への愛情を育めるような創作の時間を過ごしてみてください。

きっと、内なる叫びは形になって現れるはずです。
そこにあるのは、ありのままのあなたです。
その作品を通して、同じ苦しみを抱える誰かとつながり、支え合う一歩を踏み出せるでしょう。

創作はあなたの魂の記録であり、回復への道のりでもあります。
今はまだ先が見えなくても、一つ一つの表現を積み重ねることで、希望の光を見出せるはず。

自分を信じて、表現と対話の道を歩んでいきましょう。

まずは、「創作への一歩」を踏んでください。


僕自身も、躁うつ病と診断されてから、その苦しみと向き合う日々の中で、創作の力に救われてきました。パステル画を始めたのもその一つ。「遭難」とも言える躁うつとの闘いの日々を記録したのが、僕の著書『躁うつ病患者の遭難日誌』です。

本書では、適応障害、躁うつ病と診断されてからの僕の日記を収録しています。絶望の淵にいた僕が、どのように創作に救われ、生きる希望を取り戻していったのか。その赤裸々な記録は、同じ苦しみを抱える誰かの支えになれば...という思いを込めています。

もしご興味を持たれた方は、ぜひ手に取ってみてください。
あなたの創作と対話の道のりに、一人でも多くの「同行者」が見つかりますように。僕もその一人として、見守り、応援し続けたいと思います。

試し読みはこちらから。

3月23日(木)17時~19時に、シスターフッド書店Kaninにて、『躁うつ病患者の遭難日誌』の刊行を記念したサイン会を行います。

当日は僕が直接、本書に込めた思いや、創作を通して生きる希望を見出してきた経験をお話しさせていただく予定です。参加してくださった方々とは、躁うつや創作について、もっと自由に語り合えたら...と思っています。

興味を持たれた方は、ぜひお気軽にお越しください。皆さまとお会いできることを心よりお待ちしています。

『躁うつ病患者の遭難日誌』刊行記念サイン会
日時:2024年3月23日(木)17:00~19:00
場所:シスターフッド書店Kanin
住所:
〒606-8277
京都府京都市左京区北白川堂ノ前町1 デュー・北白川 105
参加費:無料(予約不要)

もしご興味を持たれた方は、ぜひ手に取ってみてください。
そしてよろしければ、サイン会にもお越しいただけたら嬉しいです。

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