マガジンのカバー画像

バンド 【完結】

384
運営しているクリエイター

2022年4月の記事一覧

【小説】 開演前

「ミウも誘ったんだけど、大学の授業があるんだって」 「そ、そそ、そうだよね、マ、マキコち…

井川文文
2年前
4

【小説】 朝が過ぎる

「発表会に来てほしい」  森口リオンから届いたメール。たった一言の短い文章を何度も読み返…

井川文文
2年前
3

【小説】 かえりみち

 ライブ終わりの帰り道は、いつも夢見心地の気分。天から自分を見下ろしているような感覚にな…

井川文文
2年前
4

【小説】 思い通りにいかないから、面白い。

 曇天。晴天。雨天。曇天。雨天。晴天。曇天。  今週は不安定な天気が続いた。春と夏の間。…

井川文文
2年前
2

【小説】 友の線引き

 久しぶりに高校時代の友人と食事に行った。バンドのことで頭がいっぱいになることが多いが、…

井川文文
2年前
3

【小説】 チューニングの散歩

 台風一過。気分はそんな感じ。  レコーディングが終わり、怒涛のスケジュールから解放され…

井川文文
2年前
3

【小説】 ゴーヤとあぐー豚

 大人と子どもの違いは何か。  そんな話をしばしば聞くが、私の中の答えはシンプル。  夢を描けるかどうか、だ。  だから、子どもであっても、夢を描けない子は大人と同じ。それで言うと、ウチのバンドで唯一の大人は、ミウだと思う。ミウは小さい頃から驚くほどの現実主義者で、「はいはい」と言いながら、いつも私の夢に付き合ってくれる。だから、二人でいるとバランスが取れるのかもしれない。  別にどっちが良いとか悪いとかの話じゃなくて、そんな議論になったら、そう答えているだけ。私は子どもだと

【小説】 そんな質問

 口からポッと星がでた。  キラキラに光って、天高くのぼってく。  透き通った声は、ほうき…

井川文文
2年前
4

【小説】 息をのむ。

 アキちゃんは歌っていると、ますますキレイ。  何度言っても前髪で顔を隠してしまうし、姿…

井川文文
2年前
6

【小説】 世界を見てるつもりだった。

 ディレクターという立場になってから、自分がより見えるようになってしまった。良いか悪いか…

井川文文
2年前
2

【小説】 声とみみ

 ミウのベースが好き。ボンボン、ベンベン、粒みたいに響く音が好き。乱れないリズム。カタブ…

井川文文
2年前
3

【小説】 知りたいから教える。

 「誰かに教えることが一番の勉強になる」って聞いたことない?  私はある。しょっちゅうあ…

井川文文
2年前
2

【小説】 んんん!

 マキコちゃんは颯爽とスタジオを後にした。その後、居残ってダベるなんてことはしない。余韻…

井川文文
2年前
4

【小説】 あなた

「じゃあ、再開しまーす」  阿南さんの声が響くと、ガラスの向こう側でマイクの前に立つマキコちゃんが「お願いしまーす!」と快活な声を上げる。コントロールルームにいる私とアキちゃんは、ソファにちょこんと座り、譜面とにらめっこ。今回のレコーディングでは、ついにアキちゃんもディレクションに参加することになった。 「マキコちゃん、では“あなた”の収録に入りますね。まずは自由に歌って、曲全体のイメージを掴んでいきましょうか!」  マイクを通じてオペレーションをするのは私の役目。バン