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バンド 【完結】

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2021年9月の記事一覧

【小説】 図書室の前で

【ミウ】  1年A組に走った。  まだボワンボワンと鐘の余韻が響いている。もちろん教室に設…

井川文文
3年前
6

【小説】 天秤にはかけられない

【マキコ】  「お母さん、あのね、あたしのバンドが芸能事務所からスカウトされたの」  こ…

井川文文
3年前
3

【小説】 N極とS極 (ミウ)

【ミウ】  大人と子どもの違いはスピード感なのかもしれない。  興味があったり、やりたい…

井川文文
3年前
4

【小説】 ワンオブゼム (ヒロナ)

【ヒロナ】  「終わったねえ」  「た、たの、楽しかったね」  文化祭が終わった。初のワ…

井川文文
3年前
6

【小説】 ココアくん (マキコ)

【マキコ】  「今日、来てたんだ」  家に帰ってきてから、最初に着替えをする。制服をゴミ…

井川文文
3年前
6

【小説】夢中 (ミウ)

 「いい、ライブだったね。ありがとうございました。各々が作ったっていう新曲のおかげで音楽…

井川文文
3年前
5

【小説】 野球とサッカー (ミウ)

【ミウ】  みんな、神がかっていたと思う。  自分で思うことなんて、あまりないけど。たぶん、私も。  特にアキとマキコの凸凹コンビは、二人の相性も含め、これからのバンド活動での礎を築いたのかもしれない。  “冷静と情熱の間”なんてことを言ったりするけど、まさに私たちは「間」に立っていた。  全員の感覚器官が敏感になり、互いに何を思っているのかが手に取るように分かった気がする。  ライブ前、そしてライブの前半、マキコはお母さんのことで頭がいっぱいになっていた。身体中に力が入

【小説】 親の期待 (マキコ)

 お母さんは笑ってた。  バンドを馬鹿にして、夢を鼻で笑っていたはずなのに。  なんとなく…

井川文文
3年前
8

【小説】 不安定 (マキコ)

【マキコ】  歌った。  声が枯れるまで歌ってやろうと思った。  自分のミスがバンドに迷惑…

井川文文
3年前
2

【小説】 旅行 (ヒロナ)

【ヒロナ】  家族旅行のことを考えていた。  10年以上前の記憶が、どうしてこのタイミング…

井川文文
3年前
15

ライブの悪魔 (ミウ)

【ミウ】  マキコのギターの弦が切れた。  漫画とか小説だと、弦が切れる時には「プツンッ…

井川文文
3年前
10

ギターの汗 (マキコ)

【マキコ】  あたしの名前を呼ぶ声が聞こえる。  黄色い声と、茶色い声が混ざって混沌とし…

井川文文
3年前
9

バンドをしている2 (ヒロナ)

【ヒロナ】  照明が暗い間にステージに上がるのが好き。お客さんが暗がりの中で、私たちに気…

井川文文
3年前
6

湿った手 (マキコ)

【マキコ】  母と最後にした喧嘩を思い出していた。  知らないことを否定し、自分の中の世界から外に踏み出そうとしない母。  その母が、今日、ライブを見る。  突然の出来事に一時はパニックになってしまったが、ヒロナさんに励まされて気持ちはだいぶ落ち着いた。しかし、全てを吹っ切れたワケじゃない。    「マキコ、私より楽しめるの?」  ミウさんは優しい厳しさで接してくれる。負けず嫌いな私をわざと挑発するような態度で盛り上げてくれようとした。  「いやいや、直前まで曲が出来な