ここからどうやって幸せになろうかな?
はやいもので二月になりました。来年度の入学希望者からはちらほら書類が届きはじめ、いろんな意味で春の訪れを感じています。
そしてなんと、我がクラスの子が一名、お父さんの転勤により四月からしばらく学校を離れることになりました。
いつか戻ってきてくれるそうですが、わたしの担任デビューと共に入学してきた子なので・・・思入れもあり、けっこう寂しいです。
(ちなみに、あの万年カレンダーをあげた子)
そんなこともあってか、この環境だからできること・低学年のうちだからできることを強く意識するようになりました。
何か特別なことをするわけではありませんが、いま・ここが充実したものになるように、残りの時間もめいっぱい「毎日食べても飽きないご飯とお味噌汁」をお届けしていきたいです。
今日はそのご飯とお味噌汁の一部をご紹介します!
ハッピーエンドを語る毎日
低学年クラスでは、授業のおわりに毎日15分ほどの昔話をしています。カーテンを閉めて、ろうそくを灯して。ちょっと秘密めいた雰囲気の中で語っている理由は以前書いた通りですが、
もう一つ大事なのは、できる限りハッピーエンドのお話を選ぶということです。実はこれ「手っ取り早くなく」「でも確実に」ある力を育むことにつながっています。それは、
たとえ困難な状況に陥っても、自分や他者を信じてしなやかに乗り越えていく力。
心理学でレジリエンスと呼ばれているものに近いです◎
残酷な描写をどう扱うか
不思議な存在(妖精、鬼、小人、魔物など)と突飛な展開が満載で、ときにグロテスクな描写もある昔話。
今日もまさに「勇気を出してとある動物を殺すと、お城中が救われることになった」みたいなお話を語ってきたところですが、
「首をちょんぎる」とか「狼に食べられる」とか、子どもたちは一体、そういう怖いシーンをどのように受けとめているのでしょうか。
わたしの知る限り、子どもたちはいつもハッピーエンドという安心感のもとであれば、残酷なシーンもけっこうへっちゃらのようです。
(※これは太古の昔から語り継がれているような昔話に限った話です。ゲームやTVなどの暴力的なシーンはまったく別ものだと考えています。)
「幸せになるまで」向き合いつづける癖
というのも、子どもたちにとっては残酷どうこうよりも、幸せになって終われるかどうかに最大の関心があるからです。
大きな深い森に迷い込んでも、大切な人が殺されても、婚約者と離れ離れになっても。ここからどうやって幸せになっていくの?どうやって乗り越えていくの?と、祈るような気持ちで耳を傾けています。
大事なのは、いつもいつも幸せになって終わること。それを何度もくりかえすこと。そのことで、ここからどうやって幸せになっていくの?と問い続ける目、「幸せになるまで」向き合い続けるからだになっていきます。
いつかの自分がした善意が思いもよらない形で返ってきて助けになることや、ときには決死の覚悟や勇気が必要なこと。
そのような知恵に触れられることも大事なポイントで、それが自分の行いを自発的に見直すことにもつながります。
このように「自分は助けられる存在だ」「助けてくれるひとは必ずどこかにいる」と思えるようになっていくことを、うちの学校では「愛され癖」と呼んでいます!
「生きることの光と闇」がやさしくリアルに伝わる方法
大人が配慮して残酷なシーンを取り除いてしまうということがたまにありますが、そういう意味では、ちょっともったいないのかもしれませんね。
そもそも、低学年頃までの子どもたちと地上生活ばりばりの大人とでは受け止め方がまるでちがいます。
ファンタジーの世界と親しく、むしろそちらにリアリティを感じているところさえある子どもにとって、お話は地上で実際に体験するよりもやさしい形でありながら、
人間には残酷なところもある。ずるいところ、弱いところ、誘惑に負けてしまうところもある。
生きていると、時に不条理で不都合なことが起こったりする。
このような生きることの光と闇をリアルなこととして受け入れる一つの方法なのです。
小さいうちに持たせてあげたいもの
残酷なシーンは子どもに悪影響ではないか・・・と心配な気持ち、子どもを怖ろしい世界から守ってあげたい気持ちもよくわかります。
ですが、例外がたくさんあることを承知の上で言い切ってみますと、
ファンタジーの知恵や支え、そのような備えを持たせた上で現実の世に送り出してあげることも、守ってあげることと同じくらい大事ではないでしょうか。
たとえ難しい状況に直面しても「さ、ここからどうしよう?」という目でしなやかに生き延びていけるように、子どもたちをそっと応援してみませんか。
昔話をしてあげる上で大事なのは、
①ハッピーエンドであること
②誰がつくったかわからないよう太古の昔から語り継がれているものであること
③生々しく演じるように語らないこと(ナレーターのポジションを死守)
です。
お子さまの状態とよく相談したうえで、昔話を楽しんでいただけたら幸いです◎
サポートしていただけたら、毛糸を買って何か編みます☆彡