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【Weeeeekly Design #006】世界を救え!『食ロスのリアルを伝えるポスター』

00. はじめに

こんばんは!都内でデザイナーとして活動している、そのかです。
本日もWeeeeekly Designです。

先週1週間、いかがお過ごしでしたか?
私は...このweeeeekly designに悩まされた1週間でした。過去最大の難しさ、でした。
というのも、今回のテーマは『食ロス』。
日本や世界における食料廃棄量を調査したり、その現実を目の当たりにして、かなり1人で精神的にもキテました、、

やはり、想像を遥かに超える量の残飯の写真を見たり、酷い事態になっている動画を見ると、心に刺さります。

これがリアルなのに...
向き合わなくてはいけないのに...
リアルに目を向けるのは辛い。
そういった体験を痛感する日々でした。


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さて、今回私が食ロスを選んだキッカケをお話しします。

つい先日の話です。
一人暮らしで大量買いしたもやしを、、
半分くらい捨てるハメとなってしまったのです。
突然食事に誘われたり、ついついもやしの存在を忘れて他のものを食べちゃったり。。。で、ビチョビチョになった、切ないもやしたち。ごめんね。

そんな姿を見て、やってしまったという後悔と、食ロスに対する自分の情けなさを感じたので、よし!これをきっかけに、しっかり自分を見つめ直そうー!

と、思い立ったのでした。


01. 調査


まず、『食ロス』の現状を調査。
すると、衝撃の事実が。。。

 環境省が発表した「我が国の食品廃棄物等及び食品ロスの発生量の推計値」の試算によると、日本では年間約2,550万トンもの食品廃棄物等が出されており
しかもこのうち、まだ食べられるのに廃棄される食品、いわゆる「食品ロス」は612万トンだと分かりました。

 国民1人当たり約50キログラム分の食料が、まだ食べられるのに捨てられている計算になるそうです。ちなみにこの量は国民1人当たりのコメ消費量とほぼ同じ。
今日食べたコメの分だけ、ゴミとして食品を捨てている計算です。
・・・そう考えるとゾッとします。。


*参考文献|環境省HP抜粋消費者庁HP抜粋

*詳しい食品廃棄の情報に関してはこちらの資料からhttps://www.env.go.jp/recycle/H30_houkokusyo.pdf



さらに、食ロスに対して現在どのような取り組みが行われているか?を調査しました。

東京都や各自治体の取り組みとしては、
食品ロス削減を目指したサービスやアプリの開発を通して、一般消費者に対する意識の促したり、食品ロスの現状やその削減の重要性、実際の取組を知ってもらい、具体的な行動を呼び掛けることを目的とした、「食品ロスもったいないフェスタ」の開催。

また、食品製造から卸売業、小売業までの各事業者団体、消費者団体、有識者各事業者団体、消費者団体、有識者が一堂に会し、協働で取り組んでいく場として、食品ロスの削減策について検討する「食品ロス削減パートナーシップ会議」を設置・開催。

さらに、EcoBuyや、TABETEなど、スマートフォンアプリを活用し、賞味期限/消費期限が間近となった商品を購入した消費者へポイントを付与することによって、食品ロスを減らす仕組みた事例もありました。

(*参考文献は以下です)

平成29年度地方公共団体における食品ロス削減の取組状況について




02. 今回作るデザインの決定

では、なぜ食ロスを抑えることができないのか?
上記項目で調査した内容は、食ロスを減らすための呼びかけや、仕組みでしたが、まだまだ利用者が少ない事実や、食ロスパートナーシップが主催するイベントの認知度は一般的に常識かとされるほど高いものではありません。

このような、現状の施策だけでなく、もっと私たち国民の食ロスに対する解決策として、解決しきれていない原因があるのではないかと考えました。


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そもそも、『食ロスが今、大変なことになっている!』という認識はほとんどの人ができていると思うのです。誰だって、『食ロス』という言葉で食品の廃棄量を指していることはわかります。

そう、『食ロス』という言葉や、『食ロスは良くない』という印象付けには成功しているのです。
ではなぜ、私たちは"行動"をしないのか?
それはずはり、自分に被る負のインセンティブが見えないからだと考えました。

私たちは、嫌なことを避ける癖があります。汚いもの、怖いもの、ネガティブな言葉などを見ると、流石に見続けるとこは苦しいし、何度もみたいという気持ちにならないですよね。
そのため、良いものばかりに目を向けてしまうのです。

たとえば、タマゴ 🥚

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卵を買う時賞味期限をみて、賞味期限の遅い卵から購入すること、ありませんか?
それは、自分が新鮮な卵を食べたい!というわかりやすい正のインセンティブによって働かされている行動なのです。
正のインセンティブが見える時、私たちは負のインセンティブに気づかない。そして、負のインセンティブを知らないのです。

私はここが課題だと考えました。
私はこの食ロス問題において、
将来の私たちのためにも、必要な情報は全ての人が知っておくべきであり、一人でも多くの人が興味を持つ必要がある。
そのために、今回は『食ロスのリアルを伝えるポスター』をデザインすることに決めました。
理解しやすいデザイン、言葉で届けなければならないという強い思いで、取り掛かっていきました。


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03. 企業調査

まずは、ポスターを作るために、現在どのようなキャラクターがいるのか?または、どのような広告が存在するのかを調査していきました。

せっかくなので、調査してでてきたキャラクターを紹介します。

 農林水産省の食糧産業局による、
『ロスのん』

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ロスのんの掲載事例はこちら

食品ロス削減国民運動(NO-FOODLOSS PROJECT)があり、食品ロス削減にフードチェーン全体で取り組んでいくため、官民が連携して食品ロス削減に向けた国民運動を展開。
食品ロス削減国民運動のロゴマーク(ろすのん)は食品ロス削減に取り組む皆様にお使いいただけるマークです。なんとも言えない可愛さがあります。。。

さらに、農林水産省はこちらのポスターを制作し、掲げていました。

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シンプルなテキストがまとまったポスターです。食品売り場でも、気持ちよく溶け込むようなデザインだと感じました。

横浜市のマスコット
『ヨコハマ3R(スリム)夢!』

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イーオちゃんというキャラクターを用い、食品ロスへの対策をしています。
イーオちゃんの「食べきり協力店」に登録すると、生ごみの発生抑制に努めるとともに、交付されたステッカー等を店頭等に掲示し、来店者へこの取組を広く紹介することができます。
食べきりの推進に向けた消費者意識の啓発を積極的に図り、また「食べきり協力店」には、アンケート調査が行われた、食べきり協力店に登録した目的や登録による食べ残し削減効果等を把握し、飲食店等にとって、この事業により参加しやすく、効果的にするための改善を行っています。

さて、ここでみえてきた、課題感。 
それは...

各自治体や地方など、それぞれが用いる食品ロスに向けたデザインが異なるということです。

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簡単にまとめると、赤をメインに用いる地方もいれば、緑をメインに用いる地区もあります。そのほかにもオレンジ、黄色と食品ロスというイメージが各地域により異なってしまっているのです。

これでは食品ロスに対する意識が分散し、さほど一般の方に向けた影響力が薄れてしまうと感じました。
トンマナを最低限揃えることや、同じシンボルを用いるなどしなければ、"標識"として人々に常識化される日は遠のくのではないでしょうか。

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04. デザインの検討

今回の食ロスのリアルを伝えるポスターの役目は、

目に留めてもらう、想像してもらう、実行してもらう。そのためにどんなデザインが必要か?

まず、今回はターゲットが「東京全都民」です。老若男女、ライフスタイルもバラバラ、地域特性も多種多様、都市部もあれば山間部、島しょもある、さらに障害のある方、配慮が必要な方、外国人の方など、あらゆるセグメントが含まれます。

ここまで多様性に富んだ都市は、世界的にも他に例がありません。そして、食ロスの問題では、誰1人無視する訳にはいかないのです。それを踏まえて、デザイン方針を考えました。

大前提になるのが、すでに食ロスを呼びかける広告はたくさんありますから、それと同じ物を作っても意味がない。なぜ、今このポスターを作らないといけないのかを考え抜いた結果、徹底的にリアルを伝える仕様であることが重要なのではないか?という結論にたどり着きました。


あえて、残飯をダイレクトに見せてみよう

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世の中の食ロスを訴えかける広告には、このようなリアルな画像が使われていません。
だからこそ、この現状を知らない人や、この写真を見たときに催す体験をを未だにしたことのない人に向けて、"あえて"この写真を用いた広告を作ることにしました。

しかし、問題がありました。

朝電車に乗った時、ふとレストランのトイレに入った時、今日の晩ご飯の食材を購入しているスーパーでのお買い物中など。
いつだってふと、リアルな残飯の写真をみてしまうと、気分が悪くなります。

気分が悪くなると、その日の食欲が無くなったり、テンションが下がってしまい、良い働きかけができなくなってしまいますよね。

もしかしたら、残飯をダイレクトに見せすぎる広告を作ってしまうせいで、尚更皆さんの食欲を減少させてしまって、食ロスを加速させてしまう可能性が十分にありました。

私はこうして早速、広告の闇にのめり込み始めたのです。何が正しいのか、どこまでリアルを伝えることがベストなのか?かなり検討しました。

とにかくやってみよう

まず、ポスターに載せるキャッチコピー、用いるデザインの方向性、イメージカラーは何が良いか?を考えました。

| キャッチコピー

キャッチコピーは、#01で調査した食ロスの内容からピックアップ。

事実❶『年間5500万トン世界から輸入している日本が、食品を廃棄している量は約3分の一にもなる』

事実❷『世界において、餓死で亡くなる人の数は年間で1500万人であるが、日本における食糧排気量は3000万人分にもなる』

つまり、、、東京都の人口が大体1500万人弱なので、
「1年間で都民全員が飢餓で死ぬ」というレベルということです。

キャッチコピーこの2つの衝撃の事実に決定しました。

そこからポスターに落とし込むため、どちらもいらない言葉は省き、なるべくシンプルなテキストに添削していきました。


| キャラクターの選定

先ほど#03でもお見せした、各地方のキャラクターたち。それぞれご当地名物を生かしたものや、地域で有名な動物を用いたものでした。

確かに、食ロスのような目を背けたくなるようなテーマには、それを緩和してくれるような役目のキャラクターは必要だと考えました。

しかし、キャラクターに力を入れすぎてしまうと、今回一番伝えたい『食ロスのリアル』のテーマが薄れてしまいます。

できる限りシンプルに、さらにキャッチコピーにおけることの重大さをわかりやすくイメージさせてくれる動物が存在しないか?と検討しました。

そこで見つけた・・・!『トン(t)』の重さがわかりやす〜い動物。早速作ってみました。

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はい。

ゾウさんです。重いですよね。ゾウの重さを聞くときは、何キロ(kg)?ではなく、何トン(t)?と聞きますよね。

まさに食糧排気量の重さと比例させやすい重さの動物。さらに、優しい顔つきがそれを緩和させてくれますし、シンプルな形でもゾウさんは、ゾウと認識することができます。
認知度の高い代表的な動物を用いて、今回のポスターを作成していくことにしました。


| カラーの選定

食品を取り扱う企業のロゴを調査しました。調査結果として、最も多いカラーは赤で、オレンジ色を用いた企業もたくさんありました。

皆さんのイメージ通り、食品に関するイメージカラーは暖色系であると言えます。

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では、この調査結果をもとに、『食ロスのリアル』を伝えるポスターを作るため、色彩心理学の観点で、赤色とオレンジ色について検討してみます。

・赤色について

赤色は、「活力・情熱・興奮」といった強いエネルギーをイメージする色です。また、やる気になっている時・元気がほしい時・自信を取り戻したい時・自分をアピールしたい時など、エネルギーが満ち溢れているか補給したい時に赤が好まれやすいと言われています。

一方で、赤には「怒り・攻撃的・危険」といったネガティブなイメージもあり、赤はとても自己主張が激しく、小さくても目立つ色であるため、信号機やパトランプ、消火器など、危険を表すサインとして利用されています。

赤色は、血や肉・熟した果実の色であり、昔から「生命に直結する」色。そのため人は本能的に赤に反応するようなったと言われています。また、食欲や性欲といった動物的な生きる力(生命力)を高める色でもあります。

・オレンジ色について

陽気であたたかく、人間関係を促す色と言われており、ポジティブな印象をもたらし、太陽や炎のような陽気であたたかい高揚感を表します。

さらに、橙色には胃腸を刺激し食欲を促す効果があると言われていることから、このように食品を取り扱う企業がオレンジ色を取り入れるのも理解できます。

そして、オレンジ色はいいことばかり。不安や抑圧から解放する効果もあると言われています。橙のやさしくてあたたかい光は、恐怖やプレッシャーによる心の不安や抑圧を取り除く効果があり、心身のバランスを整えることが期待されています。

さて、このように色彩心理学から色味について検討してみたところ、どうやらオレンジ色は人に対して良い効果をもたらし、赤色は人の目を惹きつけることができることがわかりました。

今回私が伝えたいことは、食ロスのリアルについて。

そこで、
”本来はオレンジ色であるべき食品における問題が、今、危険となりつつある” 
という事実を見せるために、
"オレンジ色が赤色になりかけているような、濃いオレンジ色"
をメインカラーに選定しました。
そうすることでカラーにメッセージ性をプラスしたポスターを作成していけると考えたのです。

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そうして、最終的に完成したポスターデザインがこちらです。

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ではここから、色々とこれに至るまでの没作品をお送りいたします。☺︎
暖かい目で見守っていただけると嬉しいです!


左から、作成順になります。

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そのほかにも、色のパターンなども検討してみました。ブルーをメインに使うことで、ネガティブな印象をダイレクトに伝えられるデザインも面白いなと、制作していて思いました。

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デザインにおいて、一番拘ったのは、複雑な模様や柄を使わないようにしたことです。
なぜなら、このポスターは徹底的に「東京仕様」。東京に住む人のライフスタイル、都市構造などを考慮すると、どの場所にいても対応できることを目指しているからです。

多種多様な人々が暮らす東京で、視認性や配色の分かりやすさに配慮しました、そしてもう一つ、時間がかかったのが、、、文章の読みやすさ、伝わりやすさです。

最小限の言葉で最大限に伝える。
さらに、ダイレクトに伝わるようにしたかったので、文字の間隔を違和感のない程度まで詰めています。言葉に強みの印象をプラスできるように試行錯誤しました。

また、誰かに話したくなるような、小ネタとして受け入れてもらえるようなキャッチコピーにすることで、この食品ロスにおけるリアルを、たくさんの方に共有していただけることを想像しながら作りました。

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05. いつもよりちょっと長めの、おまけ

最後までお読みいただき、
本当にありがとうございます!!!!

今回、とてもボリューミィーな内容になってしまったので、読み切るのに大変だったかと思います。お読みいただいた方、ぜひ感想を教えていただけると幸いです!

今回、私は初めて食ロスに対してきちんと向き合ったように思えます。
ちょっと話がそれてしまいますが、私は実家が居酒屋なのです。そんなこともあり、昔から食ロスの光景に胸を痛めていました。

だからこそ、食べられないのに頼むお客さんや、"残す"という暗黙の礼儀のようなものがとても嫌だ、と強く思うような子に育ちました。せめて、食べられないものを最初から頼まない、と言った最低限できることを私たち全員が取り組んでいくだけでも、大きく世界に貢献できると思うのです。

そうすることで、飲食店の方は気持ちよく接客することができますし、私たち自身も

・サスティナブル意識向上の実感

・社会貢献をすることで得られる喜び

などを感じながら過ごすことができます。
本当に危機がそこまで迫っている今だからこそ、こういったポスターデザインのような取り組みをすることができてよかったです。

そして、ポスターのデザインとは、いわゆるグラフィックデザインの類に入るのですが、このデザインが、本当に難しかった、、、。
仕事では今、webデザインやUIデザインをメインに行っているのですが、これらのデザインにはある程度決められた"制約"が存在します。

そのため、コンセプトやテーマ、ターゲットなどが決まっていれば、ある程度形を作ることができ、すぐに壁打ちできたり、完成するまでもが早いのです。(そのため、コンセプトやテーマ、ターゲット決めに時間がかかるのですが。)

一方、グラフィックデザインは・・・

コンセプトやテーマが決まっているからと言って、決められている制約が存在しません。自由なのです。どんな形、どんな表現でもよしとされれば、良しなのです。
デザインに取りかかってから、何をメインとして何をおくのか?何処に配置するのか?これが正しいのか?もっとこうしたら良いのではないだろうか?・・・と、常に常に頭の中に疑問や不安、改善案がぐるぐる回り続けるのです。

まさに、沼。

沼沼沼。。終わりがない、底無し沼です。

私は今回この沼にしっかりハマったため、自分では這い上がれなくなりました。(自分だけで正解を見つけるということが困難になってしまったという意味)
そこで、同い年のデザイナーの友達に見てもらったりしながら、ポスターデザインをブラッシュアップしていきました。本当にありがとう😭

いやーグラフィックデザイン。。。奥が深すぎます。

でも、とっても楽しい

これからもっともっと、いろんなデザインを突き詰めて、深みに触れられるように練習していきたいと思います!!!

さて、ここまで長くなってしまいました。お付き合いいただきまして本当にありがとうございます。次のWeeeeekly Designは今週です!笑

早速手を動かしていきます🔥

今週のアウトプットは遅れてしまいましたが、次回取り戻していきたいと思います!ではでは今週の日曜日のWeeeeekly Designもお楽しみに☺︎

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