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ビジネスエシックス

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#企業の社会的責任

日本企業と主要なステイクホルダーの関係:株主

日本企業と主要なステイクホルダーの関係:株主

日本における企業と株主の関係において特徴として、株式の持ち合いによる企業株主の存在があげられる。株式の持ち合いとは、複数の企業間で株を相互に保有し合うことであり、このような慣行は戦後からすでに日本においては行われていた。また、株式の持ち合いは明確な契約書が企業間で交わされるわけではなく、そこには、株式保有期間に関する暗黙の了解と、議決権行使に関する暗黙の了解が当事者企業間にあるのみであった (加護

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日本のCSRの歴史

日本のCSRの歴史

日本においてCSRという言葉が本格的に用いられるようになったのは2000年以降である。しかし、それ以前にも様々な社会問題や環境問題が生じており、その際には企業に何らかの責任があるのではないかということは議論されてきた。ここでは日本のCSRの歴史を簡単に振り返ることにする。

戦後の日本におけるCSRに関する問題の一つに、労使間紛争があげられる。例えば、三池争議や日産争議、王子製紙争議など、大企業に

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三方よしとCSR

三方よしとCSR

三方よしと企業の社会的責任 (CSR) との共通点および相違点を整理しておく。まずは類似点である。第一に、三方よしもCSRもどちらもビジネス主体を中心にした論理である、ということである。例えば、三方よしの主体は近江商人であり、近江商人(売り手)と小売商(買い手)および商圏(世間)の関係性という観点から述べられた概念であり、近江商人とは関係をもたないもの(例えば、当時の他の国の人々や社会)に対する善

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ステイクホルダーの顕著さ

企業はその企業のステイクホルダーを特定し、ステイクホルダーに対する価値創造を行うことが求められている。しかし、既存研究ではあらゆるものが企業にとってのステイクホルダーになりうることが指摘されている。最も一般的なステイクホルダーは、株主、顧客、サプライヤー、従業員、そして地域コミュニティである。しかし、ステイクホルダーの定義である、「組織の決定、政策、および運営に影響を及ぼし、あるいは、組織からの影

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ステイクホルダー・アプローチ

ステイクホルダーとは、組織の決定、政策、および運営に影響を及ぼし、あるいは、組織からの影響を受けることになる人々や集団として定義されている (Freeman 1984)。例えば、従業員、サプライヤー、顧客、株主、コミュニティなどが代表的なステイクホルダーとしてあげられる。そして、企業はこうしたステイクホルダーとの関係を構築しながら事業を行っている。

ステイクホルダーの定義において注目すべきことは

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企業とは何か

企業というものを厳密に定義することは非常に困難ではあるが、それでも人々あるいは研究者が「企業」という言葉を用いて議論を展開する場合、ある種の仮定を設けている場合が多い。そこで、ここでも一定の仮定を置くことで、企業がどのような存在で、どのような目的を持っており、どのような責任を負うべきなのかについて理解を深める。

まず、議論を単純化するために、ここでは企業を「営利企業」、とりわけ「株式会社」として

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ヨーロッパのCSRとアメリカのCSR

はじめに企業の社会的責任(CSR)という考え方はだいぶ浸透してきたように思う。日本では2003年がCSR元年として位置づけられており、この時期から日本の大企業はCSR専門の部署をおくようになっている。

一方、こうしたCSRに関する企業の取り組みは国ごとに異なっていることが指摘されている。なぜこのような違いが生じるのか、についてMatten and Moon (2008)はフレームワークを提示して

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ビジネスエシックス:企業の社会的責任

企業の社会的責任のことをCSRと呼ぶ。
多くの日本企業がCSR活動を行っており、CSRという概念は日本においてもすっかり定着していると言える。

企業の社会的責任に関して、最も有名なフレームワークはCarroll によるものだろう。

Carrollは企業の社会的責任として、

1. 経済的責任
2. 法的責任
3. 倫理的責任
4. フィランソロピーの責任の四つをあげている。

経済的責任とは、

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