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最初にお断りさせていただくと、顔ヨガは医療ではありません。
顔の表情筋トレーニングというと、どうしても『美容』としての側面ばかりが注目され、『健康』にも大きな効果が期待できることは後回しにされがちです。
なので、あえて最初にお断りさせていただいたうえで、想いを伝えられたらと思います。1回目は、ここでいう『健康』に興味をもったことのキッカケについてです。

■私が認知症・誤嚥予防としての顔ヨガに興味をもったキッカケ

私が最初に高齢者の方のレッスンを担当したのは、NPO法人『生き活き倶楽部』代表者にご依頼をいただいたことがキッカケでした。
日本は2050年には約3人に1人が65歳以上になるといわれる、世界でも稀に見る超高齢化社会です。
社会全体の人手不足という状況もあり、介護する側の肉体的・精神的なストレスはたいへん大きく、今後大きな社会問題となることは必須です。

60代~80代の方が参加される脳活サロンでは、自立したセカンドライフを過ごしていただくために、元気なうちから介護や看護を必要としない身体作りのお手伝いを、運動やレクリエーションの教室開催により取り組んでいらっしゃいます。
(2017年脳活サロン顔ヨガ講座の様子)

能活サロン2

■参加者の予想外の言葉と行動

予め、主旨に沿って『生きる力』と題し資料を作成。講座当日は顔だけではなく、姿勢や呼吸について、座学と実技を組み合わせ進めました。
いつも通り顔ヨガのポーズをおこなうことで序盤から盛り上がります。

『あれ?』

最前列に座っていた女性がひとり、鏡を見ずにポーズをおこなっていました。

『〇〇さん、鏡を見ながらお顔を動かしてみましょうか』と歩み寄りました。

『いいの。お化粧しないで来ちゃったし、もう自分の顔を見るのが嫌なの

一瞬動きが止まってしまったことを、今でもよく覚えています。

『良いですよ。じゃあ、そのまま続けましょう』

レッスンを続け中盤を過ぎた頃、その女性が鏡を手にとったのです。私は視界の端で、その瞬間をしっかり見ていました。
その方はそこから、鏡に写る自分の顔を見ながら、どの参加者よりも真剣に顔ヨガを始めたのです!

みるみるうちに表情も変化していきます。
不思議な光景でしたが、その女性の『心』に変化が起こったことは明白でした。

終了後、その女性が帰り際、私を見て仰いました。

『先生、ありがとう。楽しかったわ。鏡、見てみるわ。今度はお化粧して来るわね

満面の笑みでした。

嬉しくて飛び上がりそうになりました。

■生まれた自覚

お化粧は女性にとって特別なものです。お化粧をしなくなってしまった背景には、けっして単純ではない理由があることに私は初めて気がつきました。

帰宅してから、私はその日起こったことを思い返してみました。
鏡を見て自分と向き合うことで、その方が『女性』を取り戻してくださったのだと解釈しています。

環境や人生も様々です。
そのなかで、このレッスンに足を運んでくださったその女性の勇気や想いは大きなものだったに違いありません。もしかしたら、本人ですら、どうして鏡を見るような講座に参加したのかお分かりではなかったかもしれません。

この時初めて、自分が心から誇れる、素敵なお仕事をさせていただいているという自覚をもったのと同時に、顔ヨガが単なる、美しくなるためのメソッドではないことを知りました。

②へつづきます。
次回はもうひとつのエピソードと、心への作用のお話です。
お楽しみに。

#顔ヨガ #認知症 #健康 #介護 #高齢化 #誤嚥 #予防 #運動

#人生 #仕事

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