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知らない本を紹介しよう!第1回おたま研ビブリオバトル vol2

おたまじゃくし研究所では、ハーモニーのあるコミュニケーションを実現するために、人間同士の話し合いデータを研究しています! note では、話し合いの研究成果や分析方法を公開しています。なお、話し合いの計測には、Zoom 録音データを分析する Hylable Adapter for Zoom を使いました。
※ 普段、研究論文ばかり書いているので気を抜くと文章が堅くなりますが、頑張って柔らかくしています!
スキやコメントなどお待ちしています!

自己紹介

6月からハイラブル株式会社でアルバイトをしている大学院修士1年の橋本です!
普段は人工知能を使った対話システムの開発を行っていますが、今回はおたまじゃくし研究所での会話分析を行います。大学時代は部活のブログを月1回くらいで書いていたので、少しは慣れていますが最近は論文ばっかりを読んだり書いたりなので文章が堅くなりすぎないように気を付けます!

ビブリオバトル

前回に同様、ビブリオバトルのルールを一部変更し遊んでみました。この記事では、前編から引き続き、後半3人の発表をお見せします!

本とプレゼンテーションの紹介

柳楽研究員のターン

「絶叫委員会」
著:穂村 弘

柳楽研究員「この社会のそこら中に言葉があるのに、誰もそんなのを気にも留めないで生活している。そんな社会に向けてこの本を読んでほしい。」

町には、偶然生まれては消えてゆく無数の詩が溢れている。突然目に入ってきた「インフルエンザ防御スーツ」という巨大な看板、電車の中で耳にした「夏にフィーバーは暑いよね」というカップルの会話。ぼんやりしていると見過ごされてしまう言葉たち…。不合理でナンセンスで真剣だからこそ可笑しい、天使的な言葉の数々。

「絶叫委員会」あらすじ

柳楽研究員
「この本は一言で言うと著者がこの世界の言葉に考察やツッコミを入れていく本です。そしてこの本には2つの魅力的な部分があります。

1つ目の魅力は「筆者の言葉へのアンテナの高さ」です。
筆者は、あるときトイレで「いつも綺麗にご利用頂き“ありがとうございます。”」という張り紙を見つけました。この感謝の言葉は駅、公園、工事現場などいろいろな場面、場所で使われています。
しかし、いつから「ありがとう」はこのように使われるようになったのだろう、と筆者は考えました。こういった筆者の考察が、今まで当たり前だった「言葉の使い方、使われ方の可笑しさ」を再発見させるきっかけになり、楽しむことができる。

2つ目の魅力は「筆者の言葉への妄想力」です。
電柱のかなり低い位置に貼ってあった張り紙の内容
「ひまわり会🌻:一緒にお茶会🍵、カラオケ🎤、etcをしませんか?」
から
「これを貼ったのは背の小さい宇宙人なんじゃないか?
一緒にロケットに乗って暗黒の次元まで連れていかれるんじゃないか?
しかも、きっと最後には暗黒次元で宇宙人とお茶を飲んでカラオケをするんだ!」

にまで至る筆者の妄想力。
こういった、たった1つの言葉や文章をどんどん膨らませて、ストーリーにする妄想力がすごく面白い。

1つの言葉あたり4ページほどで、すごく手軽に読めるのでぜひ読んでみて欲しいです。」

角研究員「すごい!なんか、理系っていう感じがする(笑)
     理系の文系的興味の持ち方っていう感じ!」
仲山研究員「「私が感動した2つの理由を説明します。」みたいなね(笑)」

角研究員「柳楽さんから見てこの本はどんな面白さがありますか?」
柳楽研究員「町で見かけた言葉に対してこの作者ならどんな感想・考えを抱くだろうって思わず考えてしまう面白さですかね。
それは作者の考え方やフィーリング、特に事象を論理立てて考えるところが自分によく似ているからだと思う。」

そんな理系(柳楽研究員の専門は音声情報処理研究・Webシステム開発)ながら、言語学への興味を示した柳楽研究員におすすめの本があるという角研究員。ここから角研究員の幻のプレゼンが始まるのですが、それは最後のおまけで!

仲山研究員

仲山研究員「私が今から紹介するのは桃太郎の絵本です。では読んでみましょう。」

「昔々あるところに、おじいさんとおばあさんが居ました。おじいさんは山に芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。・・・」

一同「???????」

「・・・桃太郎はすくすくと成長し、立派な青年になりました。」
誰もが一度は聞いたことのある物語をただただ朗読する仲山研究員

「・・・桃太郎とおじいさんとおばあさんは幸せに暮らしましたとさ。」
この時点で2分40秒経過していて、持ち時間は半分を切っています。
しかし、ここでようやく絵本のタイトルを見せる仲山研究員

空からのぞいた桃太郎
著:影山 徹

一同「ほーーーー!!!」

仲山研究員「この本の面白いところは全ページ "空" からの視点で描かれている点。全ページ空からの俯瞰で描かれている。


驚く一同

仲山研究員「俯瞰で見ると大勢の鬼にたった1人と3匹で挑んだ桃太郎の勇敢さ、無謀さが見て取れる。それだけではなく、鬼たちの幸せで豊かな生活が桃太郎によって破壊されたことも、描かれている。」

この本の帯:「鬼だから殺してもいい?」

仲山研究員「鬼側の目線とか3匹の家来からの目線とか、物語の目線を変えた作品はあるけど、淡々と俯瞰的に「桃太郎」を描写した作品は無い。
しかも、こうやって俯瞰的に「桃太郎」を見ると、物語の外で起きている現実の戦争や正義って一体何なんだろうと思った。」

仲山研究員が紹介した本は「桃太郎」。プレゼン中には大人が大人5人に向けて絵本の読み聞かせをするという非常に奇怪な時間がありました。
しかし、まさかの仕掛けに聴衆5人は非常に食いつきました。

角研究員「俯瞰的に描いていることで作者さんの「桃太郎」という物語に対する思いや考えをより感じますね。」
柳楽研究員「仲山さんが感動するくらいの絵本ですけど、この絵本って対象年齢はどれくらいなんでしょう?」

仲山研究員「対象年齢は3~5歳だから、こども向けっぽい。だけど作者の、こども向けにしつつも一緒に絵本を読み聞かせる大人にパンチを食らわせたい、という気持ちが伝わってくる。」

こちらは著者の影山氏、編集担当の岩崎氏(代表作「もしドラ」など)のインタビュー記事。本の制作背景などが伝わってきます。
もし興味が出た方はぜひインタビュー記事も読んでみてください!


水本所長

日本の祭り
著:柳田國男(日本民俗学の創始者として有名)

水本所長「こちらは柳田先生の民俗学の講義録です。」

古来伝承されてきた神事である祭の歴史を、「祭から祭礼へ」「物忌みと精進」「参詣と参拝」等に分類して平易に解説。近代日本が置き忘れてきた日本の伝統的な信仰生活を、民俗学の立場から若者に説く講義録。

あらすじ

水本所長「この本の中で、柳田先生はいわゆる伝統的な祭りは祭りの原型とは言えないことを説明しています。

  • なぜ本来は神社の御神木のように、神様の場所が指定されていたにも関わらず、変化したのか。

  • なぜ提灯に代表されるような火や飾りが祭りに用いられるようになったのか。

  • なぜ特別な日に特別な食事をするのか。

  • なぜ祭りはこういった変わった発展を遂げ、少しずつ派手になっていったのか。

こういった話がいろんなエピソード、事例を踏まえて説明されていて非常に面白い!」

最後に発表した水本所長は、日本民俗学の創始者として名高い、柳田國男先生の講義録です。4人目の柳楽研究員と同じく、バリバリ理系の水本所長ですが意外にも民俗学の本というチョイスです。

柳楽研究員「へ~、面白そう」
角研究員「なんで柳田先生は理系の学生向けに講義をする必要があったんですかね?」
水本所長「当時の学生(東京帝国大学の学生)は地元の田舎を捨てて東京へ来た。つまり、本来の日本の伝統を体験せずに来てしまった。田舎の文化やお祭りというのは決して野蛮なモノでなく、文化的かつ論理的な進化をしてきたことを説明したかった。」

長尾研究員「こんな古い本、水本さんはどうやって見つけてきたんですか?」
水本所長「本屋に行って知らない言葉があったらジャケ買いする癖があって、そこで目に入ってきた「日本の祭り 柳田國男」に惹きつけられたんですよ。」
井上研究員「ジャケ買いでこれか~、すごいな!」

ここから「日本の祭りは観光客を呼ぶために進化した話」や「祭りにいるヤンキーは実は大昔から居た話」などが繰り広げられていました!




結果発表

以上で6名分の本の紹介を終わります!
角研究員「今日知った本、もういくつかポチっちゃったよ。」
長尾研究員「前回のぽかんゲームに通ずるモノがあるね。」

6人の発表を終え、5分間のディスカッションをはさみ、投票パートへと移行しました。

ディスカッション中の様子
感想を言い合っています

結果は







井上研究員の「人を動かす言葉」が4票を集め優勝です!🎉

6人中4人の表を集めた井上研究員

井上研究員、おめでとうございます!🎉

ちなみに
井上研究員は角研究員の「シオリエクスペリエンス」へ
長尾研究員は水本所長の「日本の祭り」へ
それぞれ投票しました!

終わりに

前後編通して6冊紹介をしてきました。漫画、インタビュー集、名言集、エッセイ本、絵本、講義録など幅広い本が紹介されましたね。
次回の記事では6人のプレゼンテーションから見る”良いプレゼンとは”、”良い質問者とは”、を Hylable Adapter for Zoom から得たデータを用いて説明していきたいと思います!

そして読者の皆様も興味が出た本があれば、ぜひ手に取ってみてください!

執筆:ハイラブル株式会社 アルバイト 橋本慧海

おまけ 角研究員の幻の発表

柳楽研究員の発表のすぐ後。
角研究員「僕、そんな柳楽研究員におすすめの本があるんですが、いいですか?」

言語学バーリ・トゥード
著者:川添 愛

日常にある言語学の話題を、ユーモアあふれる巧みな文章で綴る。著者の新たな境地、抱腹絶倒必至!

あらすじ

角研究員「本の中で筆者は、よくある本のタイトルの「○○はなぜXXなのか」っていうのは、勝手に前提条件を決めて選択肢を狭めていることなどを指摘している。

それ以外にも、
皆さんクリスマスになると流れるユーミンの曲と言えばなんですか?」

長尾研究員「恋人はサンタクロース~♪でしょ?」
角研究員「実はあれって、「恋人”が”サンタクロース」なんですよ!
そういう日本語における「は」と「が」などの違いを筆者の思考のプロセスを見せながら分かりやすく示してくれる。
ぜひ言語学を学んでいる人なら、この本はぜひ読んでほしい!」

熱くなっている角研究員の発表

長尾研究員「なんでこの本を発表しなかったの(笑)」
角研究員「ほんとにギリギリまで迷ってた!こうやってすぐ出せるってことは最後まで迷ってたことが伝わるでしょ?(笑)」
仲山研究員「これは幻の発表として扱われるね(笑)」

まさかの2冊紹介した角研究員。ルール上認められるのは1冊のみですので、今回はおまけということで紹介しました。

そして次回の記事では、角研究員の発表ルールがあった時と無かった時の発表の盛り上がりなども、データで見比べられると思いますので、ぜひ次の記事をお待ちください!

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