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コミュニケーションゲームを作ってみよう:ポカンゲームの実験と分析結果

おたまじゃくし研究所では、ハーモニーのあるコミュニケーションを実現するために、人間同士の話し合いデータを研究しています! note では、話し合いの研究成果や分析方法を公開しています。なお、話し合いの計測には、Zoom 録音データを分析する Hylable Adapter for Zoom を使いました。

※ 普段、研究論文ばかり書いているので気を抜くと文章が堅くなりますが、頑張って柔らかくしています!
スキやコメントなどお待ちしています!


ゲームを作ってみよう

おたまじゃくし研究所では、コミュニケーションの実験を行うなかで、会話分析を使ったゲームを作ったりもしています。たとえば、前回のおたま研フェスでは、おたま研で開発した バランスゲーム を行いました。

今回は、新しいゲーム「ポカンゲーム」を作って遊んでみました。この記事では、ポカンゲームのルールと、遊んでみた結果を分析します。


ポカンゲームとは

おたまじゃくし研究所では毎月いろいろな実験や議論を行っています。その中で、「このメンバーはみんなバックグラウンドが違うから、自分しか話せない話があるんじゃない?」という話題になりました。
これをゲームにしてみたら面白いかも!と盛り上がりました。

そこで、仲山研究員が以下のルールを作ってくれました。

【お題】
自分のまわり(特定コミュニティ)では「常識」なことで、おたま研のみんなにはわからなそうなハナシをしてください。

条件は以下です。
・一文で表現すること(スライドに書いておくといいかも)
・自分の思い入れのあるテーマであること
・略語は用いないこと(例:KPI)

仲山研究員

各メンバーは宿題としてお題を考え、翌月にゲームを行いました。
遊び方はこうです。

  1. [出題] 出題者が、一文が書かれたスライドを表示する

  2. [シンキングタイム] 他のメンバーが出題者に質問しながら文の意味を考える。出題者は適宜ヒントを出す

  3. [回答と解説] 出題者が文の意味とその背景を説明する

  4. [わいわい] その話題でみんなでわいわいやる

  5. ターン終了。出題者を変えて 1 に戻る


分析結果:会話パターンの特徴

ポカンゲーム実験の結果を分析していきます。ハイラブルでは、Zoom の録音データをアップロードするとその会話パターンを分析することができるので、これを使いました。

ここでは、それぞれの研究員のターンを比較することで、会話に共通したパターンがあったのかを調べます。ちなみに、各研究員が出題したお題と、会話パターンを個別に調べた結果はとても長くなったので、別の記事で紹介します。お楽しみに。

出題者の発話量が一番多い

下の図は、ターンごとにメンバーの発話量を棒グラフにしたものです。
話し好きのメンバーや聞き上手のメンバーなど、話す量には偏りが普通ありますが、「出題者の発話量が一番多い」という共通点が見つかりました。

ターンごとの発話量の比較(単位は省略)

このように、ターンごとに明確に主役が移り変わっています。これは、シンキングタイムでのヒントや、その後の解説タイムなど、出題者が自然に発言する機会が多くなるからだと考えられます。ちなみに、図右上の水本所長が出題者のとき、柳楽研究員の発話も比較的多くなっています。これは、水本所長が出した話題が、2人で共通の「常識」に関する内容だったのが原因です。

主役を切り替える実験は過去にも行っていました。しかし、たくさん話す主役を人工的に決めてしまうと、発話を増やすために朗読したりと、想定する「主役パターン」にならず失敗してしまいました。
(下記リンク先の「恐怖の朗読タイム」参照)

一方、ポカンゲームによって、この主役の切り替えることに成功しました。自然に話したくなる構造が効いたのでしょう。

正解が出た直後に、出題者の発話量が急増

出題されてから、すぐに回答が出ることもあります。しかし本番はそこからでした。堰を切ったように、出題者の発話量が急増したのです。

下の時間変化を表すグラフからそれがわかります(面積が大きいほどたくさん話しています。グラフの詳細はこの記事を参照)
四角で囲んでいるのが、回答がでた直後の時間帯です。出題者の面積が急に大きくなっている、つまり、たくさん話しているのです。

発話量の時間変化グラフ。四角で囲った部分は、回答が出た直後に出題者の発話が急増した部分

これは、シンキングタイムで答えを待ったり質問に答えながら、「答えにならないようにヒントを言う必要がある」というフラストレーションが、回答によって一気に開放されたからだと考えられます。

どの出題者も、説明したくてウズウズしていたのです。
ポカンゲームは、正解が出てからが本番だと言えるでしょう。


ルールのポイント

おさらいすると、ポカンゲームのルールはこれでした。

【お題】
自分のまわり(特定コミュニティ)では「常識」なことで、おたま研のみんなにはわからなそうなハナシをしてください。

条件は以下です。
・一文で表現すること(スライドに書いておくといいかも)
・自分の思い入れのあるテーマであること
・略語は用いないこと(例:KPI)

このゲームが面白くなったのは、特に条件の部分にあると言えるでしょう。

  • 一文で表現すること
    この条件によって、お題が、心が折れない程度の難易度に抑えられます。スライドにしたことで、出題している感が出るのもよい構成でした。

  • 自分の思い入れのあるテーマであること
    知識として知っているだけの難しい文章では、回答後に語ることがありません。思い入れのあるテーマに限定したのが語るには必要でした。
    この語りによって、互いの性格や文化がより掘り下げられて、頭の疲れるとても楽しいゲームになりました。

  • 略語は用いないこと
    ゲーム性を増す条件でした。略語を使わないことで、出題する側は難しくなりますが、ゲームに取り掛かりやすくなりました。
    さらに、表面上は同じ言葉を使うことで「いつも使っているあの語は、実はこのコミュニティではこういう意味があるんだよ」という、出題者が語りたくなる仕掛けになっていました。

遊び方のヒント1:ルールを細かくする

指示型のルールがほしいイヌ派[1] の人が多い場合など、もう少し運用ルールが細かいほうが良いこともあるかもしれません。
[1] 仲山 進也『「組織のネコ」という働き方』, 翔泳社, 2021)

そんなときは、細かくルールを決めてみるとよいでしょう。また、指定する「特定コミュニティ」の例を付け加えると考えやすいかもしれません。
まとめるとこのようになります。

【お題】自分のまわり(特定コミュニティ)では「常識」なことで、みんなにはわからなそうなハナシをしてください。

条件は以下です。
・1文で表現すること(スライドに書いておく)
・自分の思い入れのあるテーマであること
・略語は用いないこと(例:KPI)

なお、「特定コミュニティ」には、たとえば以下のようなものがあります。
・自分の所属している or 所属していた学校や会社などの組織
・地元の言葉
・専門分野
・趣味     など

本番では、以下のようにゲームを進めていきます。
1. [出題] 出題者は1文を示し、次にクイズ形式で質問をします。
 例:「これは何の説明をしている?」
   「どんな状況のときにこの1文を言う?」
2. [シンキングタイム] 回答者は推測しクイズへの回答を試みます。出題者は、回答者からの質問に回答したり、ヒントを出してください。
3. [回答と解説] 回答が出た o r諦めた後、出題者は1文を説明します。
4. [わいわい] みんなでこの話題についてわいわいやります。
5. 出題者を変えて 1 に戻ります。

遊び方のヒント2:いつ遊ぶ?

また、これは「他の人がポカンとする」ことが大事なので、お互いのことを知っている必要があります。そのため、初対面のアイスブレイクというよりは、しばらく一緒に活動をした人同士のほうが楽しめるでしょう。


まとめ

今回は、「他の人がポカンとするような1文を準備して、意味を推測するポカンゲームを作って、自分たちで遊んでみました。

ルールはシンプルですが、とても楽しくて、非常に頭を使うゲームでした。出題者が一番多く話すことがわかったので、全員に話す機会を持ってほしい場合に使えるでしょう。ウミガメのスープに少し似ていますね。

ぜひポカンゲームで遊んでみて、感想や、出したお題、会話パターンなどをシェアしてください! タグは  #おたま研 で!


執筆:おたまじゃくし研究所所長 水本武志

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