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短歌集(~2019/12/16)

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短歌集です
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記事一覧

KILL TIMEのための短歌集

人間は顔ではなく肉質で決まる

奇跡願っているすれ違う人一定の確率でイエス・キリスト

この歌みてTwitterやる人が増えればいい

しょうもない神託をうけた気がする午後の微睡みノアの箱舟

ボトルメール流してみたい潮の流れでまたすぐ戻って来る

涙は人間が作る海の最小単位です

ルージュの伝言残そうとして清掃の苦労思いて思いとどまる

MPもないくせに「パルプンテ」と唱えてみる

氷を砕く今世

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眠るまでの短歌集

隔離解除まで待っていたのかグラウンドのソメイヨシノ

深夜の病院で合わせ鏡に立ってみたけどまだ何もない

しんしんと幻聴がある真夏の雪が積もる音

さみしい夢を見ていた気がするのとお姫さま お薬増やしておきますねと王子さま

人類はもう古いこれからは電気羊の時代だ

秘密の質問に秘密にしていたこと訊かれて我動揺す

母の鳴らす熊避け鈴頼りに幻想の山を往く

二段階認証第一問 幼き頃の夢を答えよ(悪

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眠る前までの短歌集

「パプリカ」と声に出して言ってごらん とても寂しい気持ちになるから

砕けんばかりに鳴く蝉しぐれ砕けとばかりに

言葉と意思の接地面 たぶん「愛」って形になるよ

幼子の出鱈目な歌詞がアメリカ近代史と偶然の一致

愛せぬなら光れ 光れぬなら鳴け 鳴けぬなら光るまで待つよホトトギス

「さよなら」と手を振る人達あれはまともな目だった

キティちゃんの箸落ちるのを眩しそうに見ている祖母の眼差し

星座

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余暇のための短歌

トマト煮えるスピードは涙の落下と同じスピード

○万人と括られた無数の悲しさ身にしみて神の仕業を見た気がする

架空人物おもいて生没年月日社会の教科書から探す

教え子から思いがけず男性器名称出でて笑ってしまった後の気まずさ

ペットボトルの水落ちる 未消化のアダムの林檎嚥下したり

同じ振り袖着て かたや女将 かたやきゃりーぱみゅぱみゅ

泣きじゃくったあと 外れたつけまつげに震えるシルバーラメ

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もう前世(短歌集)

友の名を詠みいれることに躊躇いおぼえる 人をフィクションにしていくようで

そうめんは嫌いという母の声きいて茗荷を冷蔵庫の奥に隠す

残酷な事象に蓋をして過去と書いてしまっておく

どこまで行けども道は道 よろめきながら星の欠片ポケットに拾う

月見台の如く扱われるディズニーランド土産のカンカン(クランチチョコレート入り)

もはや賢者になりたる祖父の家で見つける用途不明の法律用語辞典

ダイアモ

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職業欄(短歌集)

長雨のち快晴新元号まだ気温の調整上手く行かないらしい

自由欄に詩人と書こうかしばし迷いて無職に○を打つ

希望幸福何でもあります100円以外の商品もあるダイソーの二階

クーラーの風は潮風のにおい十畳ワンルームに鯨のたうつ

黄色い物ほどカロリーは高いと言いつつ夕焼色のジャム塗っている。これもひとつの幸福点だね

「そこになければないですね」と品出ししている店員 ザ・幸福と書いてあるプレートの下

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暇満ちて(短歌集)

ベッドサイドに置かれた手紙鉛筆の文字しらじらと光る

命になれなかった血の海をトイレで眺めている母体は時々死をはらむ

彼らは生まれながらに全て持っていた東京生まれ東京育ち

生きたいと死にたいの間ドリンクバーだけでわたしたち時間つぶしてる

受け取った花束ググり恐ろしい意味の花言葉探す

命短いほどいきものは可愛いわたしはかわいくない命です

かわいい命かわいくない命短い程いのちはかわいい

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さようならシールのくらげ(短歌集)

さかさまの世界揺れるレースカーテンに指先で触れる

さようならに慣れてないんだよもう勘弁してくれ許してくれ

氷は寂しいもの寂しいものを削って蜜かけてさいわいにする

金平糖水に溶かして薄甘い水にするこれは星をとかした水

光走っていく追えばよかった同じ隕石痕になりたかった

握った手が開かないさっき月を掴んだばかり

わたしたちはアンドロイドになれない生身のオブジェクト持て余している

郊外駅近

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くじら飛ぶ(短歌集)

人の首刎ねるがごとくスライドして嫌いな人間消す

ここからならどこへでもいけます春分の日ポストにひとひら投函す

♡をそんなに簡単に使ってよいのかTwitter

兵どもが夢の後兵ども乗せるゆりかもめが汗吸って少し沈む

お前この後に及んでそんなところにいたのか湯船の中脇の下の泡

旅先で宛先のない手紙を投函するもう二度と戻ってこない私の筆跡

生理用ナプキンにまかれた香料にへきえきする朝そういう

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リマインドアラーム(短歌集)

手紙書いて破らずに捨てるここから届け海は遠し

ピアスの数は残機の数です

顔白く悲しみの最中にある人に絵文字のバラひとつ贈る

ぬいぐるみ増えても母は物言わず埃が増えたことだけが確か

塵積もりて歳月となる指でなぞる部分に涙の痕

部屋のすみ何かいるような気がして薬飲むこれは不安に効く薬と言い聞かせる

板チョコを割るがごとく時間割り口に放り込んで過ぎたことにしたい

踊れ踊れレモンひとひら紅茶

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パズルピース(短歌)

平日の昼に横臥する我欠けたる平日のパズルピースのひとつ

柿食えば鐘が鳴るなりオメガとアルファ

なるならば代わりがあってもなくてもどっちでもよいものがよかった千切れた雲ゆらゆら

背広の下のかきむしり痕思い出すアレルギー体質の彼

汚れるのなら、綺麗じゃなければなんでもよかった レモンの果汁 血液 タンパク質

すり減らぬスニーカー底 わたしが代わりにすり減りて本懐を遂げぬ

朝顔は夜明け前に咲

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とびら(短歌集)

わたしあそこにいるはずだったの民族化粧してとびら島開く

秋の下 未洗礼の清いからだ引き摺って生きてく

こうすると旨いんだと残酷なことをして肉を食べている

色のない場所にいた気がするんだと狂いし時のメモに残っている

寂しさに色をつけようレモンの果皮に似た色を

樹皮剥ぐようにペディキュア拭う赤いコットンこれは死んだものの一部

もしかして三分後に世界は終わるんじゃないかという予感にガスを確か

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月のない日に(短歌集)

半月の削れる音が無い夜に代わりに母の手がリンゴ剥く

あらゆる日が切々と積もる歳月の塵のひとつに気遠くなりにけり

人生の痛みに慣れてしんと下向く 私の居る場所誰か見ている

すれ違う雑踏の香水に首惹かれている ああ、あの香はどこかの誰かの

指先から放って。放って。チークブラシ朱く染まる

ピアス開けているあの人の讃美歌が一等美しい

元旦の登山で助けたあの人は神様だったろうか分かりもしないが

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凍る夜(短歌集)

ツイッター凍り飛ぶ鳥も落ちる夜これは訓練ではない

休暇もらいて生家に帰ったばかりに空襲に遭った友の話 祖父の心は幾度とあの日に帰りぬ

永遠なんてあるわけないぢゃんと少女の食べるアイスクリーム地に落ちて溜まりをつくる

プリクラが止めし時間刻まれた片がゲーセンの片隅に ほら

これは麻薬ですという風体をしてストロング系チューハイコンビニに並ぶ

スマホ触りつつ工事音に耳を塞ぐどこからかブリオッシ

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