さようならシールのくらげ(短歌集)

さかさまの世界揺れるレースカーテンに指先で触れる

さようならに慣れてないんだよもう勘弁してくれ許してくれ

氷は寂しいもの寂しいものを削って蜜かけてさいわいにする

金平糖水に溶かして薄甘い水にするこれは星をとかした水

光走っていく追えばよかった同じ隕石痕になりたかった

握った手が開かないさっき月を掴んだばかり

わたしたちはアンドロイドになれない生身のオブジェクト持て余している

郊外駅近くのおいしいパン屋さんポイントカード財布に残っている名前だけを忘れている

このぬるい風はどこから吹くのビル群うなだれて身動ぎもせず、項垂れ

罪悪にまみれた手だと思うよ同じようにレモン果汁で手汚す

かなたなるフィールドにいる友想像の及ばぬことをやろうとしている

乙な女と書いておとめと成る悪いおとめもいるだろうよ

胎動あり。母になりし友は既に善なる。わたしよりもよほど。

あ、今アフリカで誰かが死んだよと言うのも憚れる母となる友の前

雲晴れて晴天のち群青現るビルディングにいれば何も知らぬまま

火葬場で処理されるという煙に思いを馳せる どこに流れるのだろう海だといいね

ひとつきぶりに病棟外から夜空みて勲章のメダルみたいに、月

好きだったあの曲リ:レコーディングされる前の方が好きだった

元号を越えてきた缶詰あける。そろそろ何を食べているのか分からない。

眠剤が効かなくなってきた体 亡霊が悪さをしているから悪夢を見る

抜かれずに残ったねこじゃらし 何も分かってないみたいに揺れるんだね

何か悪い事を企んで保険証噛んでみるすみません来月までには洗います

絶と希を分ける綻びがあるはずだけどのぞんでいるだけでそれは解けない

同性のキスは唇荒れるらしい異性とのパターンはわたし知らない

ディズニーランドで買った香水「ワンダーランドの香り」こんなとこまで夢売らずとも

あのひとはとおくにいきました、と言えば悲しく宛先のない手紙書く

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