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心理的安全性を阻害する「若年老害」や「ハラスメント」の実態を考察しました

ソフト老害」をご存じでしょうか?

昔から言われている「老害」とは
自らのやり方に固執し、周囲に迷惑や不快感を
与えてしまう高齢者を揶揄することば
として知られていると思います。

これが、高齢者だけにとどまらず
30代や40代にも適用されることばとして
ソフト老害」がバズワードになりました。

これは放送作家の
鈴木おさむ氏がXで提唱したもので

30代~40代の中間管理職的な立場で
上司のプライドを傷つけず、
部下の意見をまとめたつもりでも、
若い世代からは老害に見えてしまうこと

と定義されています。

自分は若い世代の意見を取り入れたつもりでも
その実態は自分の都合の良いように捻じ曲げて
若い世代の意見をないがしろにしていた
ことに
気づいたという内容でした。

この話に対して、
スルー推奨な言葉たち」ということで
人々の共感を生む意見もあったので、
以下にリンク先を張っておきます。


今回は「ソフト老害」に類似したことばで
若年老害」を取り上げたいと思います。

こちらは労働社会学者の常見陽平氏によって
提唱されている理論であり、
YouTube動画のリンクを張っておきます。

組織内における上司と部下の関係や
早期離職とも深い関係がありますので
パワハラ防止法心理的安全性の話とも
絡めて解説したいと思います。



1.若年老害とは?


「若年老害」とは
組織内において早くも老害と化している人
と定義されています。

更に、
過去の体験を元にした考えを押し付ける行為
として、以下の4点があげられています。

仕事の武勇伝を語る
②過去の話をやたらとする
③飲み会で説教する
④若手を理解している気でいる

この「若年老害」は、油断すると
「私にも当てはまっているかも?」
そう思う節があるのではないでしょうか?

こうした行為は
上司と部下先輩と後輩の間で発生し易く
これが世代間ギャップとなっていきます。

「そんな言い方しなくても…」
「もっと他に伝え方があるよね?」

こうした溝が徐々に広がっていき、果ては
早期離職」の要因になりかねません。

ただ、私としては、
「だから気をつけましょう!」では
「何も解決していない!」と思う訳です。

背景や解決方法まで深堀する点に
意味があると思いますので、
ここから詳しく深掘っていきますね。


2.パワハラ防止法と心理的安全性の誤解


前回の記事で若い世代の社員が
会社を早々に見切る理由として
働き方改革、パワハラ防止法、心理的安全性が
あり、その関係性について解説しました。

詳しくはこちらの記事をご参照ください。

「若年老害」に関する公式のデータはないため
これらが行きつく先として、ハラスメントの
現状から、背景、原因を考察していきます。

ハラスメントに関しては厚生労働省が
公開しているデータが多数ありますので
それらのデータと一緒に、パワハラ防止法
の中身についてみていきましょう。

労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)

2020年6月:大企業を対象に施行
2022年4月:中小企業も含めて完全義務化

罰則:なし
※ただし、企業に対して助言や指導、勧告があり
 従わない場合は内容が公表される

過去3年間にわたる発生件数を調査した結果があり、
こちらの画像を添付します。

平成 28 年度 厚生労働省委託事業 職場のパワーハラスメントに関する 実態調査報告書

法律の施行による効果は一定あり、
件数が減少している企業(黄緑)の方が
件数が増加している企業(青)よりも
上回っています。

ただし、依然としてパワハラは存在しており、
件数も確認されているものになります。

更に「若年老害」と言える
ネガティブな行動や言動も加えると
職場の実態はもっと深刻だと言えるでしょう。

次に、この実態を元に
ハラスメントを解消するべく、
大企業を中心に取り組みが行われました。

一番多いものは相談窓口の設置ですが、
これは発生後に対処に関するものなので
予防という観点で実施したものを
確認してみましょう。

平成 28 年度 厚生労働省委託事業 職場のパワーハラスメントに関する 実態調査報告書

効果が高いと実感できた取り組みとして
講演研修会を実施したようですね。

こうして各社で研修等を取り入れた結果、
救世主のように登場した概念が
心理的安全性」になります。

ただ、この考え方に大きな誤解が生じており、
下図の「ヌルい職場」がまん延したのです。

(石井 遼介 氏 著)心理的安全性の作り方より

普通に考えれば、
そうなるのは必然ともいえるのですが、
企業が行ったことは以下の3点です。

①パワハラ防止の研修を開催
②心理的安全性の担保を推奨
③パワハラやセクハラの厳罰化

これを見た多くの上司たちは
部下への指導を遠慮してしまい、
心理的安全性を言い訳にして
指導を放棄
してしまったのです。

細かい説明は割愛しますが、
本来の心理的安全性とは
コンフリクト(衝突)を推奨しています。

多様性を認め合い、相手を尊重している中で
コンフリクトはむしろ好ましいものであり、
上図で示されている右上の「学習する職場
をゴールとして習うはずですが…

これが目標通りにいかないのが
今の日本企業の大きな問題点だと思います。


整理すると、本来の目的は

多様な考え方を認め合う職場で
健全な議論が行われる職場

の実現だったはずなのですが、
コンプライアンスの厳格化と
間違ったメッセージによって

ただハラスメントを無くしただけの
議論が行われないヌルい職場

を実現してしまった訳ですね。

かくして、若い世代は将来不安になり、
離職を加速させる結果となりました。

こうなってしまったのは
どこに原因があったのか?次章で解説します。


3.心理的安全性が誤解された理由


先ほどのパワハラ防止法に関する
実施を振り返ってみましょう。

①パワハラ防止の研修を開催
②心理的安全性の担保を推奨
③パワハラやセクハラの厳罰化

上手くいかない企業の特徴として、
①と③だけ実施した企業
または
②を1回の研修だけで終わった企業
であり、
本質的な教育には至らなかった。

これが私の見解です。

なぜかというと、
本来、大切にするべきは
②を学び、実施し、改善すること
であると考えているからです。

しかし、日本の職場において
心理的安全性とは何ですか?
と聞かれて、
回答できる人が何人いるでしょうか?

そんな状態で都合よく
免罪符に使われている実情を憂慮しており、
なぜ、そうなってしまうのか考察します。

ここからは
石井 遼介  氏「心理的安全性のつくりかた」

から引用して解説します。

石井 遼介  氏「心理的安全性のつくりかた」


こちらの本によると、
心理的安全性の担保に必要なこととして、
4つの因子の存在
心理的柔軟性というキーワード
がご紹介されていました。

【4つの因子】
①話しやすさ
「何を言っても大丈夫」
②助け合い
「困ったときはお互い様」
③挑戦
「とりあえずやってみよう!」
④新奇歓迎
「異能!どんと来い!」

【心理的柔軟性】
必要な困難に直面し、
 変えられないものを受け入れる
大切なことに向かい
 変えられるものに取り組む
それらをマインドフルに見分ける

要約すると

組織内のひとつの部署を例に考え
ただの「集団」から「チーム」へ
変わるための要素として、

話しやすさ、助け合い、挑戦、新奇歓迎
といった
オープンなマインドそれが伴った行動
が必要であるとされています。

そして、

組織内には
すぐに変えられないものが存在しており、
これをチーム内で認識を合わせ
すぐに変えられるものに全力投球する
ここを一致させます。

この二つがマインドフルであること
(気づきに満ちている状態、
 俯瞰して認識している状態でも可)
が理想の姿とされています。

詳しくはぜひ本書をご覧ください。

ここでは私なりの解釈をした上で、
言語化させてもらいます。

目指すべき姿とは、

(慣れあいのではなく)
信頼関係のある仲間という関係を目指す。
そのためには風通しの良い状態を保ち、
何よりコミュニケーションが重要である。

それに対して
理想と現実のギャップは、

働き方改革による労働時間削減や
新型コロナウィルスに伴う
リモートワークの普及によって
基礎にして一番大切なはずの
コミュニケーションが欠如している。

これが現実ではないでしょうか?

特にコミュニケーションの欠如
近年の職場で大きく起きた変化です。

アフターコロナで職場回帰が進む中、
労働時間の削減が原因で、完全には
元には戻らない状態が続いています。

関係性が希薄なまま、
法律や就業規則だけ厳しくなったら

管理職はどうするでしょうか?

リスクを冒すよりも、
表面的な指導以外、
育成したいと思わないはずです。


もう少し踏み込んでみますね。

まず、上司の目線でみたとき

自分が信頼している部下を不快にさせる
マウンティングをしたいと思いますか?


逆に、部下目線に立ったとき

時に厳しい指導があっても、
適切な方法で伝えられ、
信頼している上司からの指導であれば
(人間関係性が担保されていれば)
素直に受け取れるはずですよね?

コミュニケーション不足で
関係性が希薄だから、
お互いに遠慮し、牽制し合っているのです。

「若年老害」と「ハラスメント」は
程度の差はありますが、

多様性が認められ、人間関係が良好で
心理的安全性が担保された環境下では
自制心が働くため発生しにくい
のではないでしょうか?

逆に、

関係性が希薄な状態で、
自らの正当性を主張したいが余り
ついマウンティングしてしまう…
これが「若年老害」であり

パワハラ防止法や就業規則など、
社内の研修を受けた管理職の人が
何でも「ハラスメント」と言われてしまう
という誤解の元、批判や罰則を恐れた結果、

都合の良い免罪符として
「心理的安全性」というキーワードが現れた。
だから、管理職は指導する立場を放棄し、
上司と部下は互いを干渉しない文化が生まれた。

これが
「ヌルい職場」を生み出すメカニズム
である。

そのように私は結論付けました。


現在の企業の大半は
業績も芳しくなく、余裕がありません。

そこへ
働き方改革、パワハラ防止法ですから…
企業側はコンプライアンスのみ意識して
場当たり的な対処をしてしまいます。

そもそも「若年老害」や「ハラスメント」
と呼ばれているものは昔からありました。
昭和の時代はもっと酷かったことでしょう。

これを様々な理論の提唱、
法律の改正などを経て、
見直そうと世の中が変化してきたことは
大変喜ばしいことだと思います。

しかし、何度も言いますが
今の企業には余裕がありません。

労働時間の減少生産性の向上
成果を重視する職場において、
「学習する職場」の実現
とは相性が悪すぎると思うのです。

一部の大企業では働きやすい職場を
実現したと採用広報で主張しますが、
その中身は「ヌルい職場」が実態です。

「このままでは成長できない!」
と危機感を感じて辞めていく…

だから、社員が定着しないのです。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

如何だったでしょうか?

学術的な論文や著者の意向とは
少し違う形かもしれませんが、
私なりに検証し、言語化したつもりです。

数回に分けて早期退職の原因となる
様々な要素を題材に取り上げてきました。

今回でこの話題は最後として
次回からはこうしたネガティブな要素を
払拭するために必要な採用ブランディング
を題材として取り上げていきます。

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