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ウェルネス、ウェルビーイングと、HRテクノロジーの関係性

セミナー予告

 こちらのセミナーで30分ほど時間を頂き、HRテクノロジーの観点から「Wellness」「Well-being」が人材戦略にどのような影響を与えるのか、与えることが出来るのか、について説明予定である。

 ここでは、私のパートでお話する予定の内容のダイジェスト版をお届けする。

市場規模

 上記の調査によると、次のような状況である。
・年4.8%成長(2015年~2017年)。
・(職場環境に関連するものに限定しても)市場規模は5兆円(2017年)から7兆円(2022年予測)へ。
・今や給与総額の32%が福利厚生目的に費やされる(直近8年間で19%増加)。
・ヘルスケア、ウェルビーイング関連の施策費用は直近5年間で43%増加。
・労働者のうちたった10%(北米とEUに集中)しか、職場の健康増進プログラムの適用を受けていない。

 この市場が如何に巨大なものかを実感するために、参考までに国内のHRテクノロジーの市場規模予測を紹介する。2022年の予測は2,263億円、ウェルネス、ウェルビーイングに関連しそうな「人材開発」「組織開発」「勤怠・労務管理」に絞ると2022年の予測は458億円である(7兆円に対し0.7%にも満たない)。

国内においては未だ黎明期

 上記の、2019年7月時点のGartner調査によると、取り組みが先行している北米地域においては、ウェルネス、ウェルビーイング領域のソリューションは、「過度な期待」のピークから「幻滅期」に入りつつあるとされている。
 しかし日本では未だ黎明期であると推察される。(すべてにおいて3年から5年遅れの傾向にあるため。また、ウェルネス、ウェルビーイングに間接的に関連するソリューションの多くが「黎明期」にあるため。)

「エンプロイー・エクスペリエンス」の時代

 北米地域では、「従業員エンゲージメント」に注目が集まったのはもはや過去の話(2015年から2016年のトレンド)とされつつある。
 2019年以降のトレンドは「エンプロイー・エクスペリエンス」であるとされ、HRテクノロジーのフォーカスポイントも「エクスペリエンスの向上」にあるとされている。

 ここで、エクスペリエンスを向上させる要素は様々ある。
 ウェルビーイングに直接的に関連するものとしては、
・健康
・家族
・通勤
・財政面の健全さ
等が挙げられ、

 ウェルビーイングとの関連性は間接的であるが、重要なものとしては、
・(仕事上の)価値観
・職責(仕事内容)
・キャリアに対する姿勢
を挙げることが出来る。
 「ワークエクスペリエンスの向上」「職場環境の改善」も不可欠な要素であろう。

ウェルネス、ウェルビーイング施策のステップ

 やるべきことは無数にありそうだが、まずはどこから手を付けるべきか。

 上記のJosh Bersinの記事を参考にして、各ステップ毎にタイトルをつけて主な狙いと具体策をまとめると次のようになる。

Step1 健康(コスト削減、労働者の生産性向上)
 従業員支援(メンタルケア)、医療給付

Step 2 フィットネス(人材維持)
 運動、睡眠、ストレス軽減、栄養、等のサポート

Step 3 ウェルビーイング(ホワイトカラーの生産性向上、コラボレーション促進)
 家族、自分探し、キャリア、マインドフルネス、満たされた感情、積極思考、カルチャーフィット、等のサポート

Step 4 持続可能な働き方(業績と従業員の活力の両立)
 リコグニション・報奨、スキルベースの育成、職場環境、リーダーシップ、マネジメント、明確なゴール、成長機会

 上記のうちキャリアサポート、リコグニション・報奨、スキルベースの育成は、HRテクノロジーと非常に相性が良い。例えば、次のような具体的ソリューションを挙げることができる。

キャリアサポート:entomo

リコグニション・報奨:Unipos

スキルベースの育成:SumTotal 


 ちなみに「ウェルビーイング」は個人目線で、これをチームパフォーマンスとかリーダーシップに拡張させていくとSustainable Performance(持続可能な働き方)に行きつくとされている。

 Step 1は福利厚生の一環である健康管理として行うもの、Step 2は従業員個人の状態の向上のために行われるものといえるが、やはり企業としては「業績向上のため」というスタンスでStep 3になるべく早く到達すべきである。
 Step 3における具体的な施策としては、

①職場における時間と労力の有効活用
②スケジュール管理・出張管理・優先順位付けのサポート
③マネージャ教育(の有効化)

等を挙げることができるが、実はこれらもすべてHRテクノロジーと非常に相性が良いものばかりである。
(どのように相性が良いのか、具体的にどのようなHRソリューションが存在するのか、については冒頭でご案内したセミナーの中でお話する予定である。)

 ここではダイジェストでまとめるが、上記①については「ジョブ・マッチ」「ジョブ・フィット」がキーワードとなり、その前提としては明確なジョブ定義と従業員側のスキルの棚卸しが不可欠である。
 上記②については、具体的アクションの内容を、マシンラーニング(ML)の結果に基づいてそれぞれごとにパーソナライズして生成し、これをナッジの考え方に基づきチャットボットの仕組みで対象者に送信する、という仕組みが威力を発揮するであろう。
 上記③については、アセスメントパーソナライズがキーワードとなる。

「エンプロイー・エクスペリエンス」の向上

 少し古い情報となってしまい恐縮だが、WorkTrendsTM 2016 Global for the IBM/Globoforce Employee Experience Indexという調査の結果によると、良い「従業員体験」を導く要素(影響力が高いもの順)は次のとおりである。

①自分のスキルや能力を仕事に活かすことができている。
(その上、組織のコアバリューと調和している。)

②組織において、自分のスキルを伸ばすための真の機会が与えられている。

③良い仕事をしたことがしっかりと認められている。 
(その上、自分の業績についてフィードバックを受けられている。)

 上記の要素は、我が国におけるウェルビーイング領域の大家で幸福学研究の第一人者、前野隆司教授が説く「幸せの4つの因子」にもつながるものである。

 上記①と②は、「第1因子」、すなわち、「夢や目標を持っていて、それを目指す、自己実現と成長の因子」のことであるといっても過言ではない。上記③は、「第2因子」すなわち「ありがとう因子」のことと捉えて良いだろう。

 なおかつ、これらもすべてHRテクノロジーと非常に相性が良いものばかりである。
(どのように相性が良いのか、具体的にどのようなHRソリューションが存在するのか、については冒頭でご案内したセミナーの中でお話する予定である。)

 さらに、前述のWorkTrendsTM 2016 Global for the IBM/Globoforce Employee Experience Indexの調査結果によると、「従業員体験」の状態が良い上位25%の従業員は、その他の従業員と比べて、

・52% 離職可能性が低い
・73% より成長する可能性が高い
・32% より高いパフォーマンスを達成する可能性が高い

とされている。

 この事実は、前のほうで「企業としては『業績向上のため』というスタンスでStep 3になるべく早く到達すべきである。」と主張したことを補強するものである。つまり、企業としてはウェルネス、ウェルビーイング施策を検討するのであればStep 3を目指すべきであり、具体的には「エンプロイー・エクスペリエンス」の向上につながるようなことを実践すべきである。そしてそのためにはHRテクノロジーの活用が効果的だ、という説明が可能である。

Ex Tech(「エンプロイー・エクスペリエンス」に関連するテクノロジー)

 Ex Techの代表例として挙げることができるのが、クアルトリクスである。

 余談であるが、前述のWorkTrendsTM 2016 Global for the IBM/Globoforce Employee Experience Indexの調査結果やそれに関連した知見は、現在はこのクアルトリクス社のソリューションに受け継がれている。

 これ以外にもEx Techと呼べるものは様々あるが、そのほとんどはエンプロイー・エクスペリエンス全般を向上させるような設計になっているとされる。とくに不可欠な機能としては、

・コミュニケーション、コラボレーション促進
・報奨、レコグニション
・トレーニング、ラーニング
ウェルネス、ウェルビーイング
・柔軟な働き方の実現
・サーベイ、フィードバック

が挙げられる。しかしながら、ウェルネス、ウェルビーイングに直接的に関係する具体的ソリューションとしては何があるのか。特に我が国の中に限定した場合、これを挙げるのは意外と難しい。私自身もこれから調査、研究が必要である。

 他方、それ以外のテクノロジーやソリューションにも、間接的にウェルネス、ウェルビーイングに良い影響を与えるものが数多く存在する。例えば、

・コミュニケーションツール
・Employee Voice(エンゲージメントサーベイ)
・フォードバックツール
・レコグニションツール
・キャリア開発ツール
・アセスメント
・コーチング
・ジョブ特化型ラーニング
・社内のタレントマーケットプレイス(ギグワークの支援)

等を挙げることができ、これらのうち多くのものはすでに国内にも存在する。
(具体的にどのようなHRソリューションが存在するのか、についてはこちらのセミナーの中でお話する予定である。)


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