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【医師論文解説】うつ病にいい運動は意外とアレとアレだった!【OA】


【背景】 うつ病は世界的な主要な障害原因であり、債務、離婚、糖尿病よりも生活の質を大きく低下させます。うつ病は心疾患、不安障害、がんなどの合併症も悪化させます。うつ病患者の半数以上が抗うつ薬や心理療法に抵抗性を示すことから、新たな治療法が求められています。 エクササイズはうつ病の補助療法または代替療法となる可能性が指摘されてきましたが、ガイドラインではエクササイズの具体的な種類、強度、量について一致した見解が得られていませんでした。

【方法】 研究チームは系統的レビューとネットワークメタ解析を行いました。主要データベースから無作為化比較試験218件(495群、参加者14,170人)を特定し、介入内容(歩行、ジョギング、ヨガ、筋力トレーニングなど)ごとに分類しました。主要アウトカムはうつ症状のヘッジスg値の変化です。 介入効果はベイジアンアームベースのマルチレベルネットワークメタ解析モデルで推定されました。探索的解析では、参加者特性(年齢、性別、重症度、併存疾患)、行動変容手法、自己決定性の程度など、さまざまな調整因子が検討されました。

【結果】
活動的対照群(プラセボなど)と比較して、中程度のうつ改善効果が確認されました:歩行・ジョギング(g=-0.63)、ヨガ(g=-0.55)、筋力トレーニング(g=-0.49)、混合有酸素運動(g=-0.43)、太極拳・気功(g=-0.42)。 効果は運動強度に比例し、HighIntensity運動(g=-0.74)の方がLightIntensity運動(g=-0.58)よりも大きかったものの、LightIntensityでも臨床的に意義のある改善が見られました。 介入期間が短い(10週間程度)方が長い(30週間)よりも効果的でした。測定時期(介入直後から6ヶ月後)による違いはありませんでした。 ヨガと筋力トレーニングは、他の介入と比べて高いアドヒアランス(dropoutが少ない)を示しました。 一方で、ほとんどの試験では参加者や実施者が盲検化されておらず、バイアスリスクが高いことが確認されました。

【論点】 本レビューの結果、エクササイズはうつ病に対する有効な治療選択肢となり得ることが示されました。しかし、ほとんどの介入におけるエビデンスの確信度は低かったため、さらなる高質量研究が必要不可欠です。 興味深い知見として、最適な運動種目は個人の年齢や性別によって異なる可能性が示唆されています。具体的には、ヨガは高齢男性に、筋力トレーニングは若年女性に、より適している傾向がありました。 このように、エクササイズ処方を個別化することが重要と考えられます。また、強度を上げることや、集団で行うことでさらなる効果が期待できます。 今後はさらに質の高い無作為化比較試験、特に参加者や実施者を盲検化した大規模試験が求められます。

【結論】 エクササイズ、特に歩行・ジョギング、ヨガ、筋力トレーニングは、うつ病の中核的な治療法の一つとなり得ることが本レビューで示されました。 処方は個人の特性に合わせて調整することが重要です。強度を上げること、集団で実施することがより良い効果を生むと考えられます。 今後、さらに高質な無作為化比較試験によるエビデンンス構築が求められますが、エクササイズはうつ病に対する有力な選択肢の一つと位置付けられるでしょう。

【引用文献】

Noetel, Michael et al. “Effect of exercise for depression: systematic review and network meta-analysis of randomised controlled trials.” BMJ (Clinical research ed.) vol. 384 e075847. 14 Feb. 2024, doi:10.1136/bmj-2023-075847

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