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レビュー『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』

発売してから累計164万部を突破している驚異のベストセラー本をご紹介。

「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」といった日常の気になる疑問から話をはじめ、「身近なものとして会計」を学べるのが本書。

とっつきにくい「会計」を、身近な例をとおして丁寧に解説しているので、「会計」に苦手意識をもつ個人事業主や中小企業の社長、そして、これから「会計」を学びたいと願う会社員の大きな助けとなる。

また、生活でも役立つような身近な知識が豊富なので、学生や主婦にもオススメの一冊だ。

さおだけ屋はなぜ潰れないのか?

ほとんど売れないはずのさおだけ屋が潰れないのはまったくもって不思議だ。

本書では、さおだけ屋がつぶれない理由として2つを挙げていた。

・理由1:さおだけ屋は単価を上げて売上を増やしていた

お客さんに営業をする際に、セット販売や干し台の土木工事を提案などをし、客単価をあげていた。

・理由2:じつは、さおだけ屋は仕入れの費用がゼロの副業だった

お客さんに他の商品を配達するついでにさおだけ屋を営業しているだけであり、さおだけ屋が本業ではなかった。

ここでは、利益を出すためには、「売上を増やす」か「費用を減らす」ことの2種類の方法しかないことを教えてくれる。

消費者側と経営者側の視点で「会計」を学ぶ

上記では、利益を増やすにはのに「売上を増やす」か「費用を減らす」しかないことを学んだ。

本書ではさらにくわしく、売上の増やし方には回転率を高めるか、連結決済することであったり、費用の減らし方では在庫を減らすか、利息を減らすといったポイントが解説される。

各ポイントについて「企業における会計」の観点から説明したあとに、「個人における会計」への会計知識の活かし方が説明されており、腹落ちしやすい。

たとえば、以下の「費用の削減はパーセンテージで考えるものではなく、絶対額で考えるべき」といった、個人の買い物にも参考になる点がおおい。

・1000円のモノを50%引きで購入(節約できる額は500円)
・100万円のモノを1%引きで購入。(節約できる額は1万円)

また、「50人に一人タダになるキャンペーン」と「今購入した全員に5%割引キャンペーン」のどちらが経営者として得かといった、経営者側の視点も学ぶことができる。

この、消費者側と経営者側の両方の立場で、損得を考える視点を身につけることができる。

著者のサクセスストーリー

著者は大学卒業後に上京して一旗揚げようと、有名予備校に就職することに。

ところが、わずか2ヵ月足らずで辞職してしまう。

そして駅前の専門学校に行き、「僕に向いている資格ってないですか?」と聞いたら、公認会計士を勧められたのだそう。

(勧められた理由は、当時いちばん授業料が高かったのが公認会計士だったからと、あとで知ったのだそうだ)

その勧めにしたがって公認会計士の道を選んだが、勉強していくとおもしろいことにそれまで自分が情熱を傾けていた現代文との共通項に気づいていく。

それはどちらも二元論であること。

会計は収入―支出、借り方―貸し方、債権―債務の二元論で数字を見ていく。

それに対して現代文の解読テクニックも、西洋や東洋、自己と他者といった二元論が軸になっている。

1日15時間、多い日は20時間と会計士の勉強に没頭し、1年という短い期間で二次試験まで合格する。

実際に資格を取得して、当時、最大手だった監査法人に入社。

一方、予備校講師の仕事への愛着も少し残っており、本を出版したいという夢を抱いていたという。

そんなある日、若手会計士の会合に参加することで転機が訪れる。

ジャンケンに負け、広報の責任者になったのだ。

そこで取り組んだのが「学生向け機関誌への出稿」だった。

山田さんは、自分が読んで楽しい企画をと考え、自ら小説を連載することを決意。

そこで書き始めたのが『女子大生会計士の事件簿』だった。

堅いイメージの公認会計士と、正反対のイメージの女子大生という意外性が面白く、小説は好評となる。

そこで原稿を出版社に持ち込んで売り込みをするが、「前例がないから」という理由で30社から断ら、洗礼をうけることに。

仕方がないので、自腹を切って自費出版をすることを決意。

そのさい、「もう少しお金を出せば日経新聞に広告が出せるよ」と言われ、「人生の記念」にとお願いしたら、それが当たったのだった。

その後、温めていたアイデアを出版社に提案し、編集者もノリ気で、着々と企画は実現に向かっていく。

すぐに本にはまとめずにリサーチに時間をかけ、着想から2年ものあいだ徹底して内容を吟味した。

それがのちにミリオンセラーとなる『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』だった。

出版社の上層部からタイトルの許可が下りないというトラブルはあったものの、結局は担当の編集者が押し切り、ユニークな書名の本はたちまち10万部を売り上げることになる。

そして出版からわずか7カ月でミリオンセラーになり、その書名は2005年の流行語大賞の候補にもなった。

おわりに

取っつきにくく、一般的には難しいとされる「会計」を分かり易く魅力的に描いているのが本書。

身近で不思議な会計の例がいくつも取り上げられており、推理小説を読んでいるような楽しさがある。

初歩的な会計用語だけが使用されており、そのつど丁寧に説明されているため、理解に困ることはなく、会計への導入書としてはオススメの一冊。


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