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励ましではどうにもならない日に、Dreams Come True 『朝がまた来る』

現状を受け入れるというのは、現状を打破するくらいに難しいことだ。

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『朝がまた来る』
Dreams Come True (ドリカム)のこの曲はどうやら1999年にリリースされたらしい。
当の私はというと1995年生まれなので、この曲が日本を駆け巡った時代を覚えてなどいない。

しかし、この曲は昔から両親が運転する車の中でよく耳にしたように思う。
また歌詞の意味など理解できない私にとって、どこか陽気な歌のようにも聞こえていた。

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成長した私は人並みに当時の流行りの音楽に触れてきた。
小中学校の頃はスキマスイッチやYUIを友人らとよく聴いたし、高校生のときには今も心の支えとなっているサンボマスターにも出会った。

片や母や姉は相変わらずドリカムのファンで居続け、数年に1度はライブにも足を運んでいたのである。
そのせいか私の中で、ドリカムは母や姉のための歌手であって、自分が耳を傾ける歌手という認識はなかったように思う。

またドリカムが世に出たのは、私の生まれる前の話である。
そのため、「昔の人達」という認識も拭いきれなかった。
音楽に対して月並みな認識しか持たない学生だった私は、どこか新しい歌手こそが素晴らしいという認識を持っていたのかもしれない。

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とはいえ、ある程度年齢を重ねてくると、そのような狭量な視野もある程度は広がりを見せてくるものである。
それはきっと、現実みたいなものを目を向けていると、ある種の絶望のようなものを感じ始めたからであろう。

絶望を知る前、また今の私であっても元気が多少なりとも残っているとき、歌に求めるものは「励まし」であるように思う。
だからこそ、サンボマスターの歌詞は私の心をつかんで離さない。

「君ならできない事だって できるんだ本当さウソじゃないよ」
サンボマスター・『できっこないをやらなくちゃ』

今でもよく聴くこの曲は、沈んだ心を晴れやかにしてくれる。
彼らの力強く、シンプルなメッセージは私にとっては「励まし」に他ならない。

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ただ他方で、年々、励ましだけではどうにもならない問題も増えてきた。
つまり、もはや励まされたにもかかわらず、どうすることもできない自分を責めたくなる日もあるということだ。

そんなときにふと、youtubeの自動再生で流れてきたのが、昔車の中で耳にしていたあの曲。
『朝がまた来る』だった。

「同じような一日が今日も始まる
となりの人が空見上げて舌打ちする」

昔、陽気に聞こえたこの歌は、思いのほかセンシティブな内容だった。

確かに、どれだけ悩んでいようとも、日常に概ね変化などない。どこかでそのようなことも理解はしているのだが受け止めきれない。そのような理想と現実のギャップこそが絶望の根源であるのだろう。

しかも、私が絶望の淵に立たされているのにも関わらず、この歌は、

「雨だって晴れだって 願いは届かない」
「壊れて泣いたって 願いは届かない」

と追撃してくるのだ。泣きっ面に蜂もいいところである。

つまり、天気が良くても、泣いてわめいても、絶望は晴れやしないのだ。

そして挙句の果てに、

「思いが逝く日まで 空に昇るにまで」

なんていう無責任な発言で最後を締めくくる。

どれだけ絶望していても、残念ながら夜は明けてしまう。
そのため、物事というのは成り行きでしか解決できないということなのだろうか。

――――

ただ、どこかこの歌は絶望の淵にいる私を安心させてくれたようだった。

なぜなら、どうにもならないという不安を肯定してくれたように感じたからである。

自分の現状ではどうにもならないと悩んでいるとき、そこで与えてもらう励ましというものは、時に心の重荷となることもある。

せっかく励ましてもらっているのに、自分にはどうすることもできない。
励ましが辛く聞こえるときもあるのだ。

そのような時に、『朝がまた来る』のようなどこか後ろ向きな感情を含んだ歌は、一種の慰めにもなる。

だからこそ、私も、そしてきっと周囲の人達も、いつも通り、

「雨なら傘もって 晴れたら上着脱いで みんなそうして生きていく」

ことができるのだろう。

日常に絶望していたとしても、日常を生きていかなければならない。
それは新たな挑戦以上に体力や気力が必要となるときもある。
現状を受け入れるというのは、現状を打破するくらいに難しいことだ。

だからこそ、私はたとえ絶望していたとしても、

現状から逃げ出さないために、
現状を何とか耐え抜くために、
『朝がまた来る』を聴く。

そうすればきっと朝「は」また来る。 

(終)

今回の投稿は「#私の勝負曲」に寄せて書きました。
ドリカムのことを書くなら、やはり金曜日かなと。
なにせ『決戦は金曜日』ですから。

というわけで、本日はこれにて!
ご清読ありがとうございました!

次回は週明け月曜日です!宜しくお願いいたします!

※今回の投稿は、↓の記事に感銘を受け、自分でも書いてみました。いつもの自分なら章ごとにタイトルをつけていますが、今回はNatumiさま式を真似ています。

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