#恋愛小説
藤壺の宮は〝物の怪のせい〟にしたくない 【第1話】
序
──死んだと思ったら、産まれていた。
ちょっと何を言っているのか分からないかもしれないが、あいにくと脩子にだって分かってはいなかった。
何せ、大学に向かう途上でトラックにはねられたと思ったら、羊水やら血にまみれて、産婆に抱き上げられていたのである。全くもって、意味が分からない。
「いや、何故に……?」
そう声に出したはずの言葉は、残念ながら言葉の形をしていなかった。
ただ
コイン・チョコレート・トス_第1話
🪙 プロローグy=-3x²の放物線を描きながら、宙を舞うコインチョコ。
玄関の白い天井の少し下の位置を最高到達点とし、コインチョコは幸子の手の平に落ちてきた。幸子はそれを両手で優しくキャッチする。
幸子はコインチョコが左手に落ちてきた瞬間、上から右手をそっと添える。コインチョコがどちらかを向いているかが見えないように静かに隠す。
表か、裏か。
全ての決断は、コインチョコに委ねられた。