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短編

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#詩

僕の太陽は街灯に照らされる

僕の太陽は街灯に照らされる

どれにしますか?

ラーメンも食べたいし炒飯も食べたい

食べれるんですか?

んーとりあえず炒飯頼んで足りなかったら頼む

絶対その方が良いですよ

綺麗とも汚いとも言えない4人席に
2人で対面に座り、
必死に手元のメニュー表だけを眺めている。

こうして2人でご飯に行くようになって
もう一年も経つが未だにこの子は敬語。
2人の中に違和感は無いけれど
周りから見ると少々奇妙らしい。

目の前に見

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あれは普通の恋

あれは普通の恋

私はなんとなく生きてきた

普通で普遍で凡人

彼の鼻筋を人差し指でなぞったその朝までは

春が来て、空が梅雨に覆われて夏を迎えるように

夏を舞台に歌われるあの歌のサビが繰り返されるように

わたしにはいつだって恋人がいた

人を変え、場所を変え、歳を変えてもなお恋人はいた

なんでもいいよ

と言う私

返答は人それぞれだった
怒る人 同調する人 提案する人

結局何でも良い私は体を許して体を

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僕らは嘘をつけるだけ

僕らは嘘をつけるだけ

初めてついた嘘はなんだったろうか

私は最初についた嘘をはっきりと覚えている

好きなゲーム機がほしくって

「普通に当たり前だよ」

「みんな持ってるんだよ」

「俺だけが仲間外れだ」

そんな小さな嘘だった

私の父は剣道をずっとやっていて
作法や筋を通すことに関しては人一倍厳しかった
小さな嘘を重ねる私に父は

「みんなの定義は」

「ゲームだけで仲間外れになる仲間なのか」

「普通は何をも

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4両編成の満員電車では君に到底敵わないから

4両編成の満員電車では君に到底敵わないから

きっといつまでも

敵わないんだと思う

実は臆病者で
泣き虫で見栄っ張りな私

それを世間が
どこまで理解してくれるか知らないけれど

物凄く嫌悪感のある機会音

涼しくも暑くもない気温

自分たちの湿気で湿る合皮のクッション

小さな口と

何も言わせまいと包み込む俺の腕

読む程で持ってきたお互いのオススメの漫画

いつも1人で来るところに

連れて行きたいと思ったのを

心の裏側を覗かれた

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すこーしたいようをのぞいてみた

すこーしたいようをのぞいてみた

あれ?もう10月?

昨日は寒すぎて震えながら

夜中に何度か目を覚ました

そういえば彼の誕生日も10月だったような

起きて〜と聞き馴染みのある

太く優しく低く優しい声が

結構乱暴に耳を撫でる

はいはいと体を起こし

んーーっと体を伸ばす

朝が来てしまったのか

でも夜は見れない彼の顔が見れるから

差し引いても朝は嫌いじゃない

冷めるよー

今度は優しく嬉しい言葉が耳を引っ張った

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ループする10月の夜を私は露知らず

ループする10月の夜を私は露知らず

えだまめ
えいひれ
いぶりがっこ

結婚式の3次会に行った時

私の携帯に誰の意思にも意味を持たせまいと

このメモが残っていた

えだまめを咥えながら

目の前の新婦友人を新郎友人で相手する

多分この話の女性側の話があるのなら

全くもって同じ表現をしただろう

えいひれ、センス良いじゃんと

ハイタッチを求めてきた1人の女性

すかさず嫌な顔をして避けつつも手を差し出し

上手いことひと笑い

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日記に記すにはどこかもの足りなくて

日記に記すにはどこかもの足りなくて

あの女性の顔をなかなかに思い出せない。

それは
名前や年齢すらハッキリと
聞いていないからなのかもしれない。

このくらい肌寒くなると外で吸う煙草の煙は
より一層空気を白に染め上げる。
その白を目の当たりにする度に
あの光景だけは思い出せて、
名前も分からない女性がそこには立っている。

お名前伺ってもいいですか?

そう声をかけられた。
それはよく行く古着屋で店主と何人かを交えて
立ち話をした

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