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武双山に見えた一ノ瀬ワタル(「サンクチュアリ -聖域-」を観て)

相撲をテーマにした実写ドラマの多くは、「迫力」という意味で制約がある。

俳優の多くは、100kgを超える体重を有していないからだ。若手俳優を多く起用したとはいえ、数年がかりでトレーニングを積ませ、「迫力」をつけた状態で相撲ドラマを撮るという企画。気の長くなるようなタイムスパンだが、さすがNetflix、予算をかけて実現に漕ぎつけた。

主演は、一ノ瀬ワタルさん。元格闘家の37歳。

俳優として、筋肉質な役柄を演じることが多かった彼にとって、ぴったりの役柄。九州出身の「問題児」が、徐々に相撲の魅力を知り、相撲界のスターへと駆け上がっていく物語だ。

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一ノ瀬さん演じる猿桜は、父親がつくった借金を返済するため相撲界に身を投じる。父親に反発しつつも、父親へ恩義は感じており、父親が意識不明の重体となった後は、「相撲で治療費を出す」ことを目的に、相撲に精を出していく。

ただ、序盤の彼にとって、相撲とはガッチガチのルールで固められた場所。喧嘩は強いが、相撲というフォーマットでは兄弟子に全く歯が立たない。それでも新人力士の中では群を抜いて強く、「問題児」でありつつも、早々に頭角を現していく。

とある出来事をきっかけに(まあ、これもスポーツドラマあるあるな展開なわけだけど)、猿桜は戦意を喪失、相撲への意欲を失くしてしまう。何とか立ち直り、猿桜の宿敵・静内との対戦に臨んでいく……。というのが筋だ。

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前述の通り、ドラマの中盤で猿桜は戦意を喪失してしまう。

驚いたのは、立ち直って相撲に向き合っていく彼の表情が、現役で活躍していた武双山に似ていたことだ。髷を結ったこともあるだろう。だが土俵へ一礼し、「ごっつあんです」と言葉をかける猿桜は、まるで別人だった。

インタビューで一ノ瀬さん自身も話しているが、ドラマを撮影するにあたり継続的にトレーニングに臨んだという。親指から小指まで順に指を折っていくと、5本の指の中で小指が一番力が入るという。ゆえに兄弟子から「ちぎれるまで小指を鍛えろ。そうしたら、まわしから指がきれない」とアドバイスされる。猿桜は、親指と小指だけで腕立て伏せを、そして小指だけで懸垂ができるようトレーニングをする。一ノ瀬さんはもともと格闘家だから、そんなに苦戦しなかったのかもしれないが、まあ小指だけで懸垂というのは相当ハードだろう。しかし、フィクションでありつつも、これを役者自らがトレーニングを重ねた上で実践しているのだから(たぶんスタントマンではない、一ノ瀬さん自身もインタビューで「あれはめっちゃ、つらかった」と吐露している)、リアリティもあったのだろう。

今はそこまでないだろうが、俳優とは、演技を通じて成長するものだ。時に、なかなかハードな役割をこなさないといけないときもあるだろう。

だが、おそらく「サンクチュアリ」においては、トレーニングというか、相撲自体を経て、役者が力を蓄えていったように思うのだ。

そのプロセスが「本物」だったからこそ、リアリティのある演技につながったのだろう。そして、武双山を彷彿とさせる面構えにも。

間違いなく続編がある。猿桜の進化がどこまで続いていくのか、今から楽しみでならない。

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あえて「良くも悪くも」という言葉を添えますが。相撲が好きな人も、そうでない人も楽しめる作品だと思います。

一ノ瀬ワタルさん、ピエール瀧さんをゲストに迎え、佐久間宣行さんが司会を務めた番宣番組も良かったです。

「撮影期間が長い」と話していましたが、続編も込みで撮影したのでしょう。少なくとも8話全てで、江口カンさんが監督を務めています。おそらく続編も全部江口さんが撮っているのでしょうか、執念というか、怨念に近い思いがこもっているのは間違いないですね。(ピエール瀧さんは「美意識」という言葉を使っていましたが、もっとドロドロした何かが詰まっているように思います)

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