【ネタバレ解説】禁断の檻に流れる水 ⑦
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皆さまはホラーを観る、読むは得意ですか?
それとも苦手ですか?
視覚で感じる怖さと見えない怖さは、どちらが怖いですか?
わたしはこの創作で両方描いてみましたが、
比重は生きている人間の見えない心理や行動のほうが、より恐ろしいと感じます。
幽霊や化け物、血まみれの描写などは視覚的な恐怖を引き起こしますが、それらは非現実的な存在であり、理解できる範疇の恐怖だと言えます。
【ネタバレ】を加えたのは、一層怖さを体感して、被害者の叫びへ耳を傾けて欲しい願いを書いてみました。
創作を表面だけ読むと、
被害者・神戸美穂は虐待された告発になります。
最終章では神戸美穂の真実が明らかになる中で、物語全体の構造が見えやすい仕組みです。
しかし、ネタバレを入れることで神戸美穂の嫌悪が増すよう奥行を出してみました。
1. 神戸美穂の実体験を反映したホラー小説の発見
記者の浮所いずみが、神戸美穂の経験を基にしたホラー小説の受賞を知り、事件の真相に迫る手がかりを得ます。この偶然の発見が、物語の核心に迫る重要な契機となっています。
浮所いずみはスクープを連発する、飛ぶ鳥を落とす勢いの『週刊エックス』の記者。
実社会でいう、週刊文春や週刊新潮、週刊現代や週刊ポスト辺りなどの週刊誌です。
note創作大賞と同じく、事件のスクープを出す出版社がmemo文芸大賞にも協賛している意味を指します。
主人公のタツジュンやハムスターのキンクマが知っているほどの知名度があるアイドル・奥田ゆきのは、自らの知名度で、各出版社が目を通す算段をします。
神戸美穂(奥田ゆきの)は既に別人の戸籍を持ち、自分の生き霊など知りません。
「この手で復讐してやる」意味を込め、
13年前に拉致されて以降を知らない設定で、ペンネームを『神穂裕真』にしました。
2. 物語の構造の明確化
小説の内容を通して、神戸美穂が13歳のときに拉致され、虐待を受けていた事実が明らかになります。両親が実の兄妹で、出生の秘密を隠し立てしていたという、物語全体の構造が明確になっていきます。
3. 登場人物の内面の描写
ホラー小説の主人公・里帆の経験が、神戸美穂の実体験を反映していることで、無辜の少女が被った深刻な被害の実態が浮き彫りになります。登場人物の内面に迫る描写が効果的に描けていると幸いです。
4. 物語全体の二極化
伏線が回収されるとともに、神戸美穂の真実が明らかになる中で、物語全体の構造の解像度を高くし、登場人物の内面を印象的に仕上げてみました。
5. 神戸美穂の両親が兄妹だったことと
神戸美穂の出生の秘密が明らかになり、両親が実は兄妹だったことが明かされます。
異父兄妹から『兄妹』は、神戸美穂の実父が祖父だった展開で判明する意外性のある展開にしたかったのです。
Ⅰ. 伏線として、
神戸裕介=A型
神戸真理=A型
神戸美穂=B型
御手洗みその=A型
御手洗達磨=O型
御手洗亜子・神戸真理=A型
→ 心象は、みそのと達磨の子=亜子・真理
御手洗みその=A型
神戸裕介=A型
神戸真理=A型
神戸美穂=B型
→ 神戸裕介の父=B型 or AB形
Ⅱ. 達磨の父親は
父親とみそのの婚姻生活2ヶ月で死亡。
当時の13歳少年・達磨は身体に障害が残る重体。
達磨に性行為ができ、亜子と真理は生まれるか?
出産は10月10日と言われていますが、
平均40週です(双子は平均37週の早産)、
達磨が父親ではないのを示唆しました。
みそのが双子を出産する前に親族と絶縁したのは、
亜子と真理の父親は、
みそのの従兄である裕介の父(みそのの前夫)へと
伏線を回収しました。
よって裕介と真理は兄妹であり、神戸美穂は
戸籍上は親子でも、実質、両親の兄妹になる。
異常は、事実は小説よりも奇なりをヒントにしました。
性癖や異常性は、けして他人の目から見えません。
悪役が首を千切るより、ずっと身近にある恐怖です。
6. 神戸美穂の正体がアイドルの奥田ゆきの
最終的に神戸美穂の正体がアイドルの奥田ゆきのだと判明させたのは復讐だけではなく、
儀式の犠牲者になった少女や御手洗美穂が奥田ゆきのに似ていることで、
複雑な関係性が明らかになり、読み手に大きな真相を知ってほしいためです。
7. タイトルへの意味
『禁断の檻から流れる水』
禁断の檻とは、神戸美穂(奥田ゆきの)が最後に訴える場面のことを意味します。
>一族の中で歪んだ繁殖と思想の実態を示していた。
流れる水は、歪んだ繁殖で穢れたものを浄化したい、断ち切りたい、神戸美穂の祈りです。
創作の中で
>浮所いずみは先日行方不明になった少女の取材で
>Z県に滞在しているという。
>「定期的に神隠しがありますね」と言い、
>神戸夫妻のコテージを訪ねた。
神戸美穂は定期的に神隠しがあるのを報道で知っており、告発する=流れる水、です。
登場人物の内面や心情を多弁にさせたのは、
丁寧に描くことが重要だと考えてもらうためです。
解説を加え、再び読み返してもらえるように意図しました。
ネタバレが初読なら、より共感が得られます。
・ 神戸美穂と御手洗裕介が実は異父兄妹であること
・ 御手洗亜子と真理が双子姉妹であること
・ 神戸美穂の実父が祖父だったこと
・ 神戸美穂が13歳のときに拉致され虐待を受けていたこと
・ 神戸美穂の正体がアイドルの奥田ゆきのだった
……だけでは読み返してもらえないと思いました。
人間の内面に潜む歪んだ欲望や見えない心理的な恐怖は、現実味があり読み手自身にも起こりうる可能性のある恐怖だと感じられます。
実社会で起きている社会問題を深掘りさせる。
親からの性的虐待、不同意性交への問題。
もう一人の被害者・みそのと達磨が家族として出来る対策などを一時的な解決策として書きました。
法的な効力を持たない絶縁状に、
御手洗達磨は複数のコミュニティを作り、各所に監視カメラを据える、家族を守る防壁の役目です。
◇◇◇
血液型の遺伝パターンや妊娠期間など、一般的な常識では把握しにくい情報を巧みに物語に組み込むことで、直接的な描写を避け、匂わせるような手法を用いり深い印象を残し、社会的に重要なテーマを扱う上で、繊細な表現方法にしました。
虐待は現代社会で深刻な問題となっており、その背景にある心理的な恐怖や被害者の苦しみを描くことは、非常に重要な取り組みだとわたしは考えています。
性的加害者は再犯率が高いです。
わたしの体感で、専門家の意見は分かりませんが、
性的加害者本人が弱者への暴力を正当化し、自分と異なる他者の価値観への執拗な排除に向うように見えました。
御手洗みそのや神戸美穂(奥田ゆきの)を通して被害者への理解が深まりますように。
創作大賞へ書き下ろした小説は全て
構造は単なる娯楽以上のものを求める
わたしが訴えたいことが伝われば幸甚に存じます
2万字に及ぶ創作をご覧いただき
誠にありがとうございます