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著…貴志祐介『天使の囀り』

 訳の分からない肉。

 訳の分からない薬。

 訳の分からない飲み物。

 そういった怪しいものは、普通なら誰も口にしません。

 ところが、人間の心理とは不思議なもの。

 「周りの皆がそれを食べている」とか、「それを飲めば気分が良くなると言われた」とか、そういったことで人間は簡単に流されてしまいます。

 この小説の登場人物たちもそうやって場の雰囲気に流されてしまいました。

 たった一度の食事がどんな恐ろしい結果をもたらすか気づかずに…。

 これは怖いというよりも不気味な小説です。

 特に、虫が苦手な方には閲覧注意な内容。

 生理的嫌悪を刺激する展開が多く、わたしは読んでいる間ずっとぞわぞわしました。

 しかし同時に、人間の弱さもひしひしと感じて悲しくなりました。

 登場人物たちはそれぞれ心の傷を抱えながらも、生きていこうと自分なりに努力していた、とわたしは思います。

 自分の人生を良い方向に変えたいという前向きな気持ちで、誰もが必死にもがいていたはず。

 けれど、その気持ちは裏切られてしまいます…。

 救いの天使のフリをした悪魔によって。

 この小説は何とも言えない嫌な読後感を残すので、好き嫌いの激しい作品だと思いますが、「訳の分からないものを口に入れてはいけない」という教訓や、「親切顔をして近づいてくるものが救いの天使とは限らない」という教訓を与えてくれるので、多くの人に一度は読んでいただきたいです。

 余談ですが、わたしはこの小説を読み始めた頃、知人から「肝試しみたいな感覚で行こうよ〜。一生に一度は体験しようよ〜」とゲテモノ料理を出す店に誘われ、元々断る気でいたのですが、この小説を読み終えたことで「絶対に行かない」とキッパリ断りました、わたしは万が一にも「天使の囀り」を聞きたくはないので…。

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