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絵・文…新潮社校閲部・部長 井上孝夫『その日本語、ヨロシイですか?』

 「どんなに才気溢れる作家にも、また博識な学者にも、うっかり間違える個所や、適切でない表現をしてしまう個所というのはあり得ます。それら多くの筆者は、やはり一般人に比べてキラリと光るものがあると編集者が認めたからこそ、執筆を依頼されたわけです。出版社の仕事というのは、その筆者の持つ煌めきを殺さずに、しかも思わぬ所でつまづいて信用を落としたりすることが無いようにサポートし世に送り出す、ということに尽きます」

(絵・文…新潮社校閲部・部長 井上孝夫『その日本語、ヨロシイですか?』 単行本版P15から引用)


 という校閲の仕事の大切さが伝わってくる本です。

 たとえば、漢字の使い分けもルビの振り方も送りがなも、正解がたった一つというわけではありません。

 文の内容から、ああでもないこうでもないと検討を重ねて、どんな言葉がより正解に近いか決定するというから、頭が下がります。

 外国語をカタカナに変換する時も、表音主義的表記にするか文字転写主義的表記にするか検討している、という仕事の細かさときたら凄いです。

 たとえば、ロシア語の「ありがとう」をスパシーバと表記すれば表音主義的表記、スパシーボと表記すれば文字転写主義的表記。

 ひとつひとつチェックを怠らない、丁寧なお仕事ですね…。

 まさに職人技。

 「校閲ってのはさ、つまり…服の裏地を作る職人みたいなもんだ。外からはよく見えない。しっかり出来ていて当たり前。でもその出来具合で本物かどうか分る人には分る」

(絵・文…新潮社校閲部・部長 井上孝夫『その日本語、ヨロシイですか?』 単行本版 P188から引用)


 と、服の裏地にたとえているのがとても分かりやすいです。

 改めて、校閲者さんたちの仕事ぶりを尊敬します。



 〈こういう方におすすめ〉
 校閲の仕事を知りたい方。

 〈読書所要時間の目安〉
 2時間くらい。

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