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著…垣谷美雨『後悔病棟』

 病気になると、これまでの人生を振り返らずにはいられませんよね?

 …それが不治の病ならば尚更。

 この小説の舞台は入院病棟。

 ここには、不思議な聴診器が存在します。

 患者の胸に当てるだけで、心の声が聴こえてくるのです。

 あの時ああしていたら…。

 あの時ああしなければ…。

 こんなはずでは無かった…。

 …と。

 ※注意
 以下の文は、結末までは明かしませんが、ネタバレを含みます。





 医師のルミ子は、患者の気持ちに寄り添うことが出来ずに悩んでいました。

 そんなある日、ルミ子は不思議な聴診器を手に入れました。

 ルミ子はこの聴診器を使って、患者たちが何に戸惑い、何を悲しみ、どんな後悔を抱えているかを知ります。

 やがて、ストーリーは意外な方向へと進みます。

 ルミ子が患者の胸に聴診器を当てたまま、患者が目を閉じ、意識を集中させると…、なんと!

 奇妙なことが起こります。

 患者の体は病院にいるのですが、心は過去へと戻るのです。

 そして、生きられなかった「別の人生」を体験します。

 しかも、奇妙なことに、「自分の寿命はもうすぐ尽きる」という自覚を持ったまま。

 どうすれば「別の人生」を悔いなく生きられるのか…。

 患者たちは懸命に試行錯誤します。




 患者たちがどうなったか、気になる方は是非この本を読んでみてください。

 「明日死ぬかもしれないと思ったら、今日やるべきことは今日やらなきゃ」

(著…垣谷美雨『後悔病棟』 P339から引用)


 という言葉って、昔から世の中に溢れていますよね?

 しかし、この小説だからこそ、説得力を持って心に響きます。

 この小説に出てくる患者たちはみんな余命いくばくもないのですが、この小説を読む側のわたしたちだって、いつ死ぬかは分からないのですから。

 みんな同じ。

 明日まで生きていられる保証は無いのです。

 今日死んだっておかしくはありません。

 なのに、生きることは日々あらゆる選択の連続。

 完璧な人生どころか、完璧な一日だってちっともありません。

 いつだって、「ああすれば良かった」「ああしなければ良かった」「こんなはずでは無かった」と思うことばかり。

 ずっと、多かれ少なかれ後悔がつきまといます。

 それでも生きていかなくちゃいけない。

 最期の瞬間まで。

 …この小説がそう教えてくれた気がします。



 〈こういう方におすすめ〉
 今日すべきことを、つい明日へと先延ばしにしてしまいがちな方。

 〈読書所要時間の目安〉
 2時間くらい。

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