著…高野史緒『翼竜館の宝石商人』
死という闇が人間の命を塗り潰そうとしている。
そんな恐ろしさを醸し出すミステリー小説。
※注意
以下の文には、結末までは明かしませんが、ネタバレを含みます。
この小説の舞台は1662年のアムステルダム。
主人公ナンドは画家レンブラントの息子ティトゥスと共に、ある謎の解明に乗り出します。
レンブラントが描いた人物が絵から出て彷徨い歩く…。
そんな噂が流れた頃。
ペストで亡くなって埋葬されたはずの宝石商人が、なんと生きている状態で金庫の中から発見されます。
そのそばにレンブラントの絵があったため、レンブラントに「亡くなった家族の絵を描いて欲しい」と依頼する人が続出。
「蘇りなど存在しない」と頭では分かっていても、心では割り切れないのが人間です。
人がなぜ肖像画を買い求めるのかと言えば、それは「権力を誇示したい」とか「絵画の中で永遠に生き続けたい」とかいう理由だけではありません。
「喪った大切な人の顔をいつまでも見続けたい」とか「その人から見つめ返されたい」という想いもあるのでしょう。
だから、「レンブラントの絵画から死者が復活した」なんて噂話が流れたら、依頼が殺到するのも無理は無いですよね。
レンブラントの画風が、闇から光が浮き上がるように見えることからも、人々の「もしかしたら…」という期待が高まっていったのでしょう。
わたしだって、そんな噂を聞いたら、絵の依頼をしに行くと思います。
生き返って欲しい人がいるから…。
…せっかくのミステリー小説ですので、結末まではここに記しません。
興味を持った方は是非この本を読んでみてください。
読み終えた時に不思議な余韻が残る作品です。
〈こういう方におすすめ〉
ミステリー小説が好き且つレンブラントが好きな方。
〈読書所要時間の目安〉
2時間前後くらい。
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