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著…谷崎潤一郎 絵…夜汽車『刺青』

 口絵に描かれた蝶と蜘蛛が、この小説の妖しい顛末を予感させます。

 男と女。

 果たして、蝶と蜘蛛は、どちらの姿を表しているのだろうか? と…。

 ※注意
 以下の文は、結末までは明かしませんが、ネタバレを含みます。





 ある日。

 刺青師の男が、ある女性の素足に一目惚れしました。

 男は、たった一目見かけただけのその素足に、

 「この足を持つ女こそは、彼が永年たずねあぐんだ、女の中の女であろうと思われた」

(著…谷崎潤一郎 絵…夜汽車『刺青』 P14から引用)


 と、どうしようもなく恋焦がれました。

 けれどその素足の持ち主はどんなに探しても見つからず…。

 なんと五年もの歳月をかけてひたすら想いを募らせた結果、男はついに、その素足の持ち主と出会います。

 それは、単に素晴らしく容姿が整っているというだけではない美女でした。

 年の頃は十六、七。

 なのに、まるで数多の男の魂を弄んできたかのような天性の魔性を漂わせていました。

 男は、怖がって帰ろうとする彼女を薬で眠らせて、頼まれてもいないのに、彼女の背中に刺青を彫っていきました。

 男は、自分の歪んだ恋を刻み込んでいったのです。

 美しい彼女の体に、ひとはり、ひとはり…。



 …と、こう書くと、なんとまあ酷い物語だろう、彼女が可哀想、と思うのですが…。

 最後まで読むと、驚愕します。

 蜘蛛に捕らえられた蝶は、そちらの方だったのか、と…。







 〈こういう方におすすめ〉
 好き嫌いがかなり分かれる作品だと思います。
 「大好き」という方と「大嫌い」という方、両極端な反応が得られがちな作品。
 谷崎潤一郎のめくるめく変態ワールドが好きな方や、足フェチの方や、妖艶な美女が好きな方にはおすすめです。

 〈読書所要時間の目安〉
 1時間前後。

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