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著…村上リコ『英国メイドの日常』

 イギリスの文学や映画にはよくメイドさんが登場しますが、いつも脇役扱い。

 しかし、この本ではメイドさんが主役です。

 どんな手続きを経てメイドとして就職し、どんな制服を着て、どんなタイムスケジュールで働き、どのくらい収入を得て、どんな趣味や恋愛を楽しんでいたのかが、絵画、イラスト、写真で丁寧に解説しています。

 「雇い主のことを「階上の人びと(アバヴ・ステアーズ/アップステアーズ)」、使用人のことを「階下の人びと(ビロウ・ステアーズ/ダウンステアーズ)」と総称することがある」

(著…村上リコ『英国メイドの日常』 P22から引用)


 という文を読んで初めて、わたしはイギリス人作家JKローリングさんの『ハリー・ポッター』シリーズでハリーがダーズリー家の階段の下に住んでいた理由にようやく気がつきました。

 単に階段の下にたまたま物置があって、ダーズリー家にとって厄介者のハリーが物置に入れられていたのかと思いきや…。

 そもそも階段の下に住まわされている=召使い扱い、という意味合いが込められていたのかもしれませんね。

 また、

 「使用人の誰であっても、来客に姿を見せてはいけない。破ったものは解雇」

(著…村上リコ『英国メイドの日常』 P46から引用)

 「たぶん、私たちは見えてはいけない存在だったのだ。思うに、それは、まるで妖精が部屋にいたかのように感じられたことだろう」

(著…村上リコ『英国メイドの日常』 P47から引用)


 といった描写を読み、わたしは同じく『ハリー・ポッター』シリーズの屋敷しもべ妖精ドビーを思い出しました。

 なんて不遇!

 メイドさんたちの場合、雇い主によっては多少マシな待遇もあったようですが、他の男性使用人や雇い主からセクハラを受けたりと、職場環境としてはホワイトとは言い難かったようです。

 また、今時は「フォロワーがいる」と言えばInstagramのフォロワーがいるみたいで嬉しいものですが、20世紀初めのメイドさんの恋愛事情的には違ったようです。

 メイドさんの彼氏は雇い主から悪い虫という意味合いで「フォロワー」と呼ばれて蔑まれており、雇い主たちは「ノー・フォロワーズ」を公言していた…ともこの本に書かれていたので、大変驚きました。

 メイドさんには清純さが求められるのですね!



 〈こういう方におすすめ〉
 イギリスの階級社会に興味がある方。

 〈読書所要時間の目安〉
 1時間前後。

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