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著…東野圭吾『容疑者Xの献身』

 おはようございます。

 ミステリー小説というものは「真犯人は誰か?」を暴くのが面白いものですが、それとは全く異なる魅力を持つ小説をご紹介します。

 ミステリーとして読むか、悲しい恋の物語として読むかで、味わいが大きく変わる作品だからです。

 わたしは後者のつもりで何度も読み返しています。

 「容疑者Xが警察に捕まりませんように…」と祈りながらページをめくってしまいます。

 読み返せば読み返すほど、この作品のタイトルに付けられた「献身」という言葉も心に刻まれます。

 きっと、世の中には、この「容疑者X」のことを愚かだと嘲笑う方もいることでしょう。

 感情をコントロール出来なかったのか? と。

 第三者から見れば、その犯罪行為によって「容疑者X」が報われたとも言い難いですし。

 けれど、きっと「容疑者X」は自分が報われることなんて考えていなかったでしょう。

 他人から見ると無感情とまで思える静かな人の心の中にも、感情があります。

 不器用でいびつな愛の形。

 「容疑者X」の胸の内が少しずつ明らかになっていく度に、読み手であるわたしの「容疑者X」への感情は、同情から共感へと変わっていきました。

 「容疑者X」がやったことは決して許されることではないので真似は出来ないけれど…、わたしも「容疑者X」のように誰かを心の底から愛してみたい…とさえ思えてきます。

 そんなにまで他人に恋焦がれて、愛し抜いて、自分の身まで捧げられるなんて。

 羨ましいとさえ思えてきます。

 また、結末に出てくる、

「人は時に、健気に生きているだけで、誰かを救っていることがある」
(単行本版 P345から引用)

 という文もとても美しく心に響きます。

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