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「兄ちゃん何か本ない?」


筆が遅いのを何とせう。

今日も何を書こう書こうと、悩みあぐねていたらこんな時間です。

また夜更かしをしてしまう。

僕は夜更かしをすると、胃腸を悪くします。
胃腸が悪くなると、精神状態に悪影響を及ぼします。
精神状態が不安定だと、手軽な娯楽に逃げたくなります。
そして、手軽な娯楽に逃げた結果、また書けなくなり夜が更ける……。

こんな負のスパイラルに片足を突っ込んでしまっているわけです。

かと言ってすやすやと寝ることを、”毎日書く”という信念が許さないことくらい、オセアニアじゃあ常識なんだよ!


というわけで、真っ白なWord画面に向かって煩悶としてました。


そんな時、僕の部屋に妹が訪れこう言いました。


「兄ちゃん、何か本ない?」


母親からお菓子もらいに台所に来たキッズかお前は。

僕の部屋には、一般的な同世代と比べると少しばかり本の量は多いと思われます。

社会人になり、それなりに安定した収入を得るようになってからというもの、「好きなものにはお金を厭わない」という悪癖を遮るものはなくなりました。
そして、欲望のまま突き進んだ成れの果てがこれである!

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決してこのために寄せ集めたわけではなく、「つんどく」状態です。お恥ずかしい。


「まだあの本読み終わってないから、買わないでおこう」なんて慎ましさなど存在せず、ただ己の欲するまま買い漁ったのでした。

溜まる来月の引き落とし、溜まるTポイント、そして溜まる未読の本たちからの視線。

「おい、まだ俺がまだじゃないか」
「ひどいわ、もう浮気するなんて」

まあ待て、全員ちゃんと読んでやるから。

とはいえ、読むスピードが特別速いわけでもありません。
それに、浮気性な僕は、読んでる途中でころころと別の本に心を移してしまう始末。
これでは、読了からどんどん遠ざかるばかり。

そして先日、大好きな作家さんの一人、森見登美彦さんの「熱帯」が文庫化するという一報を受けました。
恐らくここにまた一人新入りが加わることでしょう。

少しずつ読了して参ります……。


さて、話を元に戻しますと、妹はどうやら自由研究の題材になる本を探しにきたようです。

今までにも何回か、部屋を訪れては同じようなことを言うので、東野圭吾さんの本やら、綿矢りささんの本やらを、引っ張り出して渡してやったことがありました。

さながら、アネサに「吾輩は猫である」を黙って渡す葉蔵のようです。人間失格よりです。

自由研究の題材と聞くと、昆虫図鑑のようなものを思い浮かべますが、そのような代物は、ファーブル昆虫記くらいのものでした。

しかし、妹は「人の命に対する感覚について、特に自殺や自傷行為を行う人間の心理を調べたい」と言うのです。


……あなた理系じゃなかったっけ?

生まれてこの方ゴリゴリの文系一本道を突っ走ってきた僕ですら、さすがに宇宙のこととか調べてたけどなあ(ネットで)


ずいぶんと人文的というか、というか今の高校生そういう自由研究もOKなんだと思いながら、僕はシェリー・ケイガンの「『死』とは何か」を渡しました。
また、自傷行為の例として、村田沙耶香さんの「コイビト」が収録されている、「授乳」を渡しました。

我ながら、よく持ち合わせがあったものだ。
かくして今日もまた、兄の威厳は守られたのであります。

ちなみに「授乳」を渡したのは、妹にもぜひ「村田沙耶香ワールド」にハマってほしいという、下心も配合されています。


というわけで、今夜は妹に話のネタをもらえた形となってしまいました。

そして、またふと思った。

「自分、全然本について語ってなくね?」

プロフィールに、堂々と「本」についてと書いてある割に、実際に書いたのはこの一本のみです。

全くもってふがいない!ふがいない僕は空を見た!

原点に回帰せねばと。

妹や友人に本を紹介するとき、僕は軽く高揚感を覚えます。
きっと幸せなんでしょう。本のことで語るのは。

noteを始めて2週間以上経ち、少し「かっこつけていた」のかもしれません。
「自分はもっと有益な情報を流せる!流して見せる!」と言った感じに。

そうではなくもっと名前の通り「好き」を発信していこうと思いました。
そうすれば、僕のnoteでの方向性や立ち位置も定まって来るのではないかと。

思わぬエウレカがありました。
これだから日常はオモシロイ。
そして本が好きでよかったと改めて思うのでした。

今日紹介した本

村田沙耶香「授乳」

今回は、収録作品の一つ「コイビト」について書きました。

主人公の「あたし」は、ぬいぐるみの「ホシオ」のことしか愛せなくないとう、異常な恋愛感情を持っていた。そんなある日、「あたし」は自分と同じように、ぬいぐるみの「ムータ」のことを、恋人として愛する少女、美佐子と出会う。「あたし」は、美佐子と「ムータ」の触れ合いを見る中で、自分の愛情の異常性を目の当たりにするのだが、そこに生まれるのは、「共感」かそれとも「同族嫌悪」か。取扱注意な刺激が楽しめる、村田ワールド全開の一作です。

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