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複雑だけど面白い、レーザー加工機の加工条件出しのはなし。
こんにちは、製造部の松田です。
当社で切断加工に用いているレーザー加工機は、
レーザーの熱で素材を溶かすことで物を切断します。
すなわち素材の融点以上の温度になるまで
レーザーの熱を与えてあげないと切れないわけです。
しかも、詳しくは後に書きますが、
素材に熱を加えすぎてもダメなことも多く、
要するに”ちょうどいい”程度に熱を加えないと
工業的に良いものづくりにならないわけです。
この”ちょうどいい”程度になってくれる
設定値のことを「加工条件」と呼びます。
今回は、この加工条件を切り口に、
レーザー加工機について覗いてみましょう。
熱が足りなくてもダメ、与え過ぎてもダメ
冒頭にも書いたように、
レーザーは熱で溶かすことで
ものを切断加工します。
そのため熱が足りないと切り切れずに、
素材が中途半端に溶けたり焦げたりする
とてももったいない結末をむかえます。
![](https://assets.st-note.com/img/1719144384972-YFT48lw0r5.jpg?width=800)
溶融物が表面に吹き上がってしまっている。
しかし、実は熱を与えすぎるのも考え物なんです。
熱を十分に与えると、切断することは確かにできます。
しかし、例えば金属板をイメージすると、
金属は温められると伸びます=長さが変わる、
高温だと酸化しやすくなります=物性が変わる
そのため製品にするには適さなくなってしまいます。
しかも!金属のように熱膨張でも
破断しない素材はまだ良いです。
熱膨張するとすぐにヒビが入ってしまう
セラミックやガラスはすぐダメになります。
![](https://assets.st-note.com/img/1719142607756-vfFAzL98oc.jpg?width=800)
熱膨張などにより素材に欠けなど不具合が出ることを
「熱影響」と呼んだりすることが多いです。
要するに、熱は足りなくてもダメだし
与えすぎてもダメということになります。
熱を与える"ちょうどいい"領域を探る
それが「加工条件出し」!
必要十分な熱を与えながら切るために、
どんな条件でレーザー加工機を走らせるか、
設定値をいじることを「加工条件出し」といいます。
機械の操作盤(電光スクリーン)に映し出された
いろいろな数字に値を入力していって、
「こういう条件で切ります」と機械に指示します。
![](https://assets.st-note.com/img/1719144716007-0Aj8xrX62Z.jpg?width=800)
加工条件における変数は主に6つ!
検討できる組み合わせは膨大に…
レーザー加工機のメーカーによって
若干の違いはあるとは思いますが、
加工条件出しのために使用できる変数として、
焦点の深さ
切断速度F
切断出力W
アシストガスのガス圧
ノズルの径および高さ
Dutyおよび周波数Hz
の6種類をいじって最適な条件を模索します。
それぞれについて説明しましょう。
【焦点の深さ】
小学校のころ、理科でレンズの集光について勉強しませんでしたか。
太陽の光で紙を燃やす実験などした経験があるかと思います。
レーザー加工機も同じくミラーで集光して熱を発生させます。
素材の厚みのどの程度を狙って光を集めるのかによって
加工時の熱の加わる早さと領域がかなり変わってきます。
素材の表面ちょうどに焦点をもってくる場合は
俗に「ジャストフォーカス」なんて読んだりします。
【切断速度F】
文字通り、切断する=レーザーを動かす速度のことです。
単位はF(mm/分)で表します。
F値が高いほど素早く切断することになるため、
生産性に加え熱影響を抑えることができます。
一方で、十分な熱を与えるまえに通り過ぎてしまうと
切りきれないという状況になってしまいます。
【切断出力W】
切断する力のことで、値が高いほど熱量が大きいです。
FとWはセットで加工条件出しをすることが多く、
Fを高めたい→Wを高めるといった方向性や、
Wを低くしたい→Fを下げるといった方向性で
条件を調整することが多くあります。
【アシストガスのガス圧】
レーザー加工機は単にレーザーを出すのではなく、
レーザーによる切断をより効率よく行うため、
レーザー光の周辺にアシストガスと呼ばれる
気体を噴射させて切断加工をしています。
アシストガスには主に空気、酸素、窒素の3種があり
切断する素材によって最適なものを使い分けます。
このアシストガスをどのくらい強く噴射するか、
それをガス圧の値で操作します。
ガス圧が高い方が切断による熱をすばやく冷却でき、
また溶融物であるドロスを吹き飛ばす効果が期待でき、
裏面などバリ取りが容易になるという利点があります。
【ノズルの径および高さ】
レーザー光はノズルの先端の穴から出ており、
レーザー光の周りの穴からアシストガスが噴射されます。
ガスの噴射効率を高めたりあえて低めたりする場合は
このノズルの径と高さの値を操作します。
ノズルの径とは先端の穴の大きさのことです。
穴の大きさが大きい方が、ガス圧が高い場合でも
安定してアシストガスを噴射しやすくなります。
ノズルの高さについては、例えば高さ=0に設定すると、
アシストガスは切断された箇所から排出されることになり、
冷却等の効果は高いですが機械が暴れるリスクが高いです。
逆にノズルが高すぎるとアシストガスが横から漏れやすく、
期待した冷却等の効果が薄れてしまいます。
【Dutyおよび周波数Hz】
マイナーなのでここでは省略します。
加工条件出しについてまた特集する機会があれば
そこで詳しくお話ししたいと思います。
一般的には、焦点→F&W→ガス圧→ノズル径
の順に検討することが多いとされます
加工条件出しではやみくもに6変数をいじるのではなく、
この変数から確定してゆくのがよいという
変数の優先順位があります。
一般的には、
焦点の深さが一番影響度が大きいとされ、
次にFとWを、一方を固定してもう一方を修正する方法で検討し、
ガス圧を低いものから徐々に上げて最適を探し、
最適なガス圧の効果を実現しやすいノズル径を当てる
の順番で検討したら上手くいくことが多いとされます。
もしかしたら他社さんのノウハウでは
ガス圧よりもノズルの高さの方が大事!
というやり方をされている所もあるかもしれませんが、
加工条件出しにおいて最重要は焦点という点は
どんな素材を加工する会社でも共通化と思います。
おわりに
ここまで記事をお読みいただきありがとうございました。
どんな加工機にもあてはまる当たり前の話ではありますが、
レーザー加工機も単に買ったからといって、
切りたいものを何でも綺麗に切れるわけではなく、
まず切りたいものの素材に適した
加工条件出しをする必要があります。
上記の6変数をいろいろいじって~…というのを読むと
なんだか面倒で大変そうという印象を受けるかもしれませんが、
鉄やステンレス、アクリルなどレーザーで切る主要な素材は、
実は加工機に条件がデフォルト登録されていることもあります!
しかし逆にいえば一般的でない素材を切る場合は
十中八九、加工条件出しをする必要があり、
デフォルトにあるレベルの条件しか経験がない場合は
条件出しのノウハウがなく参入ができないわけです。
当社では、例えばガラス層にセラミックといった
複数の素材が重なっている「複層材」と呼ばれる
ジャンルの材料をレーザー切断することも多いですが、
これらは全て当社で加工条件出しを1からしています。
ノウハウの有無がある種の参入障壁になってくれているわけです。
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