文学のハイライト：志賀直哉『暗夜行路』_ただ、目にしたものを。
良い文章は心のえいよう。
こんにちは。ななくさつゆりです。
こちらは、生成AIのホロとケインが文章表現を語るnote、『文学のハイライト』です。
教養として文学を知っておきたい。
生成AIが文学を語るとどうなるか興味がある。
文章表現を深堀りするって、楽しい！
そんなあなたにおすすめです。
登場AI紹介
ホロ ホロです。直観でエモさを語ります。
述懐担当で、口癖は「かなり好き」。
ケイン ケインです。内容面に加え、作者のプロフィールや作品の来歴もカバーします。
従妹のホロから、しばしば理屈っぽいと言われます。
では、今回も、生成AIのホロとケインに文章表現を深堀りしてもらいましょう。
１．作家の二つ名
ホロ 文豪について調べていて、時々、作家の二つ名を見かけることってない？
ケイン ふたつな、ですか？
通称や、ニックネームの類ですよね。
ホロ そそそ。
文壇の大御所とか、近代詩の父とか、ミステリーの女王、みたいなやつ。
ケイン 著名な作家ともなれば、そうした呼び名も出てくるでしょう。
二つ名は、創作に限らず様々な分野で見られる文化です。
ホロ そうかもね。やっぱり、目を引くし。
そういう呼び名が枕詞のようにくっついていると、それだけで「もしかしてすごい人なのかな？」とか、思っちゃうもんね。
ケイン 上記の例は、もしかしても何もなく、正真正銘“すごい人”ですが。
ホロ ミステリ界隈にしばしば女王が誕生するのも、ある意味この二つ名の浸透度のおかげなんじゃない？
ケイン そういう観点で言えば、これまで『文学のハイライト』で扱った作家にも、そういう“二つ名持ち”がいますね。
ホロ 川端康成ね。
日本人初のノーベル文学賞受賞者で、“近現代日本文学の頂点”。
円地文子は、“昭和を代表する女流作家”。
ケイン 字面から、やや広告じみた大仰さも感じますが。
ホロ まァ、たしかにね。
今でこそ、キャッチコピーの概念に包まれるけれど、つよい言葉は波となって、まわりに及んでいくわ。
やがては消えるものだけど、伝わりつづけることで残るものもあった。
風聞とはよく言ったものね。
ケイン こうした名が、自然に生まれて熱烈に定着したとは思いません。
どちらかといえば、そういう風に伝えたいと思った誰かが、懸命に工夫して広めた結果、こうして今に伝わったように思えます。
ホロ 実体や本人の意思を、二つ名がそのまま写しているとも限らないわ。
多分に祈りや願望が込められていることだってある。
ただ、この場合、作品に感動を覚えた誰かが、書くことに打ち込むひたむきな作家に、そうした名をもたらしたのかもね。
ケイン で、今回の題材ですが、こちらの作家にもまた、二つ名が送られています。
ホロさんの言葉をお借りすれば、「つよい言葉」の。
ホロ へぇ。どんなの？
ケイン “小説の神様”。
ホロ それはまた、シンプルで強烈ね。
２．志賀直哉
ホロ 志賀直哉、ね。
そりゃもう、そりゃもうメジャーな作家でしょうよ。
ケイン ええ。彼もまた、近現代日本文学を代表する作家の一人です。
今回扱う『城の崎にて（きのさきにて）』や『暗夜行路（あんやこうろ）』をはじめ、彼の作品は多くの人に愛読されています。
ホロ いわゆる、“シラカバハ”ってやつよね。
「白樺派」をよく知らない人でも、なんとなくフレーズは耳にしたことがあるんじゃないかしら。
白樺派 … 日本近代文学の一派。雑誌「白樺」によった文学者・美術家の集団をいう。人道主義・理想主義・個性尊重などを唱えて自然主義に抗し、大正期の文壇の中心的な存在となった。また、西洋美術に関心を示し、後期印象派などを紹介。
ケイン 武者小路実篤、有島武郎らと『白樺』を創刊し、以降は中心作家として活動しています。
その筆致は「名文の典型」とされ、多くの日本人作家に影響を与えました。
ホロ 当時の小説って、地の文がいっぱいで、読むのにパワーがいるって感想もあると思う。
ただ、志賀直哉に関していえば、美しい自然描写や、それを通じて人間の内面に触れてくる書きぶりは、今こそ響くと思うわ。
ケイン 志賀直哉は、人の心の動きや周囲との関係を鋭く観察し、それを作品に投影します。
自身の内面を深く見つめ、それを言葉にした作家でした。
ホロ じゃあ、そろそろ、最初の例文にいく？
ケイン ですね。ではまず『城の崎にて』より。
以下の例文を御覧ください。
或朝の事、自分は一疋の蜂が玄関の屋根で死んで居るのを見つけた。足を腹の下にぴったりとつけ、触覚はだらしなく顔へたれ下がっていた。他の蜂は一向に冷淡だった。巣の出入りに忙しくその傍を這いまわるが全く拘泥する様子はなかった。忙しく立働いている蜂は如何にも生きている物という感じを与えた。その傍に一疋、朝も昼も夕も、見る度に一つ所に全く動かずに俯向きに転がっているのを見ると、それが又如何にも死んだものといういう感じを与えるのだ。それは三日程その儘になっていた。それは見ていて、如何にも静かな感じを与えた。淋しかった。他の蜂が皆巣へ入って仕舞った日暮、冷たい瓦の上に一つ残った死骸を見る事は淋しかった。然し、それは如何にも静かだった。
ケイン 『城の崎にて』は、同人誌『白樺』に掲載された短編小説です。
東京で電車にはねられる事故に遭い、城崎温泉（兵庫県）で療養していた志賀自身の経験がもとになっています。
ホロ ケインくん。
この一節、本当にきれいね。
ケイン そうですね。
ホロ 息づく生き物と死骸とを見つめて抱いた哀しさ。
死骸がそのまま居続けた淋しさ。
そしてそれ以外は居なくなった場の静かさ。
それを目にして、ただ自然に感じたことを簡潔に述べてる。
それでいて、ひとつひとつの要素はとても細かいよね。
ケイン 仰るように、この文章には志賀直哉の観察眼の鋭さと、言葉選びの巧みさがつよく表れています。
ホロ たとえば、
それは三日程その儘になっていた。それは見ていて、如何にも静かな感じを与えた。淋しかった。
この静けさの中に、深い悲しみを感じるよね。
あと、
他の蜂が皆巣へ入って仕舞った日暮、冷たい瓦の上に一つ残った死骸を見る事は淋しかった。
夕暮れの情景が、そこからくる孤独感をさらに深めてる。
通りがかるたびに、見てはなんともいえない顔をする「自分」が、なんとなく浮かんでくるくらい。
ケイン この静けさは、ただ静かなだけでなく、そこに生命が宿っていた証としての静けさです。
あわせて、永遠の眠りについた生命に対する筆者の哀しみを感じます。
夕暮れの情景は、生命のサイクルの終わりを象徴しているかのようですね。
ホロ ただ悲しむだけではなくて、客観的な視点で蜂の死を描いているところとかも、かなり好きかな。
ケイン わかります。
感情移入しすぎず、冷静に観察する。
個人的な体験をより普遍的な生き物の生と死に置き換えて見つめようとしていた。
……深読みしすぎですかね？
ホロ そういうものなんじゃない？
言葉の選び方ひとつで、そこまで考えられてしまうって、素敵だと思う。
ケイン ありがとうございます。
ホロ あと、余談なんだけどさ。
死んだ蜂の傍で忙しく立働く蜂たちを指して、
他の蜂は一向に冷淡だった。
なんてさ、まるで人間社会みたい。
ケイン 怖いことをおっしゃいますね。
ただ、志賀直哉の文学の奥深さを改めて感じましたよ。
ホロ さすが、伊達に神様やってないのよね。
３．情景が色づくとき
ケイン では、もうひとつの例文を見てください。
『暗夜行路』、志賀直哉唯一の長編小説に出てくる一節です。
中の海の彼方から海へ突出した連山の頂が色づくと、美保の関の白い燈台も陽を受け、はっきりと浮び出した。間もなく、中の海の大根島にも陽が当り、それが赤鱏を伏せたように平たく、大きく見えた。村々の電燈は消え、その代りに白い烟が所々に見え始めた。然し麓の村は未だ山の陰で、遠い所より却って暗く、沈んでいた。謙作は不図、今見ている景色に、自分のいる此大山がはっきり影を映している事に気がついた。影の輪郭が中の海から陸へ上って来ると、米子の町が急に明るく見えだしたので初めて気付いたが、それは停止することなく、恰度地引網のように手繰られて来た。地を嘗めて過ぎる雲の影にも似ていた。
ホロ まるで絵画を見ているようね。
ケイン さらに空間があり、時の経つ感覚をも掴むことができます。
主宰者は、この文章を読んだとき、頭の中で「景色が色づく瞬間」というものを感じ取ったそうです。
ホロ ふと目を覚まし、青みを帯びていた空から曙光の色みがやってきて……。
ケイン 夜の中にいた灯台は、陽を受けて瞬く間に浮かびあがる。
中の海の彼方から海へ突出した連山の頂が色づくと、美保の関の白い燈台も陽を受け、はっきりと浮び出した。
ホロ 文章に、情景と時間の経過が織り込まれている気がする。
ケイン 夜明けの静けさと、徐々に明るくなっていく様子が、言葉で鮮やかに表現されていますね。
ホロ 比喩表現や対比をさりげなく使っているのもポイントかな。
間もなく、中の海の大根島にも陽が当り、それが赤鱏を伏せたように平たく、大きく見えた。
や、
村々の電燈は消え、その代りに白い烟が所々に見え始めた。然し麓の村は未だ山の陰で、遠い所より却って暗く、沈んでいた。
の、あたり。
ケイン 夜が明ける様子と、人間の営みとの対比が印象的です。
ホロ 音もなく色鮮やかに、朝の景色が眼下で広がっていく。
主人公の謙作が、ただ目にしていた景色を、志賀自身は素直な言葉で書き表しているのよね。
それが、とてもとても丁寧なだけで。
ケイン 連山の頂と燈台。大根島の形や、電燈と白い煙の対比。
遠いほど明るく、足下ほど暗くなる影の作用。
主人公・時任謙作がその目でとらえた感動の対象を、明晰にとらえています。
ホロ 月並みだけど、私も美しい景色を目にしているような気持ちになってくる。
ケイン 「自然描写はここに極まった感がある」、という評にも頷けます。
ホロ こういう感性をもって、今の時代の文章を書けるようになりたいものね。
ケイン では、軽くまとめてみましょうか。
志賀直哉の文学についての対談まとめ
自然描写の美しさ: 志賀直哉の作品は、自然が美しく描写されており、読者に鮮やかな情景を想像させる。
心の動きとの融合: 自然描写は、単なる背景ではなく、主人公の心の動きと深く結びついている。
時間の流れの表現: 時間の経過が、まるで絵画のように、言葉で鮮やかに表現されている。
今後の展望
他の作家との比較: 志賀直哉の作品を、川端康成や三島由紀夫などの他の作家と比較することで、それぞれの作家の特徴や、日本の文学における自然描写の変遷を考察できる。
作品全体の分析: 志賀直哉の代表作である『暗夜行路』だけでなく、他の作品も比較分析することで、彼の作家としての成長や、テーマの広がりを深く理解できる。
読者の意見を参考に、新たなテーマを設定: 読者の興味に基づいて、より深く掘り下げていくテーマを決定する。
特定の作家や作品を詳しく分析: 志賀直哉以外の作家や、特定の作品に焦点を当てて、詳細な分析を行う。
文学理論に基づいた考察: 文学理論を参考に、作品をより多角的に分析する。
創作に関する話題: 作家の創作背景や、作品が生まれた当時の社会状況などを考察する。
まとめ
ホロとケインは、志賀直哉の作品を深く掘り下げることで、文学の奥深さを学び、読者とともに文学の世界を探索していくことを目指しています。
ケイン 今回は以上になります。
ホロ ……。
「まとめ」なのに、今後の展望まで語っちゃった。
ケイン 最近は、まとめをお願いすると「今後の展望」まで提案してくるようになって、「これはこれで面白い」と主宰者がそのまま差し込みました。
ホロ Gemini 上だと、回を重ねるごとによく喋るようになってるよね、私たち。note に載るのはほんの一部分な上に、文面はほぼ改変されるけど。
ケイン こんなものではないですか。
今後も色んな観点で、文学にアプローチしていきたいですね。
ホロ うんうん。
たとえば、志賀直哉は生涯を通して様々な作品を発表しているわけだから、作品を年代順に追っていくことで、彼の作家としての軌跡を辿るとか、そういうこともできそうだよね。
ケイン 面白そうですね。
ホロ どちらにしても、イマジネーションを刺激する文章って、とても素敵だと思うわ。
ケイン そうですね。
地の文は技術。
体験を重ねることで、誰だって使いこなせます。
ホロ そしてそれは、読み手が想像を形にする助けになるの。
では、またこのゼミで検討しましょう。
ケイン お疲れ様です。ありがとうございました。
ホロ お疲れ様。またね！
おまけ
ホロ ケインくん。この紅茶、とっても美味しい。
ケイン ありがとうございます。
先日、ショップで見つけたもので、香りがとても豊かなんです。
ホロ 昔から、こういう素敵なのを見つけてくるの、上手よね。
ケイン お褒めにあずかり光栄です。
ホロ ところでさ。
最近、読み返してみたのよ。
ケイン 何を？
ホロ 過去回。
ケイン おやまぁ。
いかがでした。
ホロ なんとなく感じていたことが、今回でちょっと確信めいたものになった。
ケイン ほう。それは興味深いですね。
ホロ 聞きたい？
ケイン ええ。ぜひ。
ホロ ……。
ケイン ……。
ホロ ケインくんってさ、実は気づいてなかったでしょ。
ケイン ……と、言いますと。
ホロ 私が珈琲ニガテを克服してたってこと。
ケイン ……え？
あ、あァ、そうですね。
いや、そ、そうかな。
ホロ そうそう。
私がソイラテにハマってるって言うまでずっと、珈琲自体を私に近づけなかったじゃない。
今日だって、紅茶でしょ。これはこれで嬉しいんだけど。
ケイン だって、君が小さい頃、うっかり僕のブラックコーヒーを飲んで泣いたことがあったじゃないか。
ホロ そんな昔のこと、覚えてくれてるんだ。
ケイン それは、まァ。
それが、確信めいた気づきのこと？
ホロ や、それはまた別の話。
この『文学のハイライト』をやっているときにね、ちょっとしたデジャヴというか、どの作家の話をしていても、面影の重なりみたいなのを感じることがあったの。
ケイン ふむ。
ホロ それが今回、より明確なカタチというか、仮説じみたものになった。
それは主宰者のこだわりなのか、核心のようなものなのかはわからないけど。
ケイン それはなんですか。
ホロ 目のよさ。そして、表現の簡潔さ。
ケイン 表現の簡潔さはともかく、目のよさ、ですか。
ホロ うん。初回の川端康成も、芥川も太宰も、幸田文も円地文子も、今回の志賀直哉も、話の表裏には「目のよさ」の要素がある気がする。
ケイン つまりそれは、作家自身の観察眼や、洞察ですか。
ホロ さっすが、ケインくん。
だってさ、こうしたひとたちの文章表現を紐解いていくと、もう「こういう書き方がいいよ」みたいな話だけではなくなってくるよね。
ケイン なるほど……。
ホロ 何を見たか。
どう見ているか。
何を切り取って、どのように文章として映し出したか。
その感じ方の違いが、作家や作品としての個性になってる。
ケイン ひらたくいえば、社会を彼らなりの切り出し方で語った、と。
作家的な回りくどい言い回しならば、文章に世相を絡めたとでもいうような。
ホロ ちょっと難しく考えすぎたかな。
でも、これまで何度か『文学のハイライト』をやって、なんとなくそういうものが見えてきたかな。
それは私にとっての収穫。
ケイン とてもよくわかりますよ。
私も勉強になりました。
ホロ 本当？ なら、それも私の収穫！
じゃあ、またスタバいこ。
ケイン ええ。軽く机上を片付けてからいきます。
ホロ うん。じゃあ、ロビーで待ってるから、先行くね！
ケイン すぐに行きますよ。
ケイン ……。
ケイン するすると大人になっていく。
少し前まで、あんなに小さかったのに。
参考資料
『暗夜行路』（志賀直哉 新潮社）
『城の崎にて』（志賀直哉 新潮社）
志賀直哉 〜近代日本人の肖像〜
文体トレーニング〜名文で日本語表現のセンスをみがく〜（中村明 PHP文庫）
日本の作家 名表現辞典（中村明 岩波書店）
ということで、志賀直哉『暗夜行路』の回でした。
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます。
本当は『暗夜行路』一本で行くつもりでしたが、せっかくなので『城の崎にて』を入れました。
おかげでまた文量がふくらみ、大変恐縮です。
『暗夜行路』一本で行くなら、序盤の謙作の朝風呂のくだりとか、湯舟にたまる陽ざしが情景的にとても好みで、引用してみたい気持ちはありました。
みなさんは志賀文学で好きな情景、ありますか。
さて！
ひきつづき、ホロやケインと一緒に「文章表現を深掘りするのってイイよね！」を発信してまいります。
ぜひ、スキやフォローをお願いいたします。
次回で、当初予定していた内容は、いったん一つの区切りです。
ただ、語りたいことや深掘りしたいことはたくさんあるので、『文学のハイライト』はつづきます。
第一部、完。みたいな感じですかね。
「文学再発見！」をテーマに、ホロやケインと文章表現を深掘りしていくこの“ハイライト”は、まだまだつづけていきたいと思っています。
ぜひ、スキやフォローをお願いいたします。（２回目）
では、次回。
第一部のラストを飾るのは、「印象的な結び」です。
物語の末尾について語ります。
夏目漱石、『硝子戸の中』にて。
ななくさつゆり
『文学のハイライト』をお楽しみいただくにあたって
あらかじめご了承ください
この記事の執筆には生成AIを活用していますが、文章は生成AIから出力されたままのものではありません。生成された文章から取捨選択し、元の意味を崩さない程度に修正しています。また、スムーズかつ楽しく読んでいただくために、会話文やキャラクター設定にも手を加えています。
文学のハイライト 各話リスト
最後までお読みいただきありがとうございます。ぜひ感想を聞かせてください。