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小説の登場人物の心理をどのように理解するのか?(2)
前回は、会話文や地の文で用いられる比喩から、登場人物の心理を推測する方法について考えてみました。 https://note.com/ho_anthropos/n/n0c3a39c46d47 今回はそれに対…
【書評もどき】A.J.エイヤー『言語・真理・論理』
1.全体について
エイヤーのこの本について、Twitterでつぶやいたことをまとめました。本書全体については、以下のツイートの通りです。
2.翻訳について
少々古い訳だからか、linguisticを「言語学的」と訳しているようですね。これはちょっと紛らわしいと思いました。「言語論的」とかの方がいいと思います。
ここも「文章論的」ではなく、「構文論的」などと訳した方がいいと思いました。
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認知意味論の観点からの歌詞の解釈
1.はじめに
少し前に読み終わった認知意味論の入門書が非常に面白かったので、今回はその考え方を応用して、ある楽曲の歌詞(の一部)を解釈してみたいと思います。取りあげる楽曲は、レミオロメンの『粉雪』です。
本楽曲はさまざまな評論が可能であると思われ、またすでにそのような研究はいろいろな場でなされていると思いますが、ここでは本楽曲の主題というよりも、その中の1フレーズが、どのようなことをどのように
古文が苦手な人のための、古文教材研究法
国語科の教員の中には、私のように、国文学を専攻しておらず、古文の教材研究に苦手意識をもっている方も(数は少ないと思いますが)いらっしゃると思います。
そういう方のために、今回は、私が古文教材を研究したり、古文を教材とした授業をするときに使っている方法を、『蜻蛉日記』「なげきつつひとり寝る夜」の冒頭部分を、実際にその方法で解釈することによって紹介したいと思います。
この方法が古文教材を研究する良
私の教材研究法(3)ー葉山嘉樹「セメント樽の中の手紙」
今回は、これまでも何度か触れた、葉山嘉樹の「セメント樽の中の手紙」を題材として、小説教材を対象とする教材研究のやり方を説明していきたいと思います。まずは次の一文をご覧ください。
(1)お願いですからね、このセメントを使った月日と、それから詳しい所書きと、どんな場所へ使ったかと、それにあなたのお名前も、御迷惑でなかったら、ぜひぜひお知らせくださいね。(葉山嘉樹「セメント樽の中の手紙」)
これはセ
小説の登場人物の心理をどのように理解するのか?(2)
前回は、会話文や地の文で用いられる比喩から、登場人物の心理を推測する方法について考えてみました。
https://note.com/ho_anthropos/n/n0c3a39c46d47
今回はそれに対して、文章中で用いられる語の辞書的意味から、文章中に明示されない、登場人物の心理を推測するやり方について考えていきます。
1. 文章中で用いられる心理的表現
まずは以下の(1)の文章を読ん
小説の登場人物の心理をどのように理解するのか?(1)
今回は教材研究からは少し離れて、私たちが小説を読む時、その登場人物の心理をどのように理解しているか?という問題について考えていきたいと思います。
ここで「心理」というのは、その人物の喜怒哀楽の感情や、思考内容などを指して言っています。
一口に登場人物の心理の理解と言っても、そのやり方は多岐にわたりますので、ここでは比喩表現から登場人物の心理を推測する場合に論点を絞って考えていきます。
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いわゆる「百科事典的知識」について
前に書いた記事で、「蒸気機関車」についての「百科事典的知識」に基づいて、句中の「夏草」という語を解釈しました。
「百科事典的知識」というのは、認知言語学などで用いられる用語で、「事物に関して誰でも知っているような一般的な知識」を指します。
しかし、この「百科事典的知識」、いろいろと不思議な特徴があるように思われ、今回はそれについて書いてみたいと思います。
(1)ある日の授業風景
ある日の授