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日々、愛

''この前楽しかったよね〜''

仕事中、バックヤードで2人になった時、彼がふとつぶやいた。

''あ、わたし(と飲んだ日のこと)ですか?''

''そうそう''

しれっとそんなことを言うのだから、策士だ。

''今度は、仕事終わりにカラオケ行って終電までに帰るのがいいよね''

彼がわたしと過ごした時間を楽しんでくれたことがたまらなく嬉しい。


残業確定の彼、わたしは先に上がって良いと言われたので帰り支度。

''え、帰ろうとしてるじゃん''
といじってくるので

''寂しいですか?''と煽ってみる。

''退屈ではある(笑)''

彼は頭の回転が早いので、こういう時も怯まない。

わたしも、彼の思わせぶり?に怯むことがない。
なんとなく、2人のノリが出来ている感覚。

もはや仲の良い友達のような、兄弟のような(大先輩だけどね)

その距離感が心地いい。


記憶をぶっ飛ばしてしまった日。

カラオケに行く時に、大好きなカプリコを買ったはずなのに、家に帰ったらなくなっていた。
食べた記憶はないし、もし食べていたとしたら、さすがにあの食べづらさ(笑)は少しくらい覚えているはず。

''カプリコ知りませんか?''

''食べたんじゃないの?''

''いや、絶対食べてないです。食べたかったー( ;  ; )''

なんて話をしていたら

そうなのです、、
休憩中、バックヤードで被った時に。

''お、ちょうどいいところにいるじゃん''
と、差し出されたのです、、

''日常の買い物中に見つけたの。3日間くらい鞄に入れてたから、割れてたらごめんね''

ああ、これを愛と呼ばずになんと呼ぼう。

彼はいちご味のお菓子が嫌いだから、絶対についでとかではない。
見かけたのは偶然だったにしても、わたしを思い出して買ってくれたのだと思ったら、とても心があたたかくなった。

この人が好きだ。

改めて思った。


''明日カラオケ行きませんかー''

ストレスが溜まったタイミングで誘ってみたら、OKをもらえた。
仕事終わりなのに時間を作ってくれるのも愛。

待ち合わせ場所で会った彼は、相変わらずわたし好みの服装だった。

''hnさん茶色すきって言ってたから、今日は茶色ぽい感じで来た''

くぅ、、愛だな、、!

一緒にいない時も、相手の心にいるんだと分かった瞬間。
とっても尊いですよね。


カラオケの前に、腹ごしらえ。

鮎が乗ってる

街をうろうろして、見つけたラーメン屋さん。
普段あまりラーメンは食べないけれど、好きな人と食べるラーメンは格別だね。

ラーメンを啜るわたしの髪の毛が、スープにつきそうだったらしく
不意に彼がわたしの髪の毛を持ち上げた。

''髪の毛が美味しくなっちゃいそうだった''

彼の言動には怯まないはずのわたしだったのに、その時は少しだけ照れてしまって上手い返しができず

''へへへ〜''
と変な笑い方をしてしまった(恥)

そして、彼が気になっていたという角打ちのお店へ。

わたしが飲みたかったビールが置いてあったので飲まずにはいられなかった。
パッケージで選んだけれど、オレンジピールの味が効いていてとっても飲みやすかった…!

彼が選んだ方は、しっかりめにビールの味。

お互いに好きな味を選べたので大満足。

''休みの日みたいですね''

''ほんとだね''

仕事終わり集合だったのに、こんな時間を過ごせるのは、相手が彼だからだな〜とつくづく。


そしてカラオケへ。
お互い終電があったので2時間で。

お酒もいい感じに回って、楽しくなったわたしたちは時間を余すことなく歌い尽くした。

やっぱり彼とのカラオケが好きだし、彼もわたしとのそれを楽しんでくれているのが伝わる。

wacciさんの『別の人の彼女になったよ』を歌っていた時だったか。

''順番が違ったらね''
と彼が呟いたのを、わたしは聞き逃さなかったけれど
歌の途中だったし、なんのことだかよく分からず言及できなかった。

今の恋人とわたし?それとも全然違う話?

でも、このことについて聞く日は来ないだろうな。


わたしの終電がギリギリになってしまい、タクシーで帰るか〜と諦めかけていたら

''走るよ!!''
と手を引かれて駅までダッシュ。

''ちゃんと見送ってあげるから急いで!''

夜の誰もいない街を、手を繋いで走るなんて
映画のワンシーンみたいで。
朧げな記憶の中で、その光景だけははっきりと覚えている。

彼もそれなりに危ない時間だったのに、わたしが電車に乗り出発するまで見送ってくれた。

お手洗いに行きたいけれど、終電を逃しそうで我慢しているわたしに
''○○分の電車で間に合うみたいだよ''とわざわざLINEで教えてくれる彼。

また、愛なのである。

ヘロヘロになりながら、乗り換えの駅まで辿り着き、無事に降りた報告をすると
彼から突然電話がかかってきた。

酔っていたのかな。

わたしのイヤホンの接続が悪かったのか、うまく通話できず、わたしはまた電車に乗り込む。

''最寄りついた!''
今度はわたしから電話をかけるも、彼が出ない。
電話を切ってトーク画面を見ると、彼からたくさんの不在着信が。

お互いにかけ合っていたので繋がらなかったみたい。

全部、全部、愛なんだから。


コンビニに行ってアイスとヨーグルトを買う間、電話に付き合ってもらった。

''カラオケ2時間じゃ足りないね。今度は休みの日に昼くらいから行こうか〜''

彼は、わたしとの少し先の未来の話をなんの躊躇いもなくする。

''このお店気になってるんだよね、今度行こうよ''
''ここ美味しかったね〜仕事終わりなら、またふらっと来れるよね''

この何気ない会話を、大切に心にしまっている時点で、わたしが''追いかける側''にいるのが確定しており、先行きが不安ではあるのだけど、、

彼の想像する未来に、わたしはしばらく存在しているんだな〜と思うと嬉しくなってしまうの。


憧れの人。
仕事終わりにコンビニでお酒を買って飲むことはあっても、それ以上の時間を過ごすことはないのだろうな〜と思っていた人。

気がつけば、次から次へと予定が立っている。

嬉しい反面、この時間は長引けば長引くほど、よくない方向に進む予感もしているから
ある程度のところでけじめをつけなければいけない。

だからせめて。

愛と呼びたくなるような欠片を、今はただ拾い集めていたい。

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