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腰椎椎間板ヘルニア

椎間板ヘルニアと聞いて皆さんはどう思いますか❓

ヘルニアになったら治らない、痛みがひどい、入院するなど様々な印象があると思います。

今回は、腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン2021(改訂第3版)を参考に腰椎椎間板ヘルニアについてわかりやすく解説させて頂きます。



1.腰椎椎間板ヘルニアとは


背骨の腰にある骨(椎骨)と骨との間のクッションの役割をしている椎間板が変性をして、椎間板の一部が飛びだすことをヘルニアといいます。
このヘルニアが後ろにある神経を圧迫し、腰や足に強い痛みやしびれ(坐骨神経痛)などの症状を起こすものを腰椎椎間板ヘルニアといいます。

特 徴

  • 無症状のヘルニアの人も多く、医学手に60歳未満で約20%、60歳以上で約40%いるといわており、症状がない場合は腰椎椎間板ヘルニアとはわない。

  • スポーツで腰椎椎間板ヘルニアを発生させることについては、医学的に明らかになっていない。

  • 20年以上前は「腰椎椎間板ヘルニア = 手術」という考えでしたが、現在の腰椎椎間板ヘルニアでは手術に至るケースは、約30%といわれている。

  • 一般的にヘルニアの大きさと症状が相関することが多いが、必ずしも一致することはない。


2.発症頻度と好発年齢

  • 腰椎椎間板ヘルニアの発症する頻度は、おおむね1%前後である

  • 好発年齢は、20歳~40歳代に多く発症する

  • 10歳代と70歳代は稀に発症する

  • やや男性に多い


3.好発部位

  • L4/5(腰椎の4番と5番の間のヘルニア)・L5/S1(腰椎の5番と仙椎の1番の間のヘルニア)、次いでL3/4(腰椎の3番と4番の間のヘルニア)が多い。

  • 年齢が高くなると同時に、L2/3(腰椎の2番と3番の間のヘルニア)・L3/4の腰椎の上の部位に起こることが多いという報告もある。

※ L4/5とL5/S1に好発する理由は、腰椎の構造上の問題で一番下にあって椎間板への負荷が一番かかりやすくなることと、腰椎の可動域が大きいことが考えられています。


4.腰椎椎間板ヘルニアの発生する要因

  • 喫煙者は、ヘルニアの発生リスクが高まるという報告がある。 → 統計

  • 職業で座り作業をしている人のほうがヘルニアの発生リスクが高いという報告がある。 → 立っている時よりイスに座っている時のほうが、椎間板内圧が上がってしまうためと考えられる。とくに座ってでの前かがみ動作、座ってでの前傾姿勢のときに高リスクとなる

椎間板内圧が上がる姿勢


5.ヘルニアは自然に小さくなるのか❓


ヘルニアの塊の周囲にマクロファージといわれるものが遊走され、ヘルニアの塊を食べてしまい(貪食作用)、新しい血管(新生血管)ができるといわれています。

これが現在では、ヘルニアが自然に小さくなるメカニズムと考えられています。


6.腰椎椎間板ヘルニアの診断基準

・ 腰・下肢痛(脚への痛み)がある(主に片側、ないし片側優位)
・ 安静時にも症状がある
・ SLRテスト(下肢伸展挙上テスト)は、70°以下で陽性(ただし高齢者では絶対的条件ではない)
・ MRIなどの画像所見で椎間板の突出がみられ、脊柱管狭窄所見を合併していない
・ 症状と画像所見が一致する。

腰椎椎間板ヘルニアガイドラインによる診断基準

SLRテスト(下肢伸展挙上テスト)

MRI画像


7.治 療


腰椎椎間板ヘルニアの治療は、大きく保存療法と手術に分けられます。


保存療法


腰椎椎間板ヘルニアは保存療法が原則となります。

保存療法には様々あり、自然経過によって症状の原因とされているヘルニアの塊が吸収されるまでの時期として、一般的には3ヶ月が治療の目安と考えられています。


保存療法のガイドライン

  • 痛み止めの薬は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が推奨されていることが多い。有名な薬の名前はロキソニン、ボルタレンがある。

  • 理学療法(物理療法、運動療法、コルセットなど)や代替療法(マッサージ、鍼、カイロプラクティックなど)は、症状の強さや状態によって実施する。

  • 理学療法や代替療法の効果の有効性に関しては、十分に示されている根拠はないが、効果が出ているものがあるのも事実である。


手術の適応

  • 保存療法を一定期間行っても改善しない場合

  • 足の筋力の低下(麻痺)が著しく強い場合

  • 排尿障害、排便障害が起きている場合は緊急手術の適応

※ 筋力低下が著しく強い場合、排尿・排便障害は保存療法では回復は見込めない


手術法


腰椎椎間板ヘルニアの手術法は様々あるが、椎間板切除術が多く用いられています。


8.予 後

  • 職場復帰率は、保存療法と手術では大きな差はない。

  • 職場復帰率は、術後3ヶ月で44.4%~100%、1年で72%~89.9%、8年で82.5%といわれている。

  • プロスポーツレベルにおいてスポーツ復帰率は約80%以上で、競技復帰時期はアスリートにおいては1ヶ月~2.4年と報告されており、一般的なスポーツ復帰時期は約2~3ヶ月(4週~6ヶ月)といわれている。

  • 緊急手術である足の著しい筋力低下や排尿・排便障害は、手術をしても約40%は残るといわれている。



まとめとポイント

  • ヘルニアとは、椎間板の一部が飛びだすこと

  • 腰椎椎間板ヘルニアは、画像所見(MRI)と症状が一致して診断となる

  • ヘルニアがあっても症状が出るかは必ずしもいえない

  • ヘルニアの大きさと症状が必ずしも一致するとは限らない

  • 腰椎の下部(L4/5、L5/S1)に好発する

  • 喫煙者に多い傾向がある

  • 立って作業しているより、座って作業しているほうが腰椎椎間板ヘルニアのリスクが高い

  • ヘルニアは小さくなるといわれている

  • 腰椎椎間板ヘルニアの基本は、保存療法である。

  • 足に著しい筋力低下(麻痺)、排尿・排便障害がある場合は緊急手術適応となる



参考文献

  • 腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン2021 改訂第3版(南江堂)



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