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【イベントレポート】ひるぜんアクションツーリズム'23大報告会
「ひるぜんアクションツーリズム’23」の集大成となる「大報告会」イベントを開催しました。本記事では2024年2月9日にco-ba ebisuで行われたパネルディスカッションにフォーカスしたイベントレポートをお届けします。ツアー参加者でもある樋口佑樹さんに執筆いただきました。ぜひお楽しみください!
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(イベントレポートここから)
バックグラウンドも居住地も異なる22名が
参加した「ひるぜんアクションツーリズム’23」
岡山県真庭市蒜山(ひるぜん)。
広大な草原が広がり、自然と人の暮らしが共存しているこの場所は、大山隠岐国立公園に位置する表情豊かなエリアです。2023年10月・11月に、蒜山を舞台にしたツアー「ひるぜんアクションツーリズム」が行われました。(ひるぜんアクションツーリズムの詳細はこちら)
そこには、バックグラウンドも居住地も異なる22名が参加。伝統文化であるがま細工体験や、蒜山の資料館の見学、現地の方からの説明を聞きながら草原を歩くなど。蒜山在住の方との交流を中心にしたツアーを通して、参加者それぞれが、その人ならではの眼差しで蒜山のことを知る機会となりました。
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首都圏だけではなく、岡山やその周辺を活動拠点する方も多く参加しました。
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多様な職種のクリエイター・ビジネスパーソンが混ざり、バランス良く混ざりました。
そして、2024年2月。「ひるぜんアクションツーリズム」の報告会が行われました。これから蒜山との新たな関わりをスタートする4名が東京・岡山に集まりました。それぞれのひるぜん旅から始まるアクションとは。
蒜山でのツアーを通して、各自が持ち帰った「はじまりのタネ」が次第に芽吹いています。本レポートでは、2/9のイベントで登壇した参加者が発見した蒜山の魅力や、蒜山との新しい関わりについてお届けします。
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現地でアテンドを担当した真庭市の担当者がコメンテーターとして登壇しました。
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とつさん「自然と繋がり直すこと、
人間同士が繋がり直すことじゃないか」
岡山県が地元であり、現在はデザイナー・アーティストとして活動するとつ ゆうさん。蒜山に訪れた理由も最初は運営メンバーとの繋がりによる軽い気持ちで参加したといいます。
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「地元の岡山をより知れる機会があるということで参加しました。好奇心での参加なので、特に考えてはいなかったんですよね。」
ツアー当日に持ち帰った蒜山のすすきは、家に飾ってあるのだそうです。
「かわいいなってことは尊いなということ、美しいなということ。これは好きな人を好きだと思うことと近いんじゃないかと思います。それはひとえに、その命と繋がることだと思うんです。」
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とつさんが始めるプロジェクトは、アーティスト活動の文脈で「蒜山」をモチーフにした作品制作や展示の実施、「蒜山」をテーマにした絵を描くワークショップを行うもの。展示のテーマにしたくなるほど、とつさんを魅了した蒜山はどのような場所だったのでしょうか。
「もともと自然の命と繋がること、自分の心と繋がることに興味があったんです。蒜山は草原や高原、生態系の魅力はもちろん、人と自然の関わり方が印象的でした。自然と繋がり直すことは、人間同士が繋がり直すことじゃないかとも思ってるんです。蒜山にはその根源的なものがあったように感じています。」
蒜山の自然にインスピレーションを受け、自身の表現活動に昇華するとつさん。これからどんな表現が生まれていくのでしょうか。
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正田さん「コンテキストがあること、それ自体が資産」
2人目は東京在住、現在は未開拓エリアを中心にホテルをつくるスタートアップを立ち上げている正田さん。仕事で月の半分は地方を巡る正田さんに、蒜山はどのように映ったのでしょうか。
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「最初は草原が広がっている景色がすごいとしか思ってませんでした。でも、ツアーを通して千布さんをはじめ地元の方とも話したり、資料館を訪れることで、蒜山をより深く理解することができました。草原を維持する難しさゆえのユニークさを知ったり、その土地に流れるコンテクストを認識できたのが良かったです。」
ホテル開発の候補地を探すときにも、表層的な美しさだけでない部分を重視するという正田さん。似たような景色が数多くあるなかで、その土地に流れるコンテキスト次第で旅の深みは変わるもの。そうしたコンテキストがあること、それ自体が資産だと正田さんはいいます。
「思想価値という言葉を使うことがあるのですが、目に見える景色だけではなく、その背後にあるコンテキストにも価値があります。蒜山でいうと、草原の景色の美しさを成立させている背景や草原と人がどのように関わって暮らしているかがコンテキストになります」
自分がホテル開発をするにあたっては、思想価値を大事にしたいですし、蒜山には豊富な思想価値があることが魅力だと思いました。」
その地に根付いたホテルをつくる。事業家が蒜山で見つけたのはビジネスの機会でした。著者も蒜山で感じた宿泊施設の課題。その解決の一翼を担うときが来るのが楽しみです。
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具体的にプロジェクトを始動しようとしている正田光希さん
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山焼きを繰り返して生まれる草原、隈研吾氏のCLT建築、復元された竪穴式住居など。
山下さん・渡邉さん「伝統文化が消えてしまうかもしれない、そんなとき私に何ができるのか」
山下さんと渡邉さんは株式会社レベルフォーデザインというデザイン会社で一緒に働く仲間。山下さんが岡山県出身だったこともあり、岡山↔️東京での二拠点生活を考えているときに本ツアーに出会ったのだそうです。
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そんな2人は自分たちの特技を活かして、蒜山との関わりを生み出そうとしています。
「色んな体験の中でも、特にがま細工がすごい楽しかったんです。だから今後どうにか関わっていけないかと考えたときに、2つのアクションが起こせそうだと思いました。」
山下さんと渡邉さんが取り組むプロジェクトは「ZINEづくり」と「B級品のアップサイクル」。ZINEとは、個人が出版する冊子のことで、本業であるグラフィックデザインを活かした関わりに挑戦しています。
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「東京に戻ってきて、がま細工について調べようと思っても、あまり資料的なものが見当たらなくて。知る入口をつくろうということでZINEづくりをしようと思いました。」
渡邊さんは、ツアー前から考えていた「持続可能性」や「自然との共生」というテーマに、がま細工がピンと来たといいます。
「がま細工は100年近くの間、材料の決まりや秩序を保ってきた伝統文化。かなり大変であるにも関わらず、それを維持してきた裏側には必ず人の力が必要です。それを簡単になくすのはもったいないし、個人的になくなってほしくないと思ったんです。だから、何かしらの形で残るZINEをつくりたいと思いました。」
本業を活かしたプロジェクトに取り組もうとしている2人。山下さんは地元への思いも、溢れています。
「岡山に貢献できることを探していました。そのとき出会ったがま細工。いつか消えてしまうこの工芸に対して、明確な解決策をつくれるわけではないけれど、このプロジェクトを通して、知ってもらう糸口になったらと思います。」
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草原が広がる蒜山で垣間見えた「自然と人との共生」
東京のイベント会場には、真庭市から2名のゲストにお越しいただきました。本プログラムの発起人のひとりである平澤さん(真庭市役所産業観光部
産業政策課)と、現地を案内してくれた千布さん(蒜山自然再生協議会)。
3つのプロジェクトはいずれも草原が広がる蒜山ならではのプロジェクトであり、その草原にこそおもしろさが秘められているといいます。
千布さん「山焼きをやめてしまったら、蒜山の草原の景観はなくなってしまいます。例えば、正田さんが草原の景観を活かすホテルをつくったとします。その売上の一部を地域の自然保護に支援する仕組みなどが生まれると、山焼きにかかる費用も工面できて持続可能になって、おもしろいのかなとも勝手に思っていました。」
平澤さん「やっぱり蒜山のユニークさって自然だと思うんですけど、その自然の先には人の暮らしがある。そのことが個人的に蒜山で1番おもしろいところだと思いますし、皆さんがそのことを感じ取ったからこそのプロジェクトですよね。」
自身も移住者として真庭市に引っ越し、今は行政職員として活動する平澤さんはこう続けます。
「ある企業の創業者が「経済は文化のしもべである」という言葉を仰っていました。まさに蒜山で起きているのは、これまでに培った文化や歴史がバックボーンにあるからこそ、それを活かして経済活動も生み出そうという状態だと思います。そんな活動をしっかり支援していけるよう頑張りたいですね。」
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企画メンバーから見る、今後が楽しみなプロジェクトは?
本プログラムの企画・運営はシェアードワークプレイス「co-ba」を運営するバ・アンド・コー株式会社。今回の登壇者以外にも新しい動きが生まれていて、その数は8つに昇るんだとか。「1-2個くらいプロジェクトが生まれたら良いと思っていたら、想像以上にプロジェクトが立ち上がってビックリしてます」と、運営メンバーの皆さん。イベントを終えた今、同じ問いを3名に投げかけてみました。
Q. 手応えがあった / これからのポテンシャルを感じるプロジェクトは?
奥澤さん(企画ディレクター)
すでにホテルの事業構想を持っていた正田さん。どの地域を選ぼうかというタイミングで参加してくださいました。
良い景色だからという理由だけではなく、その背後にある文脈を取り入れようと地域を見ている彼の考えに感動して。ツアー後に蒜山が候補となったのは、蒜山に暮らす人たちがその地に根付いているものを尊重している姿勢とマッチしたからだと感じています。
特に正田さんがイベントの中で「ツアーを通して、地域選定における考え方の解像度が上がった」と話していたことには、ツアーをやった手応えを感じたポイントでした。
一方、今日登壇した他の2つのプロジェクトは、本人たちも思いがけずゼロから生まれたプロジェクト。ひとときのコンセプトの「セレンディピティ」が体現されたもので、これからが楽しみです。
本間さん(コミュニティマネージャーとして企画に参加)
元々、アーティストと相性が良さそうと思っていたこともあって、とつくんに声をかけていました。蒜山での活動における重要なテーマのひとつに「セレンディピティ」があります。なんとなく来たとつくんが、偶発的に創作意欲を掻き立てられて自己表現に落とし込むのはまさにその言葉を体現したものだと思います。
ただアートに昇華するだけでなく、蒜山の根底に流れる「人と自然の共生」をテーマにアートで取り組んでくれたことも嬉しかったです。
展示があることによって、蒜山に行くきっかけが生まれる人も出てくると思うので、新しい「セレンディピティ」が生まれることにも期待しています。
荻野さん(企画ディレクター)
今日登壇してくださった3つのプロジェクト以外にも、紹介しきれていない新たな動きが生まれています。その中で特に気になるのは「半人前プロジェクト」はおもしろいなと思いました。
山下さん・渡邉さんが興味を持った「がま細工」ですが、本格的に後継者になるには、実は5〜10年くらいかかるんだそうです。この時代において、そんなにも長い期間を修行に費やすというのはよほどじゃないと難しい話。
今回のツアーでがま細工の体験をしてもらったところ、本業にする覚悟は持てないけど、もっと踏み込んでやってみたいという方がいるんです。そんな方が半人前の状態でも伝統文化に関わっていけるようなプロジェクトが立ちあがろうとしています。
がま細工に限らず、現存する伝統文化の多くが後継者不足の問題に頭を抱えています。国としても問題意識を抱える後継者不足を解決する仕組みとしても、ポテンシャルを感じました。それが蒜山のツアーを通して生まれようとしていることは、とても楽しみです。
まとめ
本ツアーをきっかけに、今回のイベントで登壇した方のみならず、水面下でも新たな取り組みが生まれています。
ひるぜんアクションツーリズムはまだまだ始まったばかり。これから各参加者によるプロジェクトはどんな歩みを辿っていくのでしょうか。
なお、本イベントの運営協力にも、ツアー参加者が多数関わりました。勝股淳さんがファシリテーション、受付や設営サポートに成田さん・西山さん・濱田さん、本レポート記事の執筆は私樋口が担当しました。そんな関わりしろもまた、蒜山や本プログラムの魅力です。
ツアーに行って終わりではない「はじまりの旅」の現在地。
次の「はじまり」を踏み出してみませんか。
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起点となったシェアオフィスの名称「ひととき」と蒜山の山をイメージしたポーズで。
(イベントレポートここまで)
TEXT:樋口佑樹
様々な企画や制作ディレクションの仕事を行っています。個人としては全国を縦断中で、ローカルの活動に触れるということを1年半に及び行ってきました。本イベントでモデレーターを務めた勝股さんと一緒に「sou」というクリエイティブユニットで、Web制作などをしています。
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