はじまりの虫撮り -さらば寝正月2023-
へい、らっしゃーい。奥のカウンター、どうぞー!
はいはい奥の席ね。あ、向かいから人が。避けないとね。右にそそくさ。
おっと、あなたも同じ方向に避けますか。じゃあ逆に。
おっとっと、気が合いますね。
すみませんと笑いながら譲り合うこと3回。
鏡でした。
振り返ると、カウンター席から怪訝な顔で見つめてくるご夫婦。
「わざとですー!」とか言ってみたけど、そのままの引きつった顔で
目の前のラーメンに視線を戻され、結局ぼくの席はその隣。
お互い地獄の時間を過ごしました。そんな年末。
こんにちは、昼杉です。
時節柄、世間は浮かれているようですが
こちとら何回も年越しを経験しているんでね。
慣れたもんですよ。
正月は独りで近所の山を散歩してきました!!
いや、別にね、集まる人がいなかったとかね、そういうんじゃねーし。山に昨年のお礼と、今年もよろしくっていう宣戦布告をしに行ったわけですよ。
ざわざわとした風と、研ぎ澄まされた冷たい空気。こりゃ山も歓迎してるわ。レンズが冷たい。すごい触りたくない。写真撮るのしんどい。もう帰りたい。
あと全然、虫がいない。
年末に寄った喫茶店を思い出す。100円入れてレバーを引くと球がクルクル回って巻物みたいな、おみくじが出てくるアレ。結果、「待ち人、来ず」。俺は知っているんだ。この世界には数えきれないほどの人間がいる。人間はいるんだ。ただ運命の人がいないだけ。
本当は気付いているんだ。虫はいないんじゃない。見つけられないだけだって。虫を理解すれば見つけられる。そうでなくとも隈なく探せば絶対いる。でも己の力不足を認めてしまえば心が壊れてしまうので、冬だからいない。仕方ないと。そう思うしかないのだ。
彷徨うこと小一時間。
岩を覆う地衣類のなかに潜んでいました。コマダラウスバカゲロウ。
みなさまご存知、アリジゴクのなかまです。
山で岩肌にベッタリくっついている人がいたら、だいたいこの子を探しています。話しかけると岩肌に円を描くように指をさされて「あ、このあたりに虫がいるんですけど分かります?」ってクイズを出されるので暇だったら付き合ってみてください。
地衣類に紛れて目の前を通った獲物を、その凶悪な顎で捕えるかっこいい虫ですわ。捕食シーンを眺めてみたい虫ナンバーワン!
冬の定番、虫のタマゴと死骸探しです。
1-2枚目はクヌギカメムシの卵。樹表の凸凹の隙間によく置いてある。ゼリー状でちょっと怖い。でもよく見ると生えているピロピロが可愛い。なにこれ。
ぼくは植物、特に木の違いが全く分からないので、クヌギカメムシの卵があれば、「あ、これクヌギなんだ」ってなります。クヌギ以外にも産卵するのかもしれませんが、それしか見分ける術を知らないのです。
5mmないくらいの甲虫の死骸。なんの仲間かも分かりませんが寒い時期の貴重な被写体なのでパシャリ。ずんぐりとしていて可愛らしい見た目です。
虫の死骸を語るうえで外せないのが冬虫夏草。
虫に生えるきのこです。写真はミカドオオアリに生えるイトヒキミジンアリタケ(多分……)。ミカドオオアリは夜行性で、夏の夜にある一本の木に行って列を成して動き回っているのを見るのがなんとも楽しい。蟻の行列って無限に見ていられるよね。そして樹表を探ると何匹ものミカドオオアリが木にめり込んで死んでいるのが散見されます。活き活きと団体行動に勤しむ姿と比べて、なかなかに異質な光景ですが、こちらも見入ってしまう自然界の神秘です。
翅がない蛾のフユシャクとか
越冬するカマキリ、サツマヒメカマキリとか
ゾウムシとかミミズクとかいないかなーって
あっちいったり、こっち行ったりと。
やっぱり蜘蛛なんよ。
彼らは24時間365日、いつだって歓迎してくれる。適応力が高いのか、個体数が多いのか、いつだって写真を撮らせてくれる。ありがとう。
最後にニョロニョロした可愛いやつを発見して癒されるなど。
なんだかんだで充実した年始の撮影でした~!
今年は色々動いて行きたいと思うのでお付き合いくださいませ。
明けましておめでとうございます。
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