見出し画像

怖すぎ! ほんとうにあった話    ~攻撃を受けたときのかわし方

昔コンパを企画したときのことです。

2対2で楽しく飲んでいたのですが、友人の女の子が連れて来たもう一方の娘(B子さん)が手にしていた携帯が鳴りました。表示を見てB子さんの表情が曇りました。

「あ、かかって来た・・・・・・」

聴けば最近知り合った男性からしつこくストーカーのように電話がかかって来るといいます。断ろうにも断れず、飲み会の席上で延々話に付き合っていました。

強く出れば相手は感情的になりそうです。かと言って弱腰だといつまでも話は終わりそうにありません。

「だから、いまは話せませんって言っているでしょ」

僕たちは顔を見合わせながら、もうひとりの娘のA子さんと「困ったモンですねぇ」と言い合っていました。

20分くらい過ぎた頃でしょうか。このままではいつまで経っても話は終わらず、1時間くらい行きそうな勢いです。

粘着性の強い相手の男性の攻撃に付き合うB子さんも大変だなあと思いつつ、どうすれば相手の攻撃を回避できるか、考えていました。

「あ、どうも! いや~いまいろいろ大変でね、オツカレ! いまみんなで寿司食ってんの とか言ったらどう?」

友人の男とA子さんは思わず吹き出しました。あまりに素っ頓狂な返しでツッコミづらいからです。

僕たち外野の雑談をよそに、B子さんはまじめに相手していました。たしかにあまりにふざけ過ぎると、逆ギレされかねません。

けれどもこうした相手に、まともに相手していたら、いつまでも関わられます。かといって無視したり、感情的になると今度は攻撃的になります。

いったいどうしたらいいのでしょうか。

大事なことは、相手の状態・状況を見極めること。こうした場合当事者では判断が付かないことも多いので、ある程度見識のある人に見立ててもらうことです。

当時の僕はまだカウンセラー業なり立てでしたが、セミナーアシスタントで訓練していたので、人の業(ごう)や反応・行動パターンはある程度読めていました。そのため、直接話していなくても、相手の言動はある程度予測できたのです。

「そういう相手にはあんまりまともに応対しないほうがいいよ。むしろ逆に適当にかわすくらいの太極拳のような返しがいいよ」
と伝えたのです。

そう伝えてしばらくした頃、相手もほとぼりが冷めたようで(ある程度相手してもらえたせいか)電話を切ってくれました。

あるエステティックサロンでのできごと

これはまだK-POPとかが流行るずいぶん前、まだ浅黒い男がカッコイイとされていた時代です。20代になった私は、ヒゲの濃さが気になっていました。

エステと脱毛を兼ね、エステティックサロンに行くことにしたのです。

エステに行くと、話好きな私は、むしろ美容よりも話に熱中していました。地方から東京に出ると、全国チェーンのその店には都心にもいくつか店舗がありました。

通うようになると、話すことが好きで話し相手となる人といろんな話で盛り上がっていました。笑わせて喜んでいた私は、カーテン越しの向こうで、何やら怒っている男性と施術師の女性との間でもめています。

「だから言っているじゃないですか! もっとやってくださいよっ!」
「ダメですっ! これ以上やると肌を痛めますっ!」

「そんな言って逃げるんですかっ! もっと強くやってくださいっ!」
「だからできませんって」

まったくの平行線、押し問答です。男性はさぞかし濃いヒゲが気になるのでしょう。まるで自分を痛めつけるように「もっともっと」と訴えていました。

しかし一方の担当する女性は、彼のことを気づかい、そんなに強めてやっては肌のダメージが大きく、できない旨をしきりに言っていました。

ふたりはカーテン越しに押し問答をしながら、やり合っていたのです。
「大変だねぇ・・・・・・」と自分の担当の女性に話しかけると、「そうなんです、あの方、いっつもあんな感じなんです」と言います。

それから何度か後、くだんの男性を担当した女性に当たりました。私が冗談で彼のマネをして「もっと強くやってくださいよっ!」と言い、「大変でしたね~」というと、彼女、思いも寄らない返答をしたのです。

相当困らせられているはずの彼女の口から、まさかそんな言葉が出るとは――。

さて、なんという返答だったでしょうか?

A いや、もうホトホト参ってますよ。
B ずっと言い合っていたら最近来られなくなったんですよ。
C いや、けっこういい人なんです。

答はC。
ナント困らせられている筈なのに彼女、彼のことを「いい人」だというのです。

驚く私は彼女に尋ねました。
「どうしてあんなにからまれているのに『いい人』なの? (一応東京弁)」
「すごく気づかいのあるいい方なんです。ただちょっと脱毛に関しては一度に徹底的にやってほしいというこだわりがあられるので」

あぁ、なるほどと腑に落ちました。彼女は彼の攻撃に付き合うことで一定のサービスをしていると自負していたのです。需要と供給のバランスが合っている、そう思いました。

病院へ呼び出す手のかかる女性の相手をしていたK子さん

これはまだセミナーをしはじめたかけ出しの頃の話です。
参加者として決まっていたC子さんは友だちのK子さんを連れてきました。

K子さんはセミナーの最中、付き添いみたいな感じでずっといました。行儀のいいお客さんのような感じです。

「せっかく来てくれたのだから、何か質問とかないですか?」と尋ねると、しばし考えた後、こんな質問をして来たのです。

「いつも具合が悪いと言って呼び出す友だちがいたんです。しょっちゅう電話が鳴って『いますぐ病院に来てっ!』って言って。けど言ってみたら本人ケロっとしていて元気なんです。むしろ私のほうが具合悪いくらい・・・・・・。

これって一体何なんでしょうか?」

この話を聴いて、あるエピソードを思い出しました。いつも体調が悪いとお母さんに訴えていた女性が、ある日のこと。お母さんが看護に疲れ果て、亡くなった途端元気になって病院を退院したという話です。

私は、セミナーでもよく「私ダメです」と訴えて、多くの人の気を引く人を見て来たし、いっつもそういう人に「大丈夫~?」と声をかけていたほうでしたから、K子さんの引っかかっているパターンにもすぐ気づいたんです。

未熟だった当時の私

しかし当時の私はまだコーチのレベルが低く、相手の性格や状態に合わせることができませんでした。理論や理屈のほうが先に行っていたのです。

「あぁ、それは友だちの引っかけゲームに引っかかっているんですよ」
「どういうことですかっ?」

「本当はそこまで悪くないのに、K子さんを呼んで構ってもらうために、体調が悪いと訴えているんです。それを構ってゲームと言うんですよ(笑)」

「そうだったんですね。なるほど・・・・・・」

K子さんは疑問が解けて、納得した。そう思っていました。ところがそうは問屋が卸さなかったのです。

セミナーが終わり、懇親会も盛り上がって大満足で家路に着いた私は、翌日、思わぬひと言を浴びることになったのです。

「あんなこと言われたくなかった。
私は友だちを想ってやっていた」

連れて来た友人を通じて聴いた参加後のコメントは、アンケートで書いていた「気づきがありました! ありがとうございますっ!」とは違っていました。家に帰り、我に返って考えてみると、私から言われたひと言は、自分のやっていることを否定された気がして、腹が立ったのです。

参加したくて参加したのではなく、友だちが誘うから着いて来ただけ。質問があるかと聴かれたから答えたまで。それなのにそこまで自分のやっていることを否定しなくたっていいじゃない。そう思ったってしかたありません。

いまでなら、そんな粗いアドバイスはしません。参加した方のタイプや状況に合わせて話します。あくまで参加する人の味方となって話すように努めます。

しかし当時は未熟でした。だから事の道理をすぐに察知できる自分はスゴイんだと錯覚していたのです。言い過ぎとも思えるアドバイスは彼女の薬にはならなかったのです。

加害者と被害者、狙われる人、構わせる人、構う人

一見、被害者となる人は、理不尽な攻撃を受けているように思えます。たしかに言われもない屁理屈を立てられ、いきなり攻撃してくるケースもあります。

しかし一方で、わざわざ攻撃のターゲットに自らなってしまう人もいます。コンパのB子さん、エステ店の女性、セミナー参加者のK子さん・・・・・・彼女らは、相手に気づかい、思いやりを持って接しているんです。

しかし時として損をしてしまうのは、その思いやりややさしさをいいように利用されることがあることです。善意でやっていることが、相手のワガママに付き合わされている。そこまで構う必要はないのに構わせられているのです。

付き合わされ、構わせられていた私

なにを隠そう私自身が「私ダメ」というか弱そうに見える女性に付き合わされ、構わせられる人だったんです。何時間も電話に付き合い、何か月も構っていた。しかし何にも相手は変わらなかったんです。

「ひろくん、人助けもいいが、ホドホドにしておかないと。あんまりやり過ぎると血を吸われるよ」

当時関わっていたセミナーの師から言われていたのですが、自分が痛い目に遭うまで、何度も同じパターンにハマっていました。

「ひろさんだけですよ、そんなことを言ってくれるのは――」
「ひろさんだけです。やさしい・・・・・・」

そう言われると、この上なくうれしい。しびれるんです。魂が喜ぶような気がして、人をひとり助けたような気がしていたんです。

ドラキュラのような笑みを見せたM女史

それは仕事場で上司に責めに責められていたM女史の話です。あまりに理不尽でかわいそうに思えた私は、M女史を誘い、ご飯でも食べに行きましょうと言いました。「ありがとうございます~」とほほ笑む彼女の表情を見て、「よかった」と胸をなで下ろしました。

がしかし、話はそこで終わらなかったのです。

ホテルのラウンジレストランにて

ビールを乾杯し、ほどよい酔いを覚えた私たちは、2次会に行くことにしました。「わたし、行きたい店があるんです」というので、タクシーに乗り、お目当ての焼き鳥・ご飯やさんに行きました。

日本酒が好きというので、店主お勧めの日本酒を飲みほしていくと、M女史は日ごろやつれていた顔がほんのりと赤く染まり、イキイキとしはじめました。私は日ごろの大変さをねぎらい、気づかいました。

「いろいろ大変やねーMさんは」
「そんなこと言ってくれるの、ひろさんだけです」

私はアウシュビッツで一人助け出した看守のように、人助けができたと思いました。ねぎらいのハグをし、その日は終えました。

ところがその日の夜、首のところが重たくなり、どよ~んとしました。寝ていてうなされたのです。

M女史が溜めていた負の想いを一手に背負ってしまっていたのです。
いまでこそわかりますが、当時の私は、まるでツルの恩返しよろしく、自分の羽根をむしりながら人助けをしていたのです。

以来、何度も同じことをし、ダウンし続けたある日のこと。その後に出逢った師に言われました。

「そんなことやっていたらきみ、命持ってかれるよ」

聴けば、癒しの仕事をしている人、感受性の強い人に多いそうです。相手の負の想いを全身に浴び、エネルギー交換してしまう。鈍感で感じない人にはないダメージを受けてしまうのです。

それ以来私は、少しずつ、身のこなし方、かわし方を覚えて行きました。ダメージを上手にかわし、相手を動かす一滴のタレを落とすようになっていったんです。

『断り方の極意』~NOと言える技術とことわりの作法

35年の学びを7年かけ執筆

『断り方の極意』https://t.co/kuApYRJRHI  では、攻撃を受けたときの避け方、かわし方はもちろんのこと、自分の手を使わずにこちらの要望を通していく裏技まで紹介しています。

得てして人は自分のチカラで何とかしようとします。攻撃を受けたときも人に迷惑をかけずに片づけようとします。

それに相手の攻撃は一筋縄ではいきません。ここで挙げた事例のように、水面下で忍び寄って来ることも多いです。

自分が自覚したうえでやっているのならまだいいのですが、ほとんどの場合、自覚がないまま無意識のままやっていることが多いのです。

人生の道理、人の反応・行動パターンが読み解ければ、ものごと・人生はカンタンです。もしもきょうの話に思い当たることがあったら、フォローし、少し記事を読んで行ってみてください。きっと何らかの気づきがあり、私のようなスーパー遠回りな人生を、歩まずに済みますよ。



この記事が参加している募集

自己紹介

仕事について話そう

仕事のコツ

with 日本経済新聞

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?