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「わたしのきもち+すみっコぐらし《第7話》~キモッチ昔ばなし『桃太郎』~とかげとすみっコたちが残り物島に集結の巻~」

少し昔のお話です。あるところにキモッチじいさんとアヒルばあさんが住んでいました。

キモッチじいさんは庭でたきぎを割り、泳ぐことが得意なアヒルばあさんは川に魚を捕まえに行きました。

アヒルばあさんが川で魚を捕っていると、川上の方から どんぶらこ どんぶらこ と何かが流れてきました。アヒルばあさんが近寄ってみると、それは大きな大きな桃でした。
「おじいさんは桃が好きだから、持って帰ればきっと喜ぶでしょう。」
そう思ったアヒルばあさんは大きな桃を背中に乗せて帰りました。
 
「ただいま帰りましたよ、おじいさん。」
「おかえり、おばあさん、何と立派な桃だこと。それはどうしたんだい?」
キモッチじいさんはアヒルばあさんが抱えてきた桃を見ておどろきました。

「この桃は川上から流れてきて、私が拾ったんですよ。」
「川で桃を拾うなんて不思議なこともあるものだなぁ。でもおいしそうだから、さっそく割って食べてみるとしよう。」

キモッチじいさんが割ろうとした途端、急にパカーンと桃はひとりでに割れました。

そしてその桃の中からは得体の知れない生物の赤ちゃんが現れました。
「おやまぁ、かわいいこと。」
アヒルばあさんがその子に話しかけると、
「アヒルばあさん、キモッチじいさん、こんにちは。ぼくはとかげだよ。」
と立派に自己紹介してみせました。

「おどろいた。まだ赤子だというのに、しっかりしている子だな。おぬしはとかげの赤ん坊だったのか…。」
「おじいさん、私たちには子どもがおりませんから、きっと神さまが恵んで下さったのですよ。この子を私たちで育てましょう。」
「うむ、そうだな。この子はわしたちの宝物だ。名前を考えてあげよう…桃から生まれたから桃太郎という名前はどうかな?」
「ぼく、桃太郎って名前大好き。ありがとう、キモッチじいさん。」
こうして桃から生まれたとかげは桃太郎と名付けられ、キモッチじいさんとアヒルばあさんに大切に育てられました。

桃太郎はあっと言う間にたくましい大人に成長しました。
「キモッチじいさん、アヒルばあさん、ぼくは旅に出ようと思うんだ。」
「旅?突然どうしたんじゃ?」
「桃太郎、ずっと私たちの側にいてちょうだい。」
大きくなった桃太郎が突然旅に出ると言い出したものですから、キモッチじいさんとアヒルばあさんは戸惑ってしまいました。

「広い海のどこかに、残り物島という島があって、その島に住みついている鬼たちが悪さをしていると、耳にしたんだ。だからぼくが鬼を成敗しようと思って。」
「なるほど…そういうことか。残り物島のうわさなら、わしも聞いたことがある。」
「鬼退治なんて心配だわ。でも桃太郎から決めたことなら、応援するから。」
鬼がいる残り物島に行くと言い出した桃太郎のために、アヒルばあさんは桃印のハチマキと正義の剣を、キモッチじいさんは精のつく食べ物を用意してあげました。

「きーもちもちもち力持ち~おこしにつけたきなこもち~♪」
キモッチじいさんはオリジナルのきなこもちの歌を歌いながら、たくさんのきなこもちを桃太郎のためにこしらえました。

「きなこもちの串は剣になっているから、食べた後もきっとおまえの役に立つはずだよ。」
「私があげた正義の剣は、本当に正しいこと、必要なときしか威力を発揮しない不思議な剣なのよ。桃太郎のお守りにしてね。」

「キモッチじいさん、アヒルばあさん、ぼくのためにいろいろありがとう。きっと元気に帰ってくるから、心配しないでね。」
「桃太郎、達者でな。鬼退治なんてできなくてもいいから、きっと帰って来るんだぞ。」
「桃太郎、どうか無事に元気でね。アヒルばあさんはここでずっとあなたの帰りを待っていますよ。」
二人に見送られた桃太郎は残り物島を目指して、剣ときなこもちを抱えて勇ましく歩き始めました。

海に続く山道を歩いていると、しろくまと出会いました。

「しろくまくん、きなこもちをあげるから、一緒に残り物島に行かないかい?」
「残り物島?どこかで聞いたことがあるな。いいよ、ぼくも一緒に行くよ。きなこもち、ありがとう。おいしいな。おや、この串は剣になっているんだね。便利だな。」

桃太郎がしろくまと一緒に歩いていると、今度はぺんぎんのような生き物と出会いました。
「きみは…ぺんぎんくんかな?ぼくたちと一緒に残り物島に行かないかい?きなこもちをあげるから。」
「そう、ぼくはぺんぎん?だよ。残り物島には鬼がいると本で読んだことがあるな。少し怖いけど、興味があるからついていくよ。自分の正体を知る手がかりもつかめるかもしれないし…。」

桃太郎がしろくまとぺんぎん?と三人で歩いていると、今度はまるまる太ったねこと出会いました。
「ねこくん、一緒に残り物島に行かないかい?おいしいきなこもちをあげるから。」
「きみが持ってるきなこもちを全部くれるなら、行ってもいいよ。」
食いしん坊のねこは桃太郎が持っていた残りのきなこもちをぺろりと平らげました。
「ねぇ、何かもっと食べ物はないの?」
食欲旺盛なねこのために桃太郎はアヒルばあさんがこっそり持たせてくれたものも差し出しました。
「仕方ないな。とっておきのきなこもちのチョコもあげるよ。」

「うぁーこのきなこもちのチョコおいしいね!」
ねこはきなこもちのチョコもあっと言う間に食べ尽くしてしまいました。

こうして桃太郎、しろくま、ぺんぎん?、ねこの四人は海に出ると、残り物島を探しながら泳ぎ始めました。桃太郎としろくまとぺんぎん?は泳ぎが得意でしたが、太っているねこは泳ぎが得意ではなく、三人が交代でねこを背負いながら泳ぎました。

しばらく泳いでいると、残り物島らしき不気味な島が見えてきました。
ゴミや食べ残しが集まっているような薄汚れた島でした。
島に上陸した桃太郎は言いました。
「悪さをしている鬼はどこだ?出てこい!ぼくが成敗してやる。」

すると岩陰から何者かがぬぅーっと桃太郎たちの前に現れました。
「おまえたちは何者だ?私はこの島の鬼と呼ばれている、とんかつだ。」
「そして私はえびふらいのしっぽよ。」
鬼というわりに、えびふらいのしっぽという女の子よりも小さなとんかつでした。

「おまえがこの島の鬼か!ぼくが倒してやる!覚悟!」
桃太郎たちが二人に襲い掛かろうとすると、とんかつとえびふらいのしっぽが止めました。
「ちょっと待ちたまえ。私たちは何も悪さはしておらん。むしろ悪いのはおぬしたちの方ではないか。」

「どういう意味だ?」
きょとんと不思議になった桃太郎たちにとんかつは悲しい話を聞かせました。

「この島は…おぬしたちが海に流した残飯やゴミが堆積してできた島なのだよ。油っこいから硬いからとぜいたくを言って、私たちのような揚げ物は衣やしっぽを残されてしまう…。残されることがなければこの島は生まれなかったのだよ。他にもペットボトルや、お菓子の袋など、いろんなものがこの島に漂着しているんだ。毎日たくさんの食べ残しやゴミを出して、この島を作ったのはおぬしたちの方ではないか。残されたものや捨てられたものたちの中には怨念をもつものもいて、そういうものたちが悪さをしているだけだ。」
「ちなみに私がつけているお面もゴミになって流れ着いたものをきれいに洗って使っているのよ。素敵でしょ?」
えびふらいのしっぽは得意気に言いました。

 とんかつとえびふらいのしっぽから話を聞いた桃太郎は、残り物島にたどり着いたゴミたちが気の毒になりました。
「なるほど…そういうことだったのか。きみたちの話が本当なら、残飯やゴミを海に流してしまうぼくたちの方がたしかに悪い。すまなかった。けれど、悪さをするものたちのことはどうにかしてほしい。食べ残しやゴミを減らすと約束するから。この正義の剣をきみたちにあげるよ。きっとこの島を変えるのに役立つはずだから。」
桃太郎たちはそれぞれが持っていた剣を二人に差し出しました。

「うむ。食べ残しやゴミを減らす気持ちがあるなら、悪さを企てているものたちを食い止めよう。ありがとう、こんなにたくさん…立派な剣だな。」
「じゃあ、私はこのお気に入りのお面をあなたたちにあげるわ。友情のしるしに。」
桃太郎たちから剣をもらったえびふらいのしっぽは代わりにきつねのお面をあげました。
「お気に入りのお面をありがとう。大事にするね。」
「今度はゆっくり遊びに来るといい。それまでにこの島を少しでも変えるから。」
「そうね、またみんなで来てね。この島にはきっとお花も咲かせるから。」
「ありがとう。きっとまたみんなで来るよ。ぼくらもゴミを減らすようにがんばるから。」
こうして桃太郎たちは鬼と恐れられていたとんかつとえびふらいのしっぽとは戦うことなく仲良くなり、お互いに世界を変えると約束して、残り物島から離れました。

「ぼくはキモッチじいさんとアヒルばあさんの待つ家に帰るよ。みんなも一緒に来ないかい?」
桃太郎から誘われた、しろくま、ぺんぎん?、ねこも桃太郎の家に向かいました。

「おかえり、桃太郎。元気そうで良かった。残り物島で鬼退治は済んだのかい?」
「おかえり、桃太郎。帰ってきてくれて安心したよ。その子たちはどちら様だい?」
「ただいま、キモッチじいさん、アヒルばあさん。旅の途中で出会ってお供してくれた、しろくまくん、ぺんぎん?くん、ねこくんだよ。友だちになったから、うちに招待したよ。」

「そうだったのかい。みなさん、桃太郎を助けてくれてありがとう。」
「ところで鬼はどうだったの?やっぱり手強かったかい?」
桃太郎はとんかつとえびふらいのしっぽから聞いた残り物島の話をキモッチじいさんとアヒルばあさんに教えました。
「なるほど…そういうことだったのかい。残り物島ができてしまったのはわしらのせいだったとは…。」
「私たちが食べ残しやゴミを減らさないと、残り物島に流れ着いてしまうものたちがかわいそうですね。桃太郎、残り物島に行って、話を聞いてきてくれてありがとう。」
「そうだな、桃太郎が行ってくれたおかげで、真相を知れて良かったよ。わしたちがゴミを出さないように努力しないとな。」

こうして桃太郎と呼ばれたとかげ、しろくま、ぺんぎん?、ねこが残り物島に行ったおかげで、鬼と恐れられていたとんかつとえびふらいのしっぽから話しを聞き、みんなが暮らしを改めた結果、食べ残しやゴミは減り、残り物島には花や木々が生え、かつて恐れられた島は自然豊かな美しい島に生まれ変わったということです。めでたし、めでたし。

<出演>
ナレーション&おじいさん…キモッチ
おばあさん…アヒル
桃太郎…とかげ
犬…しろくま
猿…ぺんぎん?
キジ…ねこ
鬼たち…とんかつ&えびふらいのしっぽ

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