見出し画像

繊細なバランス感覚で設計された、豊かな“関係性”のデザイン【観察スケッチ】

アーキテクチャーフォトのサイトを見ていて、なぜか強烈に印象に残った、神戸のアトリエ兼住宅建築“hat house”。建築家の阿曽芙美さんが行った空間デザインの具体的にどこに魅力を感じたのか?分析するために観察スケッチを行いました。

画像6

画像2

インスタグラムで観察スケッチのメイキング動画を発信しています。こちらもよろしければご覧ください。

インテリアのスケッチは外観の5倍くらい難しい。笑
(家具や小物など細々したもののパースや配置取りに苦しむから)

書きたい空間をうまくスケッチに落とし込めなかったので写真を多めに用いて解説していきます。😭

画像4


写真はアーキテクチャーフォトのサイトから引用させて頂きました。阿曽さん本人の解説も載っているので、気になる人はリンクから是非覗いてみてください。

◼️小径材を使った細やかなトラス梁で空間を住空間を彩る

画像3

画像7

外壁と大屋根を基本的な構造として建物をふわりと覆っているけど、内部では30×60mmの小径材でトラスを組んだ梁を細かく使って“人の暮らしのスケール”に沿った軽やかなリズムを構成しているのが最初に印象に残ったポイント。

トップライトや木組みが頭上にゆらゆら浮いている空間は、賃貸や分譲のマンションではできない手法で、天井高が確保できて屋根もデザインできる戸建てだからこその設計かも。
白いクロスと照明しかない空間よりも、ほど良い情報量があってゆったりとした読書や食事が出来そうな空間。

画像5

天井裏の木組みトラスは外観からは見えないので、外と中で印象がガラッと変わる。扉をくぐる前と後で気持ちの切り替わりが生まれそう。

◼️巧妙な高さと形に設計された間仕切り壁

画像1

また、天井までは届かないけど、人の活動を区切ることができる高さの間仕切りを檜の合板ポリカーポネート乾式間仕切りを使ってアーチの形状でくり抜くことで、緩く繋がる有機的な空間の分け方をしている。

天井まで閉じているわけじゃないから、隣の音や空気は共感できる。四角形ではなくアーチで分けられているから、“扉”よりも“穴“という感じでより柔らかくつながることを意識してそうだと推測。
アーチの形状や開ける位置、素材なんかはかなり気を使って設計したんだろうな・・・と勝手に尊敬。

画像9


開口部は自由に穴を開けられる・素材を変えるとなった瞬間にすごくセンスが求められるパーツに変貌してしまうと大学の卒業制作をやっている途中に気づき、僕はアーチ形状の開口部を諦めた経験があります。

画像9

大学の卒業制作では開口部のたくさんある建築を設計しましたが、アーチ形状の窓は途中で諦めてしまいました。

画像10

画像11

◼️屋外要素を用いた“中間領域”の設計

画像12

部屋と部屋の間にコンクリートの床やブロックで小さな空間を作り、室内部に擬似的な屋外を作ることで、アトリエ機能と住宅機能の間の関係をうまく取り持つパーツとして機能させてる。

画像13

コンクリートだけでなく植栽もうまく配置されて、ピロティみたいな雰囲気が階段周辺に生まれてる。異なる機能を行き来する中で上手く気持ちの切り替えができるように屋外的な要素を挟む考え方を採用したのかなと推察。

◼️まとめ

小さなトラス構造の梁やアーチ開口の間仕切り、屋外要素を中間領域に転用する設計手法は、優れた建築家が持っているデザインのバランス感覚で丁寧に空間の関係性や行為のあり方を解いていった結果なのかも。

画像14

自分が過去に諦めたアーチの形状をうまく使っていること以外にも、部分部分で生まれた“小さな最適解”の集合体が全体像として大胆な空間に魅せている点が、僕が異常に惹かれた原因なのかもしれないです。

この記事が参加している募集

習慣にしていること

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?