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東京23区の道を方角別に集計してみた

都市の街路を方角別に集計した表が話題になった

下図は、世界100都市の街路ネットワークの方角や、接続性、粒度、エントロピーを調査した論文の表で、それぞれの都市がどういった街路ネットワークを持つかを表している。

具体的には、どの方角を向いた街路が多いかを円状のヒストグラムで集計したもので、グリッド型の都市ほど、ヒストグラムのグラフが一定の方角に集中する傾向にある。特に、東西南北に成形された都市(下図だと北京やシカゴ、バンクーバー、ワシントン)はヒストグラムの棒グラフが東西南北に集中している。一方、成形された都市でも東西南北から少し傾いた位置で街路ネットワークが形成されている都市(メルボルンやメキシコシティ)もあり、その方角にも特徴が表れている。他方で、ロンドンやローマといった都市は、全方向に街路が張り巡らされていることから、ヒストグラムの棒グラフが円状に近い形をとっている。

図1 世界100都市の街路ネットワーク

これを23区ごとに各区ごとに集計したらどのような結果になるのか?

上図の論文では、pythonのosmnxパッケージを用いて、OpenStreetMapの街路データを抽出し、pythonで円状ヒストグラムを作成していた。一方で、今回の解析では街路データはosmnxパッケージからxmlファイルで抽出、保存し、Rで解析およびヒストグラムの作成を行った。

解析を行って感じたのは、街路パターンは23区の大まかなエリアごとに特徴がみられること。そのエリアを通る鉄道路線や成り立ちにも影響を受けていると推測され、非常に興味深い結果となった。

1-1 円状型の区(都心部)

都心部の以下の区は、街路パターンが比較的全方角に発散しており、ヒストグラムの棒グラフが円状に近い形となった。例として、渋谷区の街路ネットワークを図3に示したが、全方角に街路が張り巡らされており、ヒストグラムの特徴がその特徴をよく表しているといえる。そして、文京、渋谷、豊島の各区に共通するのは、比較的起伏に富んだ地形で坂が多いことである。その地形的要因が、地形に沿った街路の整備を促し、結果的にやや無秩序な街路ネットワーク構成につながった可能性も窺える。

図2 円状型の区のヒストグラム(都心部)


図3渋谷区の街路ネットワークとヒストグラム

1-2 円状型の区(城南エリア)

一方、上記の都心部3区に加えて、下記の城南エリア4区も比較的全方角に街路が張り巡らされている区といえる。特に、都心に近い目黒、品川の両区はその傾向が大きく、起伏が大きく、山手の比較的古くから存在する市街地の街路パターンがグリッド型ではないことを示している。


図4 円状型の区のヒストグラム(城南エリア)

2-1 十字型の区(城東エリア)

城東エリアの区は、街路パターンがグリッド型(碁盤目状)になっている地区が多く、ヒストグラムが4方向(東西南北、または東西南北をやや傾けた形)に伸びている傾向にあった。台東区もその典型で、やや東寄りに傾いた形で、街路が碁盤の目を基本に形成されていることが街路図がらもよくわかる。これは、ヒストグラムが円状型の区とは対照的に、平坦な地形であることで街路を整備するうえで障壁となるものがないことによるもの、また古くは江戸時代~戦前にかけての長屋造りの街路パターンを受け継いでいることも要因と考えられる。

図5 円状型の区のヒストグラム(城東エリア)
図6台東区の街路ネットワークとヒストグラム

2-2 十字型の区(城西・城北エリア)

同じ十字型の区でも、東西方向の街路が多く、ヒストグラムが横長なのが城西エリア・城北エリアの新宿・練馬・中野・板橋区の特徴である。これは、区内を通る東西方向の路線の影響も大きいと考えられる。新宿・中野は中央線、練馬は西武池袋線、板橋は三田線と東西方向を走る鉄道路線と平行となるかたちで街路が構成された結果、東西方向に伸びる街路が多く形成されたということである。一方、中央線沿線である杉並区のヒストグラムも十字型に近い形をとっているが、方角の傾きがやや異なる道路がまじりあっているためか、やや東西南北にそれぞれ2つの山のあるいびつな形をしている。杉並区は、中央線のみならず、井の頭線や京王線といったほかの主要鉄道路線を抱えており、それらが街路パターンにも異なる特徴を与えているとも考えられる。

図7 十字型の区のヒストグラム(城西・城北エリア)


図8 杉並区の街路ネットワークとヒストグラム

2-3 十字型の区(城東・城北エリア)

城東エリアの江戸川区・葛飾区も東西方向に伸びる鉄道路線(常磐線、東西線、都営新宿線)を基準にした街路パターンの傾向がみられる。一方、北区は区内を南北方向に走る鉄道路線とは独立して東西方向に伸びる街路が多いようだった。

図9 十字型の区のヒストグラム(城東エリア)

3 複数方向型の区(都心3区)

一方、都心3区は、無秩序な街路パターンを示す円形上ヒストグラムとは一線を画した、複数の一定の方角に伸びる街路が多いという特徴的な傾向を示した。特に、中央区は、大まかに八方向に街路が伸びていることがヒストグラムからもよくわかる。これは、図12に示した中央区の街路ネットワークからもわかるように、全体としては碁盤の目の区画だが、区内の地区ごとに区画形成の基準となる方角が若干異なっていることが挙げられる。

図10 十字型の区のヒストグラム(都心3区)
図11 中央区の街路ネットワークとヒストグラム

4 まとめ

東京という一つの都市をとっても、23区のそれぞれでこれだけの多様な街路パターンを示すとは、非常に興味深い結果となった。今回は東京23区を対象にしたが、全国の各都市をヒストグラムかすることで、各都市の街路パターンの特徴が、その都市の成り立ちや歴史、地形といった背景からもわかり、面白いように感じる。

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