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恋してる方が偉いの?



最近なぜだかよく人から恋愛の話を聞く。
時期的に寒いし、みなさん寂しくて恋が動き出しているのだろうか。
しかし、残念ながら大体恋愛の話を聞く時って嬉しい、楽しいという話よりも、悩んでいることを聞く時の方が多い。

そりゃそうだといえばそうかもしれないが。
悩むから人に話し、何も悩むことなく愛に満たされ楽しい時はきっと私なんぞとは会わずにその当人同士で幸せな時間に没頭しているのだろう。

そんなわけで今回も友人の恋の悩みを聞いた私だが、彼女は悩みというよりも最初から「愚痴言っていいですか」と連絡をしてきた。
普段あまりそのようなことをこぼさない性格なのだが、おそらく何かあったのだと思われる。


「恋してる方が偉いの?なんでいっつも恋してるやつの方がかわいそうみたいに言われるのかがわかんない!」


彼女はふぅっと勢いよくため息をつきながらジョッキを置いた。

彼女はとってもモテる。
クールできりっとした顔、人懐っこいキャラクター、誰とでもすぐに仲良くなる裏表のない性格で、男性からも女性からも好かれるタイプだ。

だがしかし、彼女はそんな自分の魅力によって、時々悩まされていることがあるようだ。
話を聞くに、友達だと思って仲良くしていた男性の友人に、告白されてしまったのだそう。されてしまった、というとなんだかよくないことみたいに聞こえてしまうが、実際問題、彼女の中では今それはどちらかと言うとよくないことに入っている。


「嬉しいしありがたいし、申し訳ないんだけどさ。これで、私が断った時にもう友達には戻れないとか言われると、ほんとにがっくりくる。
いや、付き合ってたならまだしも、戻れないも何も私の中ではずっと友達でしかなかったのだがっていう。」

「なるほどねぇ。確かにそうだよね。向こうの気持ちもわからないではないけど。言い方はあれかもだけど、勝手に好きになられて勝手に友達としてもう付き合えないとか言われても、ある種の脅しじゃないけど、言われた側からしたらかなり自分勝手だなと思うかもね。」

「そう!でも、それを自分勝手と言うのは、世の中は許してくれないんだよ。」

「ほう。だから、さっきの"恋してるやつの方が偉いのか"問題なわけね。」

「そうなんです。重ね重ね申し上げると、人として恋愛感情を抱いてくれるほど好意を持ってくれるのは大変ありがたい話だし嬉しいし、それに応えられない自分で申し訳ないとは思うんだよ?」

「うん、いや、いいよ。私にまでそんなにたくさん弁明しなくて(笑)」

「ははは、なんかもう予防線を張るのが板についてしまったよね。でもさ、大体こういう話をすると、中には"思わせぶりなことしたんでしょ”とか私にも非があるみたいなことを言ってくる人がいるわけですよ。」

「うーん。まぁそういう色んな人から気にかけて欲しいっていう人も中にはいるのかもしれないけど、少なくともアナタはそういう性格じゃないよね。」

「そう言ってくれて嬉しいよ。でもそんな性格じゃないはずなのに、残念ながら思わせぶりだとか勘違いさせてるとか言われるのよこれが。そして、フッた私が悪くてフラれた相手がかわいそう、って構図ができる。」

「なんか、そう聞くとモテるほどに悪者になってくみたいで、損だねぇ。」

「自分がモテるとは思ってないけど、私もそう思う。ねぇ...私のいつもは決して大きい声では言えない心の叫び、聞いてくれる?」

「どうぞどうぞ。」

友人は、ふぅ。と一度息を吐いてから言った。


「なんでさぁ、フッた私が思わせぶりな悪者で、フラれたそいつだけがかわいそうなの?大変申し訳ないけど勝手に盛り上がって友情以上の好意を寄せてきて、でも自分の望み通りの関係じゃないと"もう人としても付き合えない"って結構ひどくない?何か失ったの自分だけみたいな顔して傷ついてるけど、私だってそのせいでお前という仲良かった友達1人失ってるんだからな!私は友達としてはいらないんだな?悲しいわってなる。
でも、そんなこと言ったら余計叩かれて迫害されるのわかってるので、言わない。そいつは周りにフラれちゃってさって言えるかもだけど、私はこのことについて誰にも悲しいって言えない。なにこれって感じ。...はい、ご清聴ありがとうございました。」


「いやぁ...なんか大変だねぇ。それっぽいことは何も言えないけど、聞くだけならいくらでも聞くよ。」

私は肩をぽんぽんと叩きながら、彼女にねぎらいのジョッキを寄せた。

「しかも自分のタイプの人にはなぜか一向にモテないっていうね。需要と供給ズレまくってて結果独り身ですわ。何なん。藤井風か。」


彼女はやさぐれたように言いながらジョッキを勇ましく傾ける。
私は彼女のこういうからりとしたところが話を聞いていて面白いし好きだ。
確かに人に好意を寄せられても、嬉しい時と嬉しくない時はもちろん誰にでもあると思う。
しかもそれが友人だった場合、嬉しくないとも言えないが自分は恋愛としては応えられないとなるとなかなか複雑な心境になるのであろう。
彼女が魅力的すぎた結果、彼女からしたら願ってもいないのに今まで仲良くしていた友達を失っているのだ。


彼女が周りからどんな風に思われようと、私は彼女のことが人としてとても好きなので、これからも彼女の隣でうんうんと話を聞く人でいたい。
そしてこの先の彼女の恋愛も人間関係もうまくいってほしいなぁと思った。
もうええわとは嘆かずに是非頑張ってほしい。






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