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呪いのような赤、 意地のような青。 〜椎名林檎とおばあちゃんとJリーグ〜


あなたの好きな色はなんですか?

人生の中で、私の好きな色は段々変わっていった。
今、何色が好きかと聞かれると私には2つの選択肢がある。
黒かグレイッシュカラーが好きだ。
グレイッシュカラーってなんやねん、お洒落っぽく言ってるけど結局何色やねん、と突っ込まれそうな時は「黒が好き」と答える。
黒?つまんな。となりそうな時は「グレイッシュカラーが好き」と答える。
好きな色を言うときでさえ、相手を反応を想像して決める、面倒くさくて素直じゃない人間だ。

群青色と群青日和

ひと昔前は、群青色が好きと言っていた。
深い青色が好きだった。
けれど「お、群青日和〜?椎名林檎好きなん?」なんてさも上手いこと言ったように聞かれたりするもんだから、それを言うのをやめた。
群青日和にも椎名林檎にも何の罪もない。なんならどちらも好きだ。
ただ、そういうことを言う人に限って「し〜んじゅくは〜♪」なんて調子外れに歌い出したり、あのMVの最後のシーンの林檎が可愛いしちょっとやらしくていいよねなんてニヤニヤしながら言ってくるので、そんな奴は喧嘩上等であり、透明人間になって遭難してしまえと密かに思っている。

私と青と"フリューゲルスくん"

それよりも前は、もっと鮮やかな水色や青が好きだった。
小さい頃は青が好き!とよく言っていた。
だけど私はある時、その青が好きなことに自信がなくなったのだ。


幼い頃に、Jリーグにハマっていたサッカー少年の兄を見て、お兄ちゃん大好き少女だった私は、兄の学習机の下敷きに描かれていたJリーグのキャラクターを一緒になって覚えた。
どのチームが強いとか、どこにどんな選手がいるとか、そんなことはよくわからなかったが、マスコットキャラクターの見た目とチームカラーの鮮やかなブルーが好きで、私は横浜フリューゲルスを”推し”としていた。

あの犬なのかうさぎなのか鳥なのかよくわからない動物も、愛嬌があって好感を持てた。


だって他のキャラクターはというと、サンフレッチェの熊さんはなんだか顔がちょっといじわるそうだし、ベルマーレなんて、上裸のおじいちゃんじゃないか。王様だけど。


それに比べてフリューゲルスくん(名前を知らなかったのでそう呼んでいたが調べたところ彼はムササビで、とび丸という名前だったと今更知る)ときたら、何者かもわからないのに隠しきれない可愛らしさを放っている。
そこが好きだった。

ちなみに兄は浦和レッズを推していた。なぜかは知らない。
好きな選手がいたのかもしれない。


おばあちゃんと青と赤

そんな私達だったが、Jリーグ全盛期だったあの頃でも、田舎には見れる試合もなければグッズなんてどこにも売っていない。
ところがある時、東京に住んでいた母方の祖父が、私達がJリーグにハマっていることを聞いて、それぞれ好きなチームのグッズを送ってくれたのだ。
キャラクターのキーホルダーやタオル、財布なんかがあったと思う。
あの、マジックテープが付いていてビリビリと開ける懐かしい財布だ。

私達は喜んで、もちろん兄はレッズのグッズを、私はフリューゲルスのグッズをもらった。
本当はフリューゲルスくんのぬいぐるみも欲しかったな、なんて思ったりもしたが、Jリーググッズを持っているなんて田舎ではヒーローである。
私達は鼻高々にその財布を持ち、キーホルダーを付けて歩いた。


そして近所にある父方の祖父母の家に行ったときにも、それを自慢した。
「ねぇねぇ見て。これJリーグのやつ、東京のおじいちゃんが送ってくれたんだよ!」
「あらあらよかったねぇ〜。どれどれおばあちゃんにも見せて。」
祖母は、はしゃぐ私達に乗っかってくれ、いいねぇよかったねぇなんて言いながらグッズを眺める。
しかしその後こう言ったのだ。

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