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ギルティ女史のファッションチェック


今日も慌ただしいオフィス。
ギルティ女史はいつものように猛スピードで仕事をこなしている。

【ギルティ女史はプラダを着ない】
「働くとは、仕事とは何か」を教えてくれた、元上司のぶっ飛びストーリを
まとめたエッセイマガジン。
※連載ですが1話完結のためどこからでも読めます。



日々ドタバタと動き回り失態をしでかす私だったが、ギルティ女史は一つだけ、よくわからないタイミングで私のことを褒めてくれることがあった。
それはファッションについてだ。


ここの部署にはスーツを来ている人はほとんどおらず、オフィスカジュアルで来るように、というような決められたルールも特になかった。
前任のアシスタントだった下北さんも(勝手に密かにつけたあだ名ではあるが)その名の通り下北沢の古着屋の店員のようなファッションだったし、他のスタッフも思い思いの服装でそのオフィスに来ていた。

その頃の私は、打ち合わせなど社外の人に会うタイミングでは襟付きのシャツを着たり一応それっぽい格好をしていたものの、通常のオフィスでの作業の時は動きやすさを重視していたこともあり、なかなかラフな格好で仕事をしていたと思う。

そして若かったこともあって、今思うと恥ずかしいくらいの誰も身につけていないようなちょっと変わった服装で乗り込んでいたこともある。


そういう時は先輩のスタッフなどから「あ〜また変な格好してる〜」とか「そんな服、どこで売ってるの?」なんて言われたりもして、いつも殺伐とした雰囲気のオフィスに、ちょっとだけ普通の会話が広がる。
私はその何気ない会話の瞬間が好きで変わった服を身に着けていたというのも少しあるかもしれない。相変わらずのピエロである。
そしてギルティ女史もたまに「またあなたは面白い格好してるのね。」なんて声をかけてくれることもあった。


その中でも覚えているのが、靴だ。
私は当時どこかで見つけた蛍光黄色と蛍光ピンクの靴、全く同じ形のものを、何を血迷ったか2色買いしたことがある。
蛍光カラーの靴の時点でもうふんだんにぶっ飛んでいるのだが、みんながいじってくれるのに嬉しくなってちょっと色々と麻痺していた私は、ある日その靴を右足と左足で片方ずつ履いていった。

ただでさえ蛍光色の靴、そして右足はピンクで左足は黄色だ。
今思うと穴があればスライディングで入り込みたいところだが、その頃の私は「同じ靴だし、1色ずつ履くのもありなのでは?」なんて思ってキャッチー過ぎる足元で出勤した。

案の定「げーすごい!また変なの履いてる!」なんて言われる私。
「色違いで履いてみちゃいました」なんて言いながらへらへら笑って仕事をしていたのだが、その日ギルティ女史が出社し、私を足元を見た瞬間放った一言でオフィスの空気が固まった。

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