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さよならを待つ引き出し


よく晴れた休みの日。
なにげなく開けた引き出し。

ふと思い立って中のものを全部出して、
わたしは引き出しを整理をする。


ものを溜め込むタイプじゃないし、
あんまりものを買う方でもないのに
ぼーっと「いる・いらない」を分けていったら、もうゴミ袋が1つ。


どうして人は生きているだけで、ゴミを増やしていくんだろう。
でも、きっとこれらはここに来たときはゴミじゃなかったんだろうな。


この引き出しにはついつい行き場のない小物を入れてしまう。
ジャンル分けできない、仲間がいない、そぐう入れ物もない
行き場はないけど、捨てられないものたち。

そう言うとなんだかここ、かわいそう。


そしていずれ時が経つと、なぜだかいらなくなるものたち。
捨てられないからしまったはずなのに。


相方を無くしたピアス
どこかでもらった小さな化粧品
誰かが忘れていったライター
1錠だけ残った、何かの薬
取れてしまったボタン

空っぽになると、すっきりするのに
いずれまたここに物は増えていく。

ある時は必要で、ある時はとっておきたくて、ある時は捨てられずに。
一度時を止めるようになにげなく入れる、このなんでもない引き出し。

時が過ぎて
一体何だったか忘れてしまったもの。
もういらなくなったもの。
もう、大丈夫になったもの。

もしかすると、この引き出しは
「もう大丈夫」になるときまでを待つ場所なのかもしれない。


あの時は、きっとありがとう。
そしてもう大丈夫だから、さよなら。

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