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ギルティ女史と加湿器愛


今日も慌ただしいオフィス。
ギルティ女史はいつものように猛スピードで仕事をこなしている。

【ギルティ女史はプラダを着ない】
「働くとは、仕事とは何か」を教えてくれた、元上司のぶっ飛びストーリーをまとめたエッセイマガジン。
※連載ですが1話完結のためどこからでも読めます。


ところで、私の部署にはおびただしい数の加湿器が設置してある。
毎朝行うアシスタントのルーティーンワークには、もちろんこの加湿器のお世話も含まれている。

1個や2個程度の加湿器が置かれているくらいなら、ささっと水を足してたまに洗浄などメンテナンスをすればよいのだが、結構シャレにならない数が設置してあるのだ。
10台はゆうに超える。
無論両手でも運びきれないので、いつも大きなワゴンを押してゴロゴロと回収に回り、給湯室へ行きそれら全てに水を満たして設置する。
毎日ではないが、頻繁に内部洗浄も行う。
ただ水を入れるだけとは言え、かなりの時間がかかる。
数の暴力である。


なぜこんなにも加湿器が置かれているかというと、それはもちろんギルティ女史のお達しによるものだった。

彼女はとにかく乾燥を嫌う。
アマゾン出身なのかと思うくらい、彼女は湿気を求めている。
空調の効いた乾燥したオフィスで、スタッフが体調を崩さないようにという理由もあるようだが、主な理由としては、彼女の喉とお肌を守るためである。


「ほら私って、喉が弱いでしょ?もう絶対に乾燥だけはNGなの。それに肌だってあなたくらい若ければ潤いがあるかもしれないけど、私くらいになるとこんな乾燥したオフィスに一日中いるなんて、もう砂漠で仕事しているのと一緒なの。あなたも一応女の子ならお肌が大事なの、わかるでしょ?」


(一応...?)

すごくそれっぽく力説されるが、ほら私ってと言われましても正直知らんがなという感じではある。
しかし、確かに彼女は年齢の割に肌もとてもきれいで若々しい。
それがこの加湿器たちのおかげなんだとしたら、必要性も確かにうなずける。

そういう細かな所から意識を高く持つことが、常に第一線で仕事をこなせる理由なのかもしれない。
と、無理やり自分を納得させてみる私。

そして、確かにここのスタッフは皆、働き過ぎで常に免疫力が弱っているためか、誰か一人でも風邪を引こうものなら学級閉鎖かというくらい皆バタバタと倒れる時が定期的にある。
そう考えるとこの加湿器もあながち邪険にしてはいけないなと思いながら、私は今日も十数個の加湿器をゴロゴロとワゴンに乗せ、水を補充しに行く。

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