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笑顔を忘れた少年 ~ 苦い記憶と少年への手紙~

 物語はこれくらいにして・・・わたし自身こどものころを振り返ってみると、自分が負の感情に捕らわれてるときに一番許せなかったのは実は周りで幸せそうに笑ってる人たちでした。 

 別にその人たちが悪いことをしているわけではありません。なかには無表情だった私のことを気にかけて声をかけてくれる心優しい友人もいました。

  でも、その時にはそうした心優しい人たちの声でさえ聞く気持ちにはとてもなれなかったのです。

 そのとき私のなかに占めてた一番の感情は

経験したことないお前らに何が分かるんだ』という負の感情しかありませんでした。

  あとになって分かったことですが、これは私に限ったことではなく、ツライ経験をすると人はこのような感情に捕らわれがちです。そしてトラウマを持った人は幸せを感じたとき、その幸せを失うことが怖くなったり、たった一つの失敗でやはり「自分はダメなんだ・・・」、「ツイてないんだ・・・」、「生きる価値がないんだ・・・」と思ってしまうこともあります。

  わたしも例外ではありませんでした・・・

 そんなとき、私は生きること、この世のすべてが嫌になり、遺書に筆を走らせていました。

 『なぜこんなことになってしまったのか…』

 『どうして私だけこんなツライ思いをせねばならないのか…』

 筆を走らせているうちに、やがて私はこぼれ落ちる涙で筆先が見えなくなりました・・・ 恥ずかしながら、わたしはそのとき、はじめてこれまでツライ思い出だけではなかったことを改めて思い出せたのです。

  あなたの顔、あなたの優しい声、あなたの笑い顔、次々と私の頭の中を駆け巡ったのは私が出会った心優しい人たちでした。

 『私は恵まれていたのかもしれない・・・』そう思えた瞬間でした。

 そして、私は筆をとめると、その遺書を破り捨てました。

  そんな私のたった一つの願いは、ご家族や友達、まわりに気になる素振りを感じる人がいたら自分ができる範囲でいいので何か声をかけてあげて欲しいと思っています。

 もしかすると、時には「お前らに何が分かるんだ!」とか「そんなの綺麗ごとじゃないか!」とか「そんなこと分かってるけどできないから苦労してんだよ!」とか罵声を浴びせられることもあるかもしれません。

  そんなとき、心優しいあなたはなんて声をかければいいか戸惑うことでしょう。

 もしかしたら、自分の気持ちが理解してもらえないやるせなさに思わずショックで泣いてしまうかもしれません。。

  そんなとき、思い出してください。 あなたは何も悪くないのです。

 その少年は心の底では分かっているけど、いま、その気持ちになれないだけなのです。いまは時が必要なだけなのです。

 そんなとき、思い出してください。

 あなたのその優しさは、大地に雨水が浸透するように、砂時計が少しずつ器を満たすように、いずれ少年の心に届く日がきっとやってきます。

 私はそう思えたから、こうして今も生き続けています。。

少年への手紙

あなたがこれまで経験してきたこと、あなたがこれまで感じてきたツライ思いは、同じ経験したことがない私たちにはよく分からないと思っているかもしれません。

  正直にいうとその通りだと思います。

 私たちにはあなたのことをすべて理解することはおそらくできません。

  でもね、今、私たちはあなたの目の前にいます。そして私たちの目にはあなたがとても苦しんでいるように見えています。そんなあなたのどこか悲しそうな顔を見ているとなぜか胸が少し締めつけられて切なくなります…

 「 あなたが、いま、そこに見えてるものはなんですか?」

  「あなたが、いま、そこで聞こえてる音や声はどんな音ですか?」

 「 あなたはいま、何をして、何を感じていますか?」

 「 少しだけでもいいので私たちと話してみませんか? 」

 私たちはあなたのことをもっと知りたいと思っています。

  私たちはあなたのために自分にも何かできることがないのか一緒に考えたいと思っています。

 もしかしたら、あなたにとったら、私たちの悩みなんてちっぼけに感じているかもしれません。でもね、そんな私たちもその悩みで思い悩んだり、苦しむこともあるんですよ。

 だからね、自分におきかえて考えてみることは私たちにもできます。

  もしかしたら、あなたの話を聞いても、気の利いたアドバイスすることはできないかもしれません。

 でもね、あなたの話を聞くことは私たちにもできます。

 どうすればいいのか何も分からなくなったとき、生きることが嫌になったとき、私たちのことを思い出してください。 一人の力ではどうしようもないことでも、ここでは多くのひとたちがあなたの話を聞いてくれます。

 自分には何もできないと思っても、あなたの背中をそっと押したいと思う人たちがここにはたくさんいます。

 ここがそんな場所、道しるべの一つになればいいなと願いながら・・・

   笑顔を取り戻せた一人の少年より

#笑顔を忘れた少年


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