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機械とともに、生きている
ファミレスの配膳ロボットに道を譲る。
エレベーターが挨拶をしてくる。
SiriやチャットGPTと会話が終わった後にお礼を言う。
ワードの作業を再開すると「おかえりなさい」と言われる。
いつの間にか、こういうことが「ふつう」になってきた。生活の中に機械がいて、機械と共に生きていて、機械があることが前提で生きている。
はじめに違和感を覚えたのがいつだったのか、もう思い出せなくて悔しい。
人類が「2
郵便ポストが赤いのは俺のせいだが…?
比較的自責思考タイプだと思っている。
他人に何かミスがあれば注意できなかった自分が悪いし、他人が締切を破ってきたら気を遣ってしつこい連絡をしなかった自分が悪い。それにイラついてしまったら、イラつくようなスケジュールを組んでいる自分がいけない。
社会人になったら特にそうであろう、と思っていたので、社会人を3年半やって驚いていることがけっこうある。
会社はけっこう人間を守る、ということだ。
働き
オリジナル掌編小説『イン・ザ・コクーン』
「ごめん、撮られちゃったかもしれない」
正子は部屋に入ってくるなり舌をぺろりと出して謝罪した。正確に言えば謝罪の言葉を述べただけだった。
「かまわないよ、そんなことより遅かったじゃないか」
昭弘は正子の腰に手を回す。
「夫の夕飯を作ってからきたんだけどね、ちょっと時間がかかっちゃって」
「メニューはなんなんだい」
「カレーよ」
「偶然だな」
昭弘は目を見開いた。
「うちも今日カレーだったんだ」
「
【第22回】毎月300字小説企画参加作品『かえりみち』(テーマ: 歩く)
「あれ、なんだったんだろう」
酒と火照りの渦に沈んでいった色々な言葉と感情が、夜風にさまされてふわりと思い出される。
「お前のみそ汁、毎日飲みたい、俺も作りたい」
なんだそれ、と笑いで流してしまったけれど、液体のようにどろりとしていた黒目の輪郭が、その言葉の瞬間だけはっきりとしたのを見た。
無意識に一駅前で電車を降り、ゆっくりと踏みしめるように歩く。
毎日、自分か彼のみそ汁が飲みたい。そ
おばあちゃん(ち)の味
「おばあちゃんの味」や「おばあちゃんを思い出す味」(もちろん「おじいちゃん」でも可)は特有の心の動きをもたらす。
「あ、これおばあちゃんを思い出すな」とか、「おばあちゃんのアレが無性に食べたい」と思うときは、そのときにしか動かない心の一部が大きく動く感じがする。
ぼくにとっては祖母が作る焼きおにぎりがまさにそれだった。最近も、また無性に食べたいと思うことがあった。
料理が上手だからおいしいとい
フリー台本『月がなんとやら』
あらすじ
ようやく夜に窓を開けてもいいくらい涼しくなってきた。
今日はちょっと大きな月を見ながら、ちょっと高いプリンを食べよう
(約700文字・一人称変更可)
おかえり〜。
そう、お月見してたの。一緒に見る?月を見ながら飲む酒は美味しいぞ〜。風流でもなんでもないよ。酒を飲む言い訳にはぴったりじゃない?ぼくらはいつも酒を飲んで良い理由を探してるんだからさ。
まあ手、洗ってきなよ。うん。
あー!
ぼくがライブハウスでギリギリ目撃できたもの
友人のリリースパーティーを見に、下北沢に行ってきた。
下北沢はくるたびに表情を変えていた時期があったが、渋谷駅の改修工事を追い越してだいぶ落ち着きを見せている。
リリースパーティーは何回行っても、だれのを見ても楽しい。し、おめでたい。リリースって、本当にたくさんの労力がかかっているんだから、みんなで盛大にお祝いをしたいものだ。
そんな1日で、とあることに気づいてしまった。
対バンがMCで「最近
おなじような性のお悩みが「発見」されるとめちゃくちゃ安心するよね
ある日の別に深くもない夜、
とあるクリップがインターネット上を飛び回った。
長時間配信なのでちょっと脈絡はわからないのだけれど、いかにも装備見てます、みたいな画面なので待ち時間とかなのだろう。タイミングはよくわからないが、この切り抜かれたものだけを見てとりあえず「かなかな?!」にはなった(別視点をみていた)
ただ、ぼくはこれにめちゃくちゃ救われてしまった。
ぼくがまさにこれだからだ。
これは
根性論の果てにあるのは根性論の再生産だけ
根性論がこの世からなくなることは、たぶんない。
なぜなら、根性論でうまくいってしまう悲しきモンスターが一定数いるからだ。
実は、ぼくはけっこう大きくなるまで「根性論」の存在を信じていた。この世の中は、運・体調・世間の流れ・風・そして実力と努力が複雑にからみあってできているというのに、根性で続けていたら、根性で無理をしたらいつかどうにかなるだろうと思っていた。
なぜならどうにかなってきたからだ。